2017年01月01日

縫わんばならん 古川真人

縫わんばならん 古川真人 新潮2016年11月号

 新潮新人賞受賞作、芥川賞候補作です。たまたま、自宅にあった新潮に掲載されていたので読み始めました。

 84歳高齢女性の様子です。舞台は九州らしく、女性の名前は内山敬子です。

 認知症の人の頭の中の世界が描写されているのかと思いきや、そうでもありません。まだ、読みかけですので、あとで、感想をつぎ足します。

(つづく)

 舞台は九州で、設定は大家族です。自分自身、九州で暮らしていたことがあるし、親族もまだ向こうにいるので、実態がよく伝わってきます。こんなふうです。方言もよく理解できます。炭鉱の記事を見るのは久しぶりです。ただ、古い。半世紀前の風景、光景です。現地では、少子化、単身世帯の増加が続いています。
 大家族の家系図がわかりにくい。
現代からさかのぼって、馬に乗って移動する太平洋戦争当時が出てくるのですが、まるで、明治時代を思わせます。

 作者の筆力は強い。若いのにたいしたものです。

 みなが、高齢化して、お葬式の順番待ちようのような状況のところまできました。続けて読んでみます。

(つづく)

「鉤:かぎ」、「厭しい:いとわしい。わずらわしい。(読めない、意味がとれない。そういう漢字は使わないほうがいい」、「タナス:もみをいれる袋」、「褥:しとね。やわらかい敷物。布団」、「暉映:きえい。夕日が海に沈む瞬間の光線の輝き」、「焔:ほのお」、「斥ける:しりぞける」

「区切りがわからない世界」が、この小説の鍵でありテーマです。現実と想像の世界の区切りがわからない。今と、思い出の世界の区切りがわからない。そうして、年寄りたちは、葬式の順番待ちをしている。

(つづく)

 読み終えました。
 お墓。それは、昔、お参りに行く場所でした。いまはもう、そうではありません。お墓は消えていく運命にある場所です。永代供養の棚へと移行しています。そのように、本作品は、時代の流れのとある位置で止まった情景を描いたものでした。

 仲良し大家族の平和な空気が流れていく。それだけの作品でした。

 煙草の記述が多かったことには閉口しました。
 煙草はもう存在を否定する時代です。


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