2017年06月18日

転んでも、大丈夫 2017課題図書

転んでも、大丈夫 臼井二美男 ポプラ社 2017課題図書

 この本では、病気や事故で足を失ったひとたちに対して、義足があるから、転んでも大丈夫という意味をこめて書いてあります。

 障害者福祉の面というよりも、職業選択と仕事の意義、なぜ働くのかということを重点に書いてありました。
 人は、生活費のために働くわけですが、お金のためだけに働くわけではありませんと書いてあります。
 社会に貢献するために働くのです。自分の能力が人さまのために役に立っているということが心の支えです。相手と自分がいて、両者が支え合っていると読み取れます。
 作者は、職業選択において、若い頃、迷っています。いくつかの職を転々として、現在の職を選択し、これまでこの仕事、義肢装具士を続けています。

 2020年にパラリンピック(障害者のひとたちのオリンピック)が開催されることが書かれています。スポーツ好きな人には、それは「目標」です。「夢」とも言いかえることができます。
 
 青春期に、病気(がん)で片足を手術で切断した若い人が何人か登場します。お気の毒といいつつも、明日は我が身ということはあります。克服にはエネルギーと時間を要します。

 作者のいいところは、相手と会話(コミュニケーション)のキャッチボールをしながら、義足をつくっていくところです。いいものをつくるためには手間と時間がかかります。
 
 作者の義肢装具士としてのキャリア(経験、歴史)が、対象者の様子とともに記述されていきます。
 作者は、「機会(チャンス)」を提供していきます。ヘルスエンジェルスという名称の義足ランナーの練習会です。参加者たちは同じ境遇のなかで仲間づくりをすることができます。
 この本の後半には、大半の義足の人は、家で静かに暮らしていると記述があります。それは、本人の望むところではないという意味だととらえます。
 練習のあと、メンバーで夕食を食べる。人と語らう楽しみ。だれしも孤独は苦手です。

 足を失った悲しみは書かれていません。義足を得た喜びが書かれていました。

以下、いろいろ考えさせられた文節です。
「鉄道弘済会義肢装具サポートセンター:もとは、鉄道事故で負傷した鉄道員のために職業提供の場として設置された法人」、「義足の構造でソケット:足と義足のつなぎ部分」、「子は、成長にともなって、義肢も大きくする」、「1個の義肢の使用期間は2年から3年」、「義肢は1個ずつ手づくりで、同じものはない。装着感の良さは、義肢装具士の技術(腕)にかかっている。」、「手を動かしているとヒントが見つかる」、「弱音を吐いても足は生えてこない」、「義足の人は全国に6万人ぐらいいる」、「義足は隠すもの」

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