2017年02月16日

ボクの妻と結婚してください。 樋口卓治

ボクの妻と結婚してください。 樋口卓治 講談社文庫

 第一印象です。なんて、傲慢なタイトルだろう。男子の側から見た勝手な理屈です。押しつけがましい。おそらく、病気で余命短しと告げられた夫が、自らの死後、妻の幸せを祈ってという設定で涙なのでしょうが、そうはいきません。夫と妻は別人格です。妻の人生は夫のものではありません。また、購入意欲をそそるようなタイトルをつければいいというものでもありません。

 もう、5年も前の本です。文庫だけでも9刷発行されていますから、冒頭の予想をひっくりかえすような展開と結末が舞っているから人気があると思いたい。
 今はまだ、40ページ付近を読んでいます。

 いきなり「すい臓ガン9月25日余命181日」、放送作家・三村修治45歳、妻子ありから始まります。作者自身がモデルです。でも、こういうことを書くと現実になりそうな気がしてなかなか書けません。
 キーワードは、「世の中の出来事を好奇心で、「楽しい」に変換する仕事」、「番組ハツラツTVも余命6か月(製作打ち切り)」

 仕事人間が、家族との思い出少なくこの世を去っていく光景はこれまでにも何度か出会いました。告別式のこどもさんのあいさつは淋しい。数年間に何人かはそうして40代~50代で、亡くなっていきました。

 TV製作業界の裏話的な部分もあります。
 作品中に出てくる歌が70年代の曲です。

(つづく)

 何のために、自分の死後、妻を再婚させたいのかがわからない。生活保障ではない。愛しているからとは思えない。面白いテレビ番組の素材にしたいというテレビ業界で生きる者の本能、執念は感じる。死ぬ前に、思い出に残る番組の記憶を世に残したいという強いメッセージは伝わってくる。

 焼き直しだろうか。戦争素材の小説にこういうものがあった。あと、ネコがなんとかという小説にもあてはまる。
 主人公は、田舎者で、人情家、ええかっこしいです。

 読み続けています。「甘え」はもういい。死ぬときはきっぱり死にたい。主人公はひどい亭主です。大事なことを身内には話さず、他人に相談します。一般人にはわからないテレビ界のお話です。もう読むのをやめようか。

 主人公三村修治45歳は自己愛だけの人でした。「(仕事優先人間の主人公は)もう夫でも父でもない」。妻子から見て、もう、家庭のことに顔を出さないで、口もださないで状態です。そういう男を見てふつうは、エリートコースからはずれるのがこどもの未来志向ですが、この小説の場合は、息子が、私立中学受験を目指しており、違うんじゃないかと感じました。

 そうはいっても、185ページあたりの中華料理のくだりは絶品です。主人公は、体験したことがないことを体験したことがあるように錯覚させる技術があります。

 予想通り、妻は逆上します。自分の家族を材料にして番組をつくるなんて不謹慎です。後半まできて、肝心の主人公と妻子との交流記事の分量が少なすぎた。なんだかなあという想いが残りました。

気に入ったセリフとか表現として、「我が家は母子家庭みたい」、「自分の家なのに居場所がない」、「ひとつのことに集中するとまわりが見えなくなる」、「ボクがいなくなっても妻子は幸せに暮らす」、「健気な姿(けなげなすがた)」、「男の胃袋を掴む(つかむ)」、「なんでも愚痴に変換する人生は嫌だという趣旨の言葉」、

意味を調べたこととして、「バカラのグラス:フランスのメーカー」、「拗ねている:すねている。(読めませんでした)」、「バンプしたい男子:? ホモということ?」

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