2016年06月08日
ガラパゴス 上・下 相場英雄
ガラパゴス 上・下 相場英雄
売れている本だと思います。書店になかなかないので、先日書店の本棚で見かけて衝動買いをしました。
非正規社員と正規社員とか、同一労働・同一賃金とか、今の、日本の雇用形態を問う問題作ととらえています。
ガラパゴス=ガラパゴス諸島の生き物のように孤立する。日本市場だけを良くしても日本市場は、世界市場からとり残される。
この本の形態は推理小説です。
カバーの写真の意味はなんだろう。起源前ローマの彫刻がある壁のようです。
(つづく)
まだ、42ページ付近ですが、感想を書き始めます。
警察が、殺人事件の被害者と予測される行方不明者のデータを掘り起こします。冒頭付近で、沖縄出身の中学を卒業した男子が祖父から三線(さんしん。三味線みたいな楽器)を贈られて、飛行機で沖縄を離れるようなシーンがありますから、おそらく、2013年11月10日に東京都内の団地の一室で発見された身元不明の死体は彼でしょう。170cm~175cm、ヤセ型、足のサイズ26cmとあります。当時は練炭自殺扱いで処理済みです。
事件の解決に挑むのが、田川信一捜査員です。地取りの鬼と呼ばれています。地取りとは、聞き込みです。捜査一課継続捜査班所属です。どうも、日陰の部署のようです。深酒で肝臓をこわして配置替えされたとあります。体格は小柄、年齢は51歳。妻が里美、ふたりの娘27歳は嫁いで新潟県にいます。生後2か月の孫もいます。田川の直属上司が田川より年下の矢島理事官です。それから、鑑識課身元不明相談室の木幡祐治(こわた・ゆうじ)がからみます。
もうひとつ別の世界が同時進行で書かれています。
悪徳警察職員のような設定の鳥居大(まさる)が病院に登場しました。でだしは、まるで、ヤクザの恐喝です。相手は、青年医師の根来正一郎(ねごろ・しょういちろう)。凶悪逃亡犯人上杉保の整形に関与しているらしい。
(つづく)
読みながら、かなり、緻密な内容で、漢字の読みなど、むずかしく、思ったのは、この世に人間がいるかぎり、人間が存在する限り、殺人事件は絶えないということ。
悪徳警察鳥居大(まさる)は、自動車会社の不正をネタにして自動車会社を脅して、利得を得ようとしています。
最近ニュースになった某自動車会社軽自動車燃費データ不正測定が思い浮かびました。小説と現実が重なることがときおりあったりもします。その点で、この小説は未来を予想した小説です。
いっぽう、殺人事件で殺されたとみられる沖縄出身の若者(今は、身元不明者扱い)の捜査は、田川と木幡(こわた)の手によって、着々と進んでいきます。
意味がわからなかった単語です。「はんグレ:暴力団に所属しないで犯罪を繰り返す集団。語源はぐれる」、「鑑:かん。被害者とか加害者の人間関係」、「もあい模合:こどもの頃、「ゆい」とか「もあい」という言葉はおとなから聞いたことがあります。地域の助け合いです。」、「業過:業務上過失の罪」、「馘首:かくしゅ。読めませんでした。解雇です」、「コミッション:手数料」、「新城:あらぐすく。沖縄県宮古島にある地名の読みです」、「禿頭:とくとう。はげ頭」、「働くものたちのヒエラルキー:階層、階級」、「リーマンショック:アメリカ合衆国。低所得者向け住宅ローンがあった。そのローンの返済ができなくなった。低所得者にお金を貸していたリーマン社が倒産した。リーマン社にお金を貸していた他社にも影響が広がった」、「ガソリン1ガロン:アメリカだと3.8リットル」
印象に残った表現です。「会いぶさぬ 会いぶさぬ 思いや(うむいや)増さてぃ(まさてぃ) 涙そうそう(なだそうそう):会いたくて 会いたくて 君への想い 涙そうそう」、「モジュール化:部品を共通化しての車両組み立て。コスト削減策」、「派遣社員の数で労働力調整をするというような表現。都合の良い調整弁」、「お国柄」、「派遣社員=最後の受け皿」、「地元の所轄で知恵を借りる」
(つづく)
田川信一捜査員が4年前の過去において、課長を更迭人事に追い込んだ原因となった大手スーパーマーケット事件というのがあるのですが、その内容はわかりません。もうひとつの書店員殺害事件はわかります。(その後、気づきました。前作「震える牛」のことでしょう。読みました。狂牛病を扱った作品だったと思います。)
