2017年05月01日

この嘘がばれないうちに 川口俊和

この嘘がばれないうちに 川口俊和 サンマーク出版

 前作、「コーヒーが冷めないうちに」は、名作でした。
 プロローグを見ただけで、この物語が、きちんと構成されていることがわかります。
ただ、今回の本は、二匹目のどじょうを狙った形で失敗に終わっていると感じました。設定は前回と同じです。すでにわかっているルールなのに、ルール説明がくどくどと続きます。
説明でページ数をかせいでいます。肝心な部分は文章量が少ない。舞台脚本のようなイメージです。物語の基礎や展開にも無理があります。期待は次第に薄らいでいきました。死に方もかなりつくりすぎです。

時空間移動を手法として、その創作パターンを変更するのではなく、続編を出すということは本流だと思います。終わり方からして、第三弾も用意されていくのでしょう。

最愛の人が亡くなったとして、何十年間(冒頭の作品の場合22年間)もその悲しみをひきずって生きるのか、それとも、からりと(乾燥)忘れて、未来に幸せを求めるという選択肢を選んだほうがいいのか。世代によって判定が変わることもあるでしょう。わたしにとっては、今は、後者が正解だと思います。

作品の性質には、「幸せ」って何だろう? と、読者へ、逆提案してくる面があります。

(再読)

 流し読みのあと、また読みました。
 喫茶「フニクリフニクラ」が出すコーヒーは、モカ・ハラ―という豆の一種類のみ。酸味が強いとあります。モカは飲んだことがありますがそうだったかなあ。
 自殺はやめよう! という強いメッセージがあります。
 死亡までの日数を表現して、他者の幸福を願うメッセージがあります。
 だれだれのせいで、こうなったという思考をやめようというメッセージがあります。
 最後の話「夫婦」は、夫婦をやったことがある人にとってはせつない。夫は仕事を辞めたい。でも辞めない。老いた夫は妻に感謝する。「君がいてくれたから(辞職を避けられた)」、そして、最後の言葉は、「ありがとう」の感謝です。

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