2017年05月25日

ストロベリーライフ 荻原浩 2017課題図書

ストロベリーライフ 荻原浩(おぎわら・ひろし) 毎日新聞出版 2017課題図書

 安心して読める直木賞作家の家族小説です。
 読み始める前に、タイトルから、いちごがからんだ生活であると予測します。
 主人公は静岡県出身望月恵介36歳妻子もち3人家族東京在住デザイン個人事務所経営です。タイトルのストロベリー(いちご)から、久能山東照宮(日本平とか三保の松原あたり)付近のいちごハウスを思い浮かべましたが、もとはトマトハウス栽培を実家がしていたとのことですので、よその土地でしょう。

 父親が脳梗塞で倒れて搬送されて駆けつけてというところまで読みました。
 3人の姉と望月恵介の4人きょうだいです。(愛称モッチー)。農家を継ぐのはだれという問題が生じました。仲良し兄弟ではありません。上手に書いてあります。

(つづく)

 文章にリズム感があります。リズム感がない文章は読みにくい。賞を受賞するためには音楽のセンスも必要です。

 おそらく、東京で働く夫婦が、実家に帰って農業(いちご農家)をすることになるのでしょうが、農家は大変です。束縛と低収入があります。
 農家とは、農業とは、自然との共生、肉体労働、心の健康には良し。
 
 「若さ」と「老い」の比較があります。

 子育て、部下の育成に似ているイチゴ栽培の秘けつです。風通しのいいところで育てる。
寒風にさらしたほうが強くなる。雨には当てすぎないほうがいい。

(つづく)

 読み終えました。山や谷はゆるやかで、おっとりとした感じで終了しました。大きな波があるわけではありません。大きく変わる冒険があるわけでもありません。おとなしい作品でした。安定感と安心感はありました。今の日本の家族像の一面がやさしく描かれていました。

 農業を選ぶ。農業を選べる。それは、「逃げ」なのかもしれない。
 地元の高校を卒業して、東京の大学を出て、仕事に就いたけれど、うまいこと収入につながらない。そんなとき、ふるさと両親の財産に身を寄せてみようという「甘さ」はどうしてもあります。

 「土地」、親族は「土地」を巡って、所有権を主張したい。土地はなかなか手に入るものではありません。
 農地には、優遇制度があります。でも、農業をする気のない人間が制度を利用してはいけない。
 主人公は、デザイナーと農民のふたつを選択します。

 良かった表現として、「自分より年下の人間はすべて説教の対象」、「毎日見ていると富士山はうっとうしい存在」、「たてがみのないライオン3頭(3人の姉をさして)」、「富士山は夜のインクにとけていった」、「ホジョ―ニオヤカブ」、「農家における忍耐と繊細さは、女性に向いている」、「らくらくコッシーDXデラックス」、「紅ほっぺ(112パック3万円)と章姫あきひめ(500パック15万円)」、「観光資源としての富士山」、「どこに住むかではなく、だれと住むかが大事」

 難しき漢字として、「齧る:かじる」、「嵌める:はめる」、「高設栽培:人口培養土を使用する。」、「手タレ:手のみを映像に出すタレントさん」

 いろんな言葉が頭に浮かびます。「ふるさと再生」、「地方の時代」、「サービス業」、

 親族の一致協力、団結があります。

 「富士望月いちご:新しい品種への挑戦」

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