2016年08月17日

颶風の王(ぐふうのおう) 河崎秋子

颶風の王(ぐふうのおう) 河崎秋子 角川書店

「颶風:ぐふう。強く激しい風」。わかりにくい。タイトルとして、適切とは思えない。

 北海道を讃える文学です。40ページまできました。主人公の名前が「捨造」、名の通り、わけありの出生で養子に出されていますが、18歳になるまでに養父母を亡くしています。そして今、一頭の馬とともに、東北地方から北海道へ開拓団に入るために出発しました。

 物語は、精神的におかしくなってしまった捨造の母親ミネの思い出話に移りました。捨造はまだ、母親のおなかの中にいます。思い出のなかのそのとき、山で雪崩に遭って、これまた一頭の馬とともに遭難しています。
 馬の名前が「アオ」、捨造の母親の名前が「ミネ」、捨造の父親の名前が「吉治(きちじ)」

 文章がしっかりしています。活字も一部独特な字体ですが読みやすい。
 
「出奔した母:しゅっぽんしたはは。逃げ出して行方をくらませた母。親にさからって郷里を出奔する」、「理:道理」、むずかしい漢字が続きます。「抗う:あらがう。抵抗する」、「感ける:かまける。あることに気をとられて、ほかのことをなおざりにする」、「蹄鉄:ていてつ。馬の蹄(ひづめ)を保護する装具」、「懐胎:かいたい。妊娠」、「怯えた:おびえた。怖がる」、「雪洞:せつどう。雪の斜面に掘ってつくる穴」、「胤:たね。血筋を継ぐ者」、「馬喰:ばくろう。馬の売買をする人」、「馬橇:うまそり」、「呪詛:じゅそ。由来はギリシャ語。共同体からの排除」、「掠れる:かすれる。声がかすれる」、「凱風:初夏のそよ風。南風」、「ギアナ高地:南アメリカ大陸北部。切り立った平らな山・テーブルマウンテンが群立する」、「弥終:いやはて。最後」。「時化:しけ。風雨で海が荒れる」、全体的にむずかしい言葉が多く、その点で、読みにくかった。水準を読み手に合わせて下げてほしい。

(つづく)

 時代背景がはっきりしないが、江戸時代の終わりから明治時代初め、今から150年ぐらい前という見当ですが、その時代に、この本では否定してある自由恋愛がなかったとは思えないのです。江戸時代に日本を訪れた外国人たちの手記や日記を読むと、日本は平和でみんな仲良しの国、この世の楽園と書かれています。田舎では、身分制度は名ばかりなりと書いてありました。がちがちの規則に縛られるようになったのは、軍国時代を経てからのことだと思います。
 当時は、一夫一婦制にはこだわっていなかった。浮気に寛大、嫁さんほかの恋人ありでもそれほど責められず。

 さて、馬が「神」の扱いを受けます。馬神です。芝居じみた劇場的展開が続きます。舞台劇を鑑賞しているようでもあります。前半のクライマックス部分は、残酷ですが生きるためには必要なことです。ただし、あまりにむごくて文字を読みませんでした。流し読みです。
 
 物語は、老いた捨造と夫を亡くした嫁と3人の孫娘との家庭生活に移りました。馬を育てて売って、生計を営みます。場所は根室です。

(つづく)

 第三章「オヨバヌ」は、人の力が及ばぬ(自然とか運命には勝てぬ)ということを昭和30年夏頃のこととして表現してあります。捨造ファミリーは、根室での馬を育てて売る生活が立ちいかなくなり、十勝へと転居を強いられるところまで読みました。

 北海道のこととして、「隣」というのは、本州の街中の隣の距離感ではなく、隣は、数キロ先ということがわかりました。

 北海道には、もう何十年も前に2回行ったことがあります。どちらも夏だったので、それ以外の季節の状況は体験したことがありません。
初回に訪れたときは、ここは日本ではなく、ヨーロッパだと感じました。北海道というと、昔から、日本映画とかドラマの影響で暗い場所というイメージがついていましたが、訪れてみたら案外明るい雰囲気のところでした。暗く寒い冬の感覚が深いのですが、そうではありませんでした。この小説の場合も、冒頭付近から暗い雰囲気が続きます。馬と北海道人との付き合いが明治時代から続いていきます。それがこの小説の1本の筋立てをつくっています。花島という無人島に野生の馬が生息することになるのですが、インターネットで調べたところユルリ島という実在の島がモデルになっているであろうということでした。
 馬は、1年中、人と生活をともにしていたと思いこんでいました。時期によって、野生の状態におくと小説のはじめの部分に書いてあり、よく逃げないものだと思いました。

(つづく)

 読み終わりました。時代は、家系が引き継がれ、平成の時代に女子大生になった松井ひかり(捨造の長男の娘の子。帯広市街南端国立大学生物資源学科・2年生。バケン所属・馬研究会の世話になる)が、馬アオの子孫と再会します。感動的です。最初は、重厚で重苦しく読みにくかった文体が、後半では、柔らかく読みやすくなります。

 後記で、作者の本職が「羊飼い」というのがおもしかった。先月訪ねた千葉県マザー牧場でのショー(羊飼い)を思い出しました。


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