2016年01月19日

空に牡丹(ぼたん) 大島真寿美

空に牡丹(ぼたん) 大島真寿美 小学館

 牡丹は、「花火」です。夜空に牡丹の花のように花火があがるのです。
 時代は、江戸時代の終わりから、明治時代の初めにかけてです。主人公は、東京に近い、丹賀宇多村(にかうだむら)名主の血を引く可津倉静助です。
 大きな波や山坂がある物語ではありません。淡々と、彼と彼の周囲の人々たちの生活が記述されていきます。

 子孫のだれかが、ご先祖である静助さんの過去を語る方式です。それがだれなのか、最後に種明かしがあるやもしれません。
 静助は、目立たない、のんきな人だったそうです。とても、主人公を張れるような人物ではないにもかかわらず、主人公扱いです。
静助は花火に夢中になります。人生を花火に重ねます。人生の長さと花火の長さはそれほど変わらないという表現は、高齢になってくると実感します。
 
 わからなかった言葉として、「戊辰戦争(ぼしんせんそう):慶応4年・明治元年、薩長の政府軍と旧幕府軍との戦い。函館で終戦。土方歳三(ひじかたとしぞう)戦死など」、「ご一新:明治維新の古い言い方」、「焔硝蔵(えんしょうぐら):火薬や鉄砲をしまっておくところ」、「拵えた(こしらえた):花火をこしらえたと表現している」、「月代(さかやき):武士の髪型、半月のように切ってある」、「日清戦争:明治27年」

 読んでいて好きなのは、両国あたりの風情と風景です。隅田川やら、今で言う両国国技館、東京スカイツリーもそうかもしれませんが、明治初期の風景は落ち着きます。

(つづく)

 読み終えました。
 静助さんというご先祖がいた。彼は、花火が好きだった。
 私財を投じて、村の人たちのために花火をあげた。
 花火の中に、村人たちの思い出がある。
 静助さんのことをだれもが覚えている。
 彼は、明治時代が終わるころ、50代で亡くなったけれど、会ったこともない後世のひとたちの心のなかで生き続けている。
 周囲が、ひとりの善人を盛り立てて、自分たちもいい思いをする。リーダー論まで生まれそうです。
 歴史を扱う作者さんです。以前「ピエタ」という作品を読んだことがあります。主人公のまわりに愛情があります。

 名古屋駅そばの書店で購入した本で、著者のサインがあります。そういう本を初めて買いました。黒マジックでサインしてあるのかと思ったら、銀色でした。そばに、朱肉の氏名印もあります。なんか、印のほうが本物っぽい。印によって、署名が本人のものと証明されています。おもしろい。


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