首都高速道路で、欠陥自動車がからむ事故があったようなのですが、その欠陥がまだわかりません。
警官対警官の物語です。悪徳警官にも悪徳である理屈と過去があります。
物語の舞台各地が、自分にとっては身近な場所が多く、読んでいて、リアルすぎます。
被害者の氏名・素性等が明らかになってきました。
人材派遣会社があります。森喜一社長がいます。美容整形外科があります。根来正一郎医師(ねごろしょういちろう)がいます。タイプの違う警察職員が2名います。田川信一と鳥居大(まさる)です。
欠陥自動車エクセス初代モデルがあります。ハイブリッドカーですが燃費はカタログとは違って、現実の燃費は良くない。詐欺とあります。
正社員になかなかなれない派遣社員がいます。
自動車会社の社名が、イヨタ(トヨタのかわりでしょう)、ホンマ(ホンダ)、日進(日産)、トクダと仮想のものなのですが、登場する車名のなかにセドリック(実在)があるのが違和感ありました。
あと、田川刑事の妻里美さんが車に異様に詳しい。女子は車名さえ知らないというのが現実です。上巻の後半は、派遣制度や車製造の研修を受けているようでした。それはそれでかまいません。この小説は男、仕事漬け人間に捧げる小説です。
(つづく)
下巻の最後まで読みました。
現在、20代の非正規労働者がいるとして、それとは別に40代の非正規労働者がいるわけで、どちらがこの物語の登場人物かというと後者の40代のほうです。就職氷河期の大卒当時、正社員になれなかった。その後もなれない。あとから景気が回復してもやっぱり正社員にはなれない。あとの世代が採用される。だから、正社員となることと引き換えに友人を裏切れる。悲惨です。人間の芯が壊れているのは、本人のせいばかりではない。
少しずつ謎が解けていくことに快感がありました。田川捜査員の地取り(聞き込み)の執念はすごい。強烈です。
文章は適度に区切りがあり読みやすかった。
警察官の99%がノンキャリア(高卒)ということは知りませんでした。
ネットに出たデータを根絶することは不可能ではないか。いくらでもコピーができて出回る。ありそうで、実際には無い事件ですが、真実味はあります。
売れている本だと思います。書店になかなかないので、先日書店の本棚で見かけて衝動買いをしました。
非正規社員と正規社員とか、同一労働・同一賃金とか、今の、日本の雇用形態を問う問題作ととらえています。
ガラパゴス=ガラパゴス諸島の生き物のように孤立する。日本市場だけを良くしても日本市場は、世界市場からとり残される。
この本の形態は推理小説です。
カバーの写真の意味はなんだろう。起源前ローマの彫刻がある壁のようです。
(つづく)
まだ、42ページ付近ですが、感想を書き始めます。
警察が、殺人事件の被害者と予測される行方不明者のデータを掘り起こします。冒頭付近で、沖縄出身の中学を卒業した男子が祖父から三線(さんしん。三味線みたいな楽器)を贈られて、飛行機で沖縄を離れるようなシーンがありますから、おそらく、2013年11月10日に東京都内の団地の一室で発見された身元不明の死体は彼でしょう。170cm~175cm、ヤセ型、足のサイズ26cmとあります。当時は練炭自殺扱いで処理済みです。
事件の解決に挑むのが、田川信一捜査員です。地取りの鬼と呼ばれています。地取りとは、聞き込みです。捜査一課継続捜査班所属です。どうも、日陰の部署のようです。深酒で肝臓をこわして配置替えされたとあります。体格は小柄、年齢は51歳。妻が里美、ふたりの娘27歳は嫁いで新潟県にいます。生後2か月の孫もいます。田川の直属上司が田川より年下の矢島理事官です。それから、鑑識課身元不明相談室の木幡祐治(こわた・ゆうじ)がからみます。
もうひとつ別の世界が同時進行で書かれています。
悪徳警察職員のような設定の鳥居大(まさる)が病院に登場しました。でだしは、まるで、ヤクザの恐喝です。相手は、青年医師の根来正一郎(ねごろ・しょういちろう)。凶悪逃亡犯人上杉保の整形に関与しているらしい。
(つづく)
読みながら、かなり、緻密な内容で、漢字の読みなど、むずかしく、思ったのは、この世に人間がいるかぎり、人間が存在する限り、殺人事件は絶えないということ。
悪徳警察鳥居大(まさる)は、自動車会社の不正をネタにして自動車会社を脅して、利得を得ようとしています。
