2016年07月01日

書店主フィクリーのものがたり ガブリエル・セヴィン 早川書房

書店主フィクリーのものがたり ガブリエル・セヴィン 早川書房

 2016年本屋大賞翻訳小説部門第1位作品です。
 書店主を題材にした本をたまたま読み継いできました。ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯 あすなろ書房(ニューヨークマンハッタンにあった黒人専門書店の店主ルイス・ミショー)、ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロードに出てくる創業130年ぐらい、東京神田にある古書店バンド・ワゴン(店主は3代目堀田勘一、進行役は亡くなった妻のサチさん)、そして、この本、アメリカ合衆国にあるらしきアリス島のアイランド・ブックス、島の本屋(50㎡)、創業1999年、店主は、AJF(A・J・フィクリー。インド系アメリカ人)黒縁メガネ。170cm、63kg、39歳、妻ニックは妊娠2か月だったが、21か月前、自損交通事故で事故死した。でも、幽霊としてフィクリーのそばにいる。(バンド・ワゴンと同じ設定)。そのせいか、フィクリーは、現在アルコール中毒のさびしい姿。ニュージャージー州の生まれ(そこがどこか知りません。アメリカ合衆国東部北のほう)

 最初の30ページぐらいを何度も読み返しました。状況がうまくつかめない。外国人作品ということもあるでしょう。
 アメリア・ローマンという31歳、ナイトリー・プレス(出版社)勤務が、アリス島を訪ねてきます。フィクリーの書店で、「遅咲きの花」(80歳の老人の回想録。78歳で結婚、2年後、妻が83歳で、癌で死ぬ)という本を扱ってほしいことが訪問の目的ですが、フィクリーは断ります。

 「おとなしい凶器」という作品が出てきます。妻が冷凍子羊の脚を使って夫を殺したあと、子羊を警官たちに食べさせた完全犯罪とされています。

 いくつかの作品が出てきます。「ボンベイがムンバイになった年」(アメリカ人6年生のクラスとインド人6年生のクラスが、国際ペンパルの行事に参加する)」

わからなかった単語などです。「ヴィンダルー:インドのカレー料理」、「タマレーン:最初はアルコールかと思ったら、詩集でした。エドガ・アラン・ポーです。(43ページに詳しい説明が出てきました)」、「エルモ:セサミストリートに登場するキャラクター」、「サマリアびと:イスラエル人とアッシリアからサマリアに来た移民との間に生まれた子どもと子孫」、「アイロニー:皮肉、あてこすり(本書中で適切かは疑問)」、「ターキッシュ・ディライト:トルコのお菓子。砂糖にでんぷんとナッツを加える」、「トゥルー・ブラッド:アメリカのテレビドラマ。ヴァンパイアが出てきて人間と共存する」、「ダマスク織り:アラビア風織物」、「キッシュ:フランスのパイ料理」、「電子書籍リーダー:電子書籍を読む専用端末」

気に入った表現の要旨です。「なにも盗るものがないので、無施錠にしていたら、なにかを(2歳の女児を)置いていかれる可能性があった。フィクリーは、タマレーンという詩集を盗まれて、子どもをおいていかれた」、「グーグル:子育てで困るとフィクリーは、グーグルとスマホに言って、解答を求める」、「いつも最後には失望して終わる」、「本というやつは、しかるべきときにならないと読み手がみつからない」、「ほんとうに好きでもない人と一緒にいるよりも、ひとりでいるほうがいい」、「家族になれてうれしい」、「学校で習うことはない。みんな、本に書いてある」、「彼はすばらしい作家で、かつ、下劣な人間だった」、「裕福に見えていたけれど、ほんとうは、貧乏だった」、「ぼくは、すべてを解き明かした」、「ぼくたちは短編集なんだ」

(つづく)

 62ページからがぜん面白くなりました。ここまでは、何が書いてあるのかよくわからず、何度も戻りながら頭を傾けて理解に苦しんでいました。
主人公の書店主フィクリーは、障害者ではなかろうか。発達障害とか、アスペルガー症候群とか。彼はたまに失神します。眠るように意識不明になります。彼は、いちおう、結婚して、美人の妻は交通事故死していますが、彼の思考はかたよっていて、ひとつのことに集中しているけれど、周囲のことまで考えが及んでいません。義理の姉イズメイのコメントでは、自分本位で、自己中心の男とあります。
 あと、200ページぐらい。いっきに読みとおしたい。フィクリーの書店に2歳1か月のマヤが置き去りにされて、彼女の母親(マリアン・ウォレス黒人21歳)は海で入水自殺をしてしまいました。
 今年読んで良かった1冊になるかもしれない。期待がふくらみます。いい本に出会えた。

(つづく)

 「鉄道員(ぽっぽや)」高倉健主演、女優さんの名前は忘れしまった。浅田次郎作、たしか、死んだ娘さんが大きくなってゆうれいになって駅長である健さんのもとに帰ってきていっときを一緒に過ごしたお話だった。それを思い出しました。(その後、読んでいて、アルプスの少女ハイジのようでもあると思いました。おじいさんの名前を忘れてしまいました。さいきんは、忘れることばかりです)

 登場人物として、イズメイ・エバンズ・パリッシュ(フィクリーの亡くなった奥さんの姉、教師。既婚者、男児を妊娠中。夫は浮気中。書中では「イズメイ」で出てくる)
 それからアリス島の警察署長として、ランビアーズ。

(つづく)
 いっきにとはいきませんでしたが、それでも途中いねむりをはさんで、4時間ほどでぜんぶ読みました。良作です。

 物語をあやつる文章づかいがうまい。
 途中、A・J・Fの署名で、横書き短文が章頭に表示されます。最初は意味を理解できませんでした。昔、テニス少年を扱った高校生向けの課題図書で、そのような構成を見たことを思い出しました。まったく意味をとれませんでした。
 今回の小説の場合、後半になるにつれて、理解しました。書店主フィクリーが、養女マヤへのメッセージです。

 いくつかの秘密が隠されたミステリーであり推理小説の部分でもあります。静かな事柄ですが、事は深く、本格的です。
 197ページで終わっても良かったと思いながら、以降、312ページの最後まで読みました。それもまた、よかった。

 静かなる雰囲気のなかにも、衝撃的なドラマ、大きな動きがありました。本物の作家さんによる創作でした。
 捨てられた少女マヤによる作品「海辺への旅」、胸にじーんときました。悲しい。悲しくてつらい作品でした。
血のつながっていない娘への父親の思いが陰に隠れています。

 後半部を読んでいたときに強く心に響いた単語は「誇り(プライド)」でした。自分に自信をもって、自分の生き方を信じて、やりたいことをコツコツとながく積み上げていく。そうすると、結果が出る。それは、世界的な成果でなくても、自分にとっての成果にはなる。


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