2017年01月22日

また、桜の国で 須賀しのぶ

また、桜の国で 須賀しのぶ 祥伝社

 書評の評判がいいので読んでみました。直木賞候補作ですが、受賞されるかどうかはわかりません。1938年9月30日から始まります。
500ページぐらいあるぶ厚い本です。

 126ページ第二章まで読みました。舞台がヨーロッパ、時代が第二次世界大戦突入前という設定は、直木賞受賞作品としては、避けられるかもしれない。昨年は、戦場のコックたちというようなタイトルの作品が本屋大賞を逃しています。(この部分を書いたときは発表前でした。そして、やはり受賞作品にはなりませんでした。)

 ユダヤ人差別とか大虐殺のお話だろうか。夏の学生向け課題図書では必ず入る1冊です。以前、孤児となった女児の悲惨な物語を読んだことがあります。悲惨さで対抗できる作品はもう少ない気がします。

 主役は、棚橋慎(たなはし・まこと)、ワルシャワ日本大使館で外務書記生として働いています。「シベリア孤児(ポーランド人56名)」という言葉を彼が知ったのが、1920年夏、大正9年で9歳ですから、冒頭、1938年9月30日時点では、27歳です。彼はハーフらしく、父親の名前はロシア人セルゲイ植物学者です。

ヤン・フリードマン:ユダヤ人。電車の中での出会い。24歳。
カミル:シベリア孤児。棚橋慎と会ったときは10歳。棚橋より1歳年上。お母さんと妹を殺したという意識あり。棚橋慎がこどもの頃2時間だけの友だち。
織田寅之助:ワルシャワ日本館職員。書記生。二児の父。愛称とらちゃん。
酒匂:さかわ。在ポーランド日本大使館初代大使
マジェナ・レヴァンドフスカ:日本大使館事務員。シベリア孤児。彼らは「極東青年会」を結成している。600人を超える大所帯。会長が、イエジ・ストシャウコフスキ。最年少がダデク。22歳。日本に来たときは5歳。
レイモンド・パーカー:シカゴプレスの記者
ハンナ(ハーニャー):レイモンドの恋人
ミハウ・ソシンスキ:棚橋慎の隣人。妻と二人暮らしの30代なかばの男性。
カミンスキ:大家
後藤副領事

 ショパン(1810-1849)の「革命のエチュード(練習曲)棚橋慎の父親がピアノで弾いていた曲」、「キリル文字:ロシア文字」、「平原の国(ポーランド)」、「英雄のポロネーズ:ポーランド貴族民族舞曲」、「ダヴィデの星:ユダヤの象徴。二つの生産買う系を逆に重ねて星の形状となっている」、「外交行嚢:がいこうこうのう。封書。外交で使用する」、「ゲシュタポ:秘密国家警察」、「蜂起:ほうき。蜂が巣からいっせいに飛び立つように、暴動・反乱が起こること」、「兵站:へいたん。物資供給のための情報管理。後方支援」、「AK:ポーランド国内軍」

気に入った文節として、「欧州は平和を切望している」、「圧倒的な孤独」、「(ロシア人の)父は、日本人として生きることを決意した」、「戦わなければなにも守れない」

 右往左往しながら読んでいます。登場人物がなんなのか、何者なのか、読んでは戻りを繰り返しています。

(つづく)

 国は、軍事力がなければ侵略される。話せばわかるはずもない。8月31日ドイツ軍はポーランド国に圧倒的な力で入り込んだ。開戦です。

 過去の日本人の生き方は仕事最優先でした。いまは違います。いくら会社に貢献しても、最後に会社は社員個人を救ってはくれません。会社組織の継続を優先します。

 1939年9月、ポーランドワルシャワに安泰はなかった。9月21日正午、大使館員たちのほとんどのメンバーが大使館をあとにする。同月26日、ドイツ軍歩兵部隊がポ-ランド突入。同月28日ポーランドはドイツに降伏した。1939年10月1日、ドイツ軍がポーランドを占拠した。10月5日、アドルフ・ヒトラーがワルシャワに来た。
 
 かなり無理がある創作です。文章は説明の部分が多いような気がします。後半になるにしたがって物語の運びはセリフの連続となり文学的な味わいが少ない。

 読んでいると、歴史進行が空想の中で、やがて広島被ばくまで至ります。やったら時をへだてて、やりかえされる。仕返しは人間界の常です。

 指切りげんまんが伏線でした。

 犠牲の上に成り立つ平和の物語でした。

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