2017年05月05日

くろねこのどん 2017課題図書

くろねこのどん 岡野かおる子 理論社 2017課題図書

 登場人物であるえみちゃん、それからくろねのどんは、この世にいるようで、じつはいません。ねこのどんも、小学1年生のえみちゃんも、「妖精」です。物語は現実の出来事ではなく、ファンタジーです。作者の頭のなかにある空間に存在して動いているのです。どんも、えみちゃんも東北の民話に出てくる座敷わらしのようです。不思議なタッチ(感触)の作品でした。えみちゃんは妖精で、この世にいたけど今はもうこの世にいない。亡くなっている。あるいは、すでにおとなになっている。

 作者は、1929年生まれですから、現在、88歳です。巻末を読むと82年から83年の作品を今回合体したとありますから、創作当時の作者の年齢は、35歳ぐらいです。作家は、のちの世に作品を残して消えていきます。魂のかたちを残していきます。

 さみしがりやとかひとりぼっちとも思えませんが、えみちゃんは、空想をしなければならなかった。最初は、えみちゃんだけが空想していたのが、えみちゃんがねこになるあたりから、作者自身の空想が始まった。幻想的です。

 ねこが「ちがわい」としゃべります。ドラえもんを思い出しました。
 よーいどんだから、名前の由来は「どん」。名付け方が素敵です。
 雨の日じゃないと、どんに会えないという設定もいい。
 ねこと女の子がままごとをします。
 スマホ社会の今、単体の「魚屋」は少なくなりました。
 にぼしという言葉も現代の会話にはあまり出てこなくなりました。

気に入った表現として、「とびこんできたのは、雨まじりの風」、「とりかえっこはもうおしまい」
 
わからなかったこととして、「うの花:うつぎという木の花。低木。垣根にしたりする」

 のどかさが良かった。

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