2016年06月10日

アリとくらすむし 2016課題図書

アリとくらすむし 島田たく ポプラ社 2016課題図書

 うすい写真本ですが、感想は長くなりそうです。

 表紙の写真、アリの顔が真正面から撮影されています。こんなに間近でアリの顔を見ることはなかなかありません。その顔は怖くはありません。
 アリの頭に何かがのっかっています。平たいこうらをもったカニのような、カメのような昆虫です。寄生虫をイメージしました。アリが捕った獲物のおこぼれを頂戴して生きる。(読み進めていくうち、逆であることがわかって、びっくりしました。)

 濃密できれいな写真が続きます。接近して、拡大して、切れ味が良い画面ができあがっています。

 読み終えてみると、読み手である自分は、「共助(きょうじょ。アリとそのそばにいる虫とが助け合う)」について書いてあると思います。この点を著者は、あとがきで、「好蟻性昆虫(こうぎせいこんちゅう)」という単語で表現しています。アリを好きな昆虫。いずれにしても共存のために助け合う状態で、これは、人間界も同じです。

 アリがアブラムシとかが出すあまい汁が好きなことは知りませんでした。肉食、草食で、液体を摂取するイメージがありません。水分、糖分を摂取するのかもしれません。
 また、アリとテントウムシがライバル関係にあることも初めて知りました。両者ともにアブラムシが必要なのです。
 カメのこうらみたいな謎の物体から脱皮したアブが出てきたのにはびっくりしました。そのアリスアブが、アリのようちゅうを食べるそうですが、アリのようちゅうなんて見ることがありません。
 ハネカクシの紛れ込みの術もおもしろい。まるで忍者です。自分の身を守るために保護色って大事です。
 アリにくっつくダニの存在にも驚きました。なんと、そのダニは、堂々と2匹のアリが一緒にくわえているえさにかみついて、少し横取りするのです。常識では考えられません。

 アリの正式名称はむずかしくておぼえられません。だから、自分で名称を付けて、さらに愛称までつけます。ゲジゲジくんとか、トリモドキとかで、よっちゃんとか、こうらくんです。

 すべての写真がきれいなわけではありません。グロテスクで(異様で薄気味悪い)すぐにページをとばしたい写真もあります。

 チョウを育てる。(でも、羽がきれいなチョウではありません。)そんなアリもいます。

 アリって、昆虫界の基礎的昆虫で、アリのおかげで、たくさんの種類の昆虫が生きていることがわかります。まるで、空気のような存在です。アリがいなくなったら、アリのおかげで生きているたくさんの種類の昆虫たちが困ってしまいます。
 昔見た「バグズ・ライフ(虫たちの暮らし)」というアニメ映画では、バッタでしたが、腕力の強い少数のバッタより、腕力の弱い大多数のバッタの方が協力すれば強いというメッセージを思い出しました。

 シロアリはアリではなく、ゴキブリに近いという話も初めて知りました。そして、アリは、ハチのなかまだそうです。アリに羽があるとハチなのです。

 アリという素材で、たくさんの物語を生むことができそうです。

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