2016年05月24日

アンと青春 坂木司

アンと青春 坂木司(さかき・つかさ) 光文社

 甘味の話で、読み始めたときに、おなかいっぱいだったので、読んでいたら、食べ過ぎで気持ち悪くなり、それでもがまんして読んでいたら、口の中が食べていないのに食べたみたいになって、口の中に甘味が広がりました。
 短編5本です。「アン」は、梅本杏子(うめもと・きょうこ。あだなはコロちゃん)大学生らしい。低身長、高カロリーで彼氏なし。デパートの食品売場にある和菓子店「みつ屋」で菓子販売のアルバイトをしているそうです。そのほか、アンのお母さん(家族はほかに父と兄)、椿店長、和菓子職人立花さんなどが登場しました。

「空の春告げ鳥」
 時は、1月中旬です。
 クレーマーみたいなお客さんの言葉として、「飴細工」の意味の研究です。アンさんの地理がわからないところがおもしろい。金沢市が日本のどこにあるのかがわかりません。
 獅子舞で、からだが風呂敷、「包む」の意味がいい。
 すんなり、読みやすい文章です。

「女子の節句」
 京都のことについて書いてあります。源氏物語に出てくるお菓子を今でも食べることができるという一文の意味合いは深い。梅本杏子さんは、友達と3人で京都の和菓子店を訪れます。その後職場の来客話です。
 それ以降が、けっこう読むのがつらい。敬語の使用方法をからめた接客です。研修を受講しているようでもあります。少々お待ちいただけますか。すみません。申し訳ありませんの世界です。相手さんのおしゃっていることは正しい。世間の難しさが凝縮されている短編部分です。クレーマーにも一分の理(いちぶのり)とあります。熨斗(のし)の使い分けは基本です。蝶結びと結び切り、これを間違えると大変な騒動になります。
 クレーマーにも温かい心根(こころね)があると思いたい。
 推理小説のような部分がある短編です。
 「いい人でも悪い人でもお客はお客」は、ちょっととつらい。
 すごい構成力と想像力でできあがっている作品です。

「男子のセック」
 店舗の経営手法に関するお話です。
 次の仕事をするために休みはきちんと休む。
 「アヒル」という言葉の解明に挑みます。
 読んでいると、仕事の小説であることから疲れてきました。

「甘いお荷物」
 ちいさなこどもさんのアレルギー話です。
 母親が過保護か否かというお話があります。けっこう難しい状況設定で読んでいると硬さが伝わってきました。
 「この子にとってよくない○○」、「じゃあ、何が飲める。食べられる。」
 印象に残った確認手法は、仮説を立てて、調べて、推理する部分でした。
 
 「秋の道行き」
渾身の一作です。
 自分には、濃密過ぎて、理解するだけの読解力がありません。和菓子を題材にしたビジネス小説です。自分がいて、客がいて、上司がいて、同僚がいる。甘味の製法があって、甘味の歴史、食べ方、見た目、意味の追求と調査がある。さらに、時期がからんできます。そして、人間心理の描写です。
 和菓子職人兼販売員の立花早太郎さんは元気がなかった。立花さんは男だけれど、乙女である。
 福島の放射能話がそっと入り込んできます。
 いい言葉として、「話さないとわからない」
 わからなかった単語として、「干菓子:ひがし。生菓子に対する渇いた菓子。せんべいほか」


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