2016年05月16日

母になるのがおそろしい ヤマダカナン

母になるのがおそろしい ヤマダカナン KADOKAWA

 優しいママのあったか育児日記かと思っていたらずいぶん違っていました。マンガですが、本の帯には、男性依存の母、義父からのわいせつ行為とあります。なんだか、おぞましい(どろどろしていそう。)。きれいごとではない、本音が書いてあります。

 作者は、「遺伝」をとても気にしていました。自分も母同様に男性関係にだらしなくなる。だから結婚しない。出産もしない。子どもができずに悩んでいる夫婦からしたら、考えられないことです。とはいえ、作者の気持ちは矛盾しています。外面では否定しながら、内面では子をもつ母でありたいと想っています。葛藤(かっとう)があります。だから、「仕事人間」になる。こういう理由で、仕事人間になる女性もいるのかと知りました。

 大酒飲み、煙草、ギャンブル、浮気、暴力、多かれ少なかれ、人間がもつ暗いかもしれない部分です。程度の高い低いはあれど、だれしもがもつ趣向です。
 
 こどもがらみの作品で、辻村深月(つじむら・みづき)作「朝が来る」があります。名作です。このマンガの内容と関連がある部分もあります。

 作者のこどもの頃の過去話を読みます。読んでいると自分もつらくなります。どうなのだろう。今の、50代後半以上の世代というのは、すでに亡くなってしまった超高齢者の世代も含めて、親から十分な愛情をもらって育った人は少ない。だから、民話では、おじいさん、おばあさんは出てくるけれど、おとうさん、おかあさんは出てこない。みんな上のきょうだいに育てられたり、祖父母に預けられたりしている。ホームドラマなんてテレビの中だけの世界だった。

 作中、作者は、悲惨な体験が源で、漫画家として食べていけるようになったと書いています。
歳をとってわかったことですが、幼少時のスラム暮らし、貧困暮しの体験があったからこそ、いまの幸せな暮らしがある。メンタル面でつぶれずにやってくることができたのも、あの頃の、なにくそ、負けてたまるかという根性とか努力の積み重ねによって体得した耐性がある。

 母には母の、義父には義父のそれぞれ上から受け継いだ「遺伝」がある。「遺伝」は、作者のみで突然発生したものではない。作者は、義父に殺意さえ抱きます。思うだけで、殺してはいけない。小さな仕返しはしてもいい。

 赤ちゃんは、いつまでも赤ちゃんであるはずもなく、こどもはいつまでもこどもであるわけでもない。
老齢になると、義務でやらねばならないことがなくなります。気持ちが落ち着きます。

 こどもは、天からの授かりものとして大切にしたい。後半は何度か涙が出ました。いいお話でした。


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