最近ニュースになった某自動車会社軽自動車燃費データ不正測定が思い浮かびました。小説と現実が重なることがときおりあったりもします。その点で、この小説は未来を予想した小説です。
いっぽう、殺人事件で殺されたとみられる沖縄出身の若者(今は、身元不明者扱い)の捜査は、田川と木幡(こわた)の手によって、着々と進んでいきます。
意味がわからなかった単語です。「はんグレ:暴力団に所属しないで犯罪を繰り返す集団。語源はぐれる」、「鑑:かん。被害者とか加害者の人間関係」、「もあい模合:こどもの頃、「ゆい」とか「もあい」という言葉はおとなから聞いたことがあります。地域の助け合いです。」、「業過:業務上過失の罪」、「馘首:かくしゅ。読めませんでした。解雇です」、「コミッション:手数料」、「新城:あらぐすく。沖縄県宮古島にある地名の読みです」、「禿頭:とくとう。はげ頭」、「働くものたちのヒエラルキー:階層、階級」、「リーマンショック:アメリカ合衆国。低所得者向け住宅ローンがあった。そのローンの返済ができなくなった。低所得者にお金を貸していたリーマン社が倒産した。リーマン社にお金を貸していた他社にも影響が広がった」、「ガソリン1ガロン:アメリカだと3.8リットル」
印象に残った表現です。「会いぶさぬ 会いぶさぬ 思いや(うむいや)増さてぃ(まさてぃ) 涙そうそう(なだそうそう):会いたくて 会いたくて 君への想い 涙そうそう」、「モジュール化:部品を共通化しての車両組み立て。コスト削減策」、「派遣社員の数で労働力調整をするというような表現。都合の良い調整弁」、「お国柄」、「派遣社員=最後の受け皿」、「地元の所轄で知恵を借りる」
(つづく)
田川信一捜査員が4年前の過去において、課長を更迭人事に追い込んだ原因となった大手スーパーマーケット事件というのがあるのですが、その内容はわかりません。もうひとつの書店員殺害事件はわかります。(その後、気づきました。前作「震える牛」のことでしょう。読みました。狂牛病を扱った作品だったと思います。)
首都高速道路で、欠陥自動車がからむ事故があったようなのですが、その欠陥がまだわかりません。
警官対警官の物語です。悪徳警官にも悪徳である理屈と過去があります。
物語の舞台各地が、自分にとっては身近な場所が多く、読んでいて、リアルすぎます。
被害者の氏名・素性等が明らかになってきました。
人材派遣会社があります。森喜一社長がいます。美容整形外科があります。根来正一郎医師(ねごろしょういちろう)がいます。タイプの違う警察職員が2名います。田川信一と鳥居大(まさる)です。
欠陥自動車エクセス初代モデルがあります。ハイブリッドカーですが燃費はカタログとは違って、現実の燃費は良くない。詐欺とあります。
正社員になかなかなれない派遣社員がいます。
自動車会社の社名が、イヨタ(トヨタのかわりでしょう)、ホンマ(ホンダ)、日進(日産)、トクダと仮想のものなのですが、登場する車名のなかにセドリック(実在)があるのが違和感ありました。
あと、田川刑事の妻里美さんが車に異様に詳しい。女子は車名さえ知らないというのが現実です。上巻の後半は、派遣制度や車製造の研修を受けているようでした。それはそれでかまいません。この小説は男、仕事漬け人間に捧げる小説です。
(つづく)
下巻の最後まで読みました。
現在、20代の非正規労働者がいるとして、それとは別に40代の非正規労働者がいるわけで、どちらがこの物語の登場人物かというと後者の40代のほうです。就職氷河期の大卒当時、正社員になれなかった。その後もなれない。あとから景気が回復してもやっぱり正社員にはなれない。あとの世代が採用される。だから、正社員となることと引き換えに友人を裏切れる。悲惨です。人間の芯が壊れているのは、本人のせいばかりではない。
少しずつ謎が解けていくことに快感がありました。田川捜査員の地取り(聞き込み)の執念はすごい。強烈です。
文章は適度に区切りがあり読みやすかった。
警察官の99%がノンキャリア(高卒)ということは知りませんでした。
ネットに出たデータを根絶することは不可能ではないか。いくらでもコピーができて出回る。ありそうで、実際には無い事件ですが、真実味はあります。
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