2018年07月03日

桐谷署総務課渉外係お父さんを冷蔵庫に入れて! 加藤鉄児

桐谷署総務課渉外係お父さんを冷蔵庫に入れて! 加藤鉄児 宝島社文庫

 「桐谷」は地名とは思えません。なぜ「刑事課」ではなくて、「総務課」なのか。「生きているお父さんを冷蔵庫に入れることが犯罪につながるのか。」
 いろんな疑問を抱きながら読み始めました。いま、39ページ付近です。

(つづく)

 お父さんは高齢で病気で病院で亡くなった。そのご遺体が盗まれた。(書中では誘拐された。)。ご遺体を返してほしければ金を払えというパターンです。こういう話って成立するのかなあというもやもやをかかえながら読み続けます。

 おもしろい出だしです。(遺体)誘拐犯ふたりの雰囲気がいい。あまりなかみを書くと読んだときのいい感じがうすらぐので、そーっと書きます。

 こういう設定と展開は斬新です。強引で無理があるご遺体の娘さん、十文字凛子の話です。10年前に警察となにかトラブルがあったらしい。
 総務課が動くのは、どこの課にも属しない案件であるからでしょう。亡くなっている人を誘拐してもすでに命なき人です。そして総務課の職員の仕事はグレーな案件のお掃除です。公務員経験者が書いたような文章です。

「ショーマン:芸人」、「窃盗:せっとう。盗み」、「恐喝:相手に従わないと害を与えると脅して、相手から、財産、利益を得る。」、「首肯:しゅこう。うなずく。初めて見た単語です。」、「螺髪:らほつ。巻貝のような天然パーマ。東大寺の大仏の頭。これも初めて見た単語です。」、「ブローカー:売買の仲介をして収入を得る人」、「ロイド眼鏡:セルロイドでできている。アメリカの喜劇役者ハロルド・ロイドがかけていた。」、「埒外:らちがい。ふだんあることの範囲の外」、「刑事課、生活安全課、地域課、警備課、交通課、総務課:警察組織の話ですが、一般人にはその違いが明瞭にはわかりません。」、「肉薄:にくはく。すぐ近く」、「ボイスチェンジャー:加工して声を変える。売っているのだろうかと調べました。ネットショップで売っていました。」、「ロココ調:18世紀ヨーロッパの雰囲気。美術様式」、「舌鋒:ぜっぽう。言葉つきのするどいこと。」、「惹句:じゃっく。心を惹きつける短文」、「ガンメタル:紫がかった暗い灰色」、「通函:つうかん、かよいばこ。組織内、組織間で文書や物を送るときに入れる箱」、「目を瞑った:目をつぶった。読めませんでした。」、「グレービーソース:肉汁をもとにしてつくるソース」、「咄嗟に:とっさに」、「ジルコニアの群れ:ダイヤモンドみたいな固体」、「滂沱:ぼうだ。雨が降りしきるさま」、「イグニッション:点火装置」

 物語は、12月25日クリスマスに始まり、12月28日御用治めの日に終わるようです。

(つづく)

 亡くなっている十文字豪は役者で刑事役で一世を風靡した過去がある。

 第二段階の話(警察署総務課夕張真知子と役者十文字豪の娘十文字凛子との関係)もおもしろい。

 ホームレスは単体であって、お互いに「仲間」という意識はないと思います。

 誘拐犯板倉とイエヤスはどこで出会ったのか、イエヤスとは家康なのか。いろいろ秘密を置いてあります。

 89ページ付近、これはおもしろいなあ。推理小説はあまり読みませんが、これは、楽しめる推理小説です。

 グアテマラ、エチオピア、ベトナム、コロンビア、どこにあるのか、あまりなじみがない国が続きます。

 公園にいるホームレスに話しかけるのは福祉課ではなく、公園管理をしている部署のような気がしましたが、福祉課であっても不思議ではありません。

 どうやって、最終的な感動につなげていくのだろう。

 役者の葬式で国葬みたいなことをテレビ放映でやるだろうか。

(つづく)

 読み終わりました。おもいしろいことはおもしろかったのですが、腹に落ちないものが残りました。ないものをあるものとした設定です。命なき遺体の誘拐、警察署総務課の動き、そのへんが腹におちない大きな部分です。これは読み手個人の趣向にゆだねられます。

 命もお金も存在しない新たな設定、新境地を開いた功績があります。

 ミキとマキの存在が効いていました。

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