2018年06月12日

105度 佐藤まどか

105度 佐藤まどか あすなろ書房 2018課題図書

 「105度」とは、温度ではありません。椅子の背もたれの角度です。この小説は中学生向けで、椅子のデザインを素材にしたものです。珍しい。

 33ページまで読みました。途中ですが、感想文を書き始めてみます。
 主人公は、大木戸真(おおきど・しん)、中学3年生ですが、身長177cmと高い。神奈川県逗子市内の(ずししない)の公立中学から、東京都内の中高一貫教育の大学付属高校へ中学3年の4月に編入しています。
 「イスが好き」と自己紹介したところから、「イス男」扱いです。椅子好きは、椅子職人の祖父の影響です。椅子に座った人たちの気配を感じることが快感だそうです。
 今後、スラカワという早川(同級生女子、同じくイスのデザイン好きらしい)とともに物語を進行していきます。

「バリトンの声:低くていい声。テノールは高い、バスは渋い低音」

 主人公大木戸真のきちょうめんさが表れています。椅子設計者の片りんをのぞかせています。教室内の机位置図を書いて、生徒の名前・特徴を記していく。デザイナーの素質があります。

「LC4:1928年にル・コルビュジエほか2名がデザインした寝椅子(シェーズロング)」(1928年昭和3年。体を横たえることができる長椅子)

(つづく)

 書中に出てくる本のなまえが、「イスのデザインミュージアム」 見たこともありません。

 映画「ガタカ」知りません。97年アメリカSF映画。DNAの元素の頭文字の合体がガタカ。
 「ゼロ・グラヴィティ(無重力)」は、映画館で観ました。良かった。女性宇宙飛行士が宇宙でひとりぼっちになる。地球への生還を目指す。
 「2001年宇宙の旅」観たことはありますが、それほど好きではありません。

「モデラ―:本編の場合、イスのデザイナーがデザインしたイスを実際にイスにする椅子づくり職人と解しました。」

セーディア社:椅子の会社。早川女子の祖父の家業。祖父は早川宗二朗(はやかわ・そうじろう)
原寸模型:モックアップ
試作品:プロトタイプ
スツール:背もたれ、ひじかけのないシンプルなイス
アームチェア:ひじかけつきイス
ラグ:ちいさいカーペット
オットマン:足のせ台
ウォールナットのフローリング:色のこと。黒系深いこげ茶。
ブルーカラー:肉体労働者。職人系。モデラ―
ホワイトカラー:頭脳労働者。事務系。建築家、デザイナー
インハウス・デザイナー:企業内デザイナー
サブカル系:一部の人の独特な文化
プライウッド:合板
スタビー:ドライバーの種類。持つところが太くて短い。

 女子差別とか、学歴こだわる話があります。

全国学生チェアデザインコンペ:本当にあるのだろうか。なさそう。家でくつろぐイスか、家で仕事や勉強をするイスをデザインする。

羽田に飛行場ができる前:できたのは、1931年8月、昭和8年、生まれた人は今なら87歳。

大木戸真のおじいさんの会社:大木製作所

 97ページ、化粧合板のくだりが良かった。見た目だけきれいで、役に立たない人はいます。

 100ページまで読んで、消化不良な部分があります。イスというふだん考えが及ばない素材がテーマであることと、言い回しです。しっくりきません。
 大木戸真の父親が、真が中高一貫教育の学校にいるのにもかかわらず、他校の高校を受験させるという指示・命令が理解できません。その父親が自分で風呂も沸かさないということがまた、不可解です。風呂はボタンを押すだけで誰でも沸かせるし、父親が沸かしてもおかしくはない。

 気に入ったフレーズです。「じいちゃんのような、しなやかな老人になる。」

 124ページ付近、イスづくりのマニュアルを読み始めたような気分です。
 父と息子の対立があります。父親の意識が極端すぎます。美術、デザイン、文学の道を選択してはいけない。食えない。いい大学を出て、官僚等安定した仕事に就く。いい大学に入っても、その大学での落ちこぼれはいます。卒業後、入った組織で役に立たず迷惑をかける人もいます。
 進路は本来本人が定めるものです。本人の人生です。親の人生ではありません。

 コンテストに出すイスですが、105度というのが、適度なイスの角度と紹介が始まります。角度と人間関係がからめて説明してあります。ふたりの人間は105度の角度で支え合ってちょうどいい。それ以上の角度で相手に寄りかかると共倒れになってしまう。
 105度って、どれくらいかなと考えました。そばに分度器がなかったので、頭の中で想像しました。

 イスの上下にあたり、ガス圧式シリンダーを避けますが、わたしは好きです。

 良かった表現の要旨として、「コツコツやってもだめ。デザインは頭のひらめき」、「ゲームもスマホもやらずに、イスに没頭しているこども」、「ぼくの自慢話と苦労話を聞いてくれ。」
 
 父親が、みそ汁もつくれない、アイロンかけもできないというのは、あきれました。

 プロダクトデザイン事務所スタジオ・テラダの人の話を息子に聞きに行かせる設定は強引です。

 進路指導の本にも思えてきました。

(つづく)

 説教くさい部分があります。父親の言葉、父親の友人の言葉、芸術系の道に進んでもうまくいかないことが多いという内容です。そこまでおさえなくてもという気持ちをもちながら読み続けました。若いときは、言葉では理解しません。痛い思いをしないとわかりません。寺田さん、吉野さん、城谷さん。お話の中身は暗い。

 弟力(りき)くんの扱いもずさんです。病弱だから生きているだけでいいと言われたら本人はへこみます。いじめがない学費が高い私立の学校へ行くそうです。

 イスのデザインで食べていけるのだろうか。イス以外のなんでもデザインするのではないか。結局行きつくところは販売する、営業職ではなかろうか。

 イスの本場はオランダなのだろうか。オランダ人男子の平均身長が184cm、高い。日本人が171cm、そんなに高いだろうか。もっと低い気がする。長い時間座れないイスづくりもある、客商売では、長時間座っていてほしくないお客さんもいる。そういう人について現実には、イスなしのハイカウンターで応対する。
 日本人女子の平均身長が、159cmとありますが、もっと低い気がします。若い人はそうかもしれませんが、中高年は低い。もっとも、コンパクトなほうが暮らしやすい(進化している)とわたしは勝ってに解釈しています。

 主人公大木戸真は、この世に完ぺきなイスはないと悟る。

 この本を読んでいるあいだ、新聞広告にはさまってくるイスの広告を見ました。1脚1万円前後の値段のイスが多い。一般人は、機能よりもまず値段から入ります。

 後半部、たんぽぽの話は唐突(とうとつ。突然すぎる)でした。

 こんなおとうさんいるのかなあ。

 あとがきで、90歳で絵をかくおばあさんのお話が良かった。何歳になっても将来の夢をもちたいものです。だから、若いときに芸術系の仕事につけなかったとしても、定年後にやろうと思って、実労期間中の長い年月を実力の蓄積にあてればいいのです。長生きしなきゃいけません。

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