2015年11月29日

雨の降る日は学校に行かない 相沢紗呼

雨の降る日は学校に行かない 相沢紗呼(あいざわ・さこ 男性) 集英社

 登校拒否の女子中学生14歳ぐらいが読者の対象者です。
 非常に不安定で繊細な心理です。心が傷つきやすく、もろい。
 読んでいると悲しくなってくる。
 短編6本です。
 時空間移動があります。最後の短編が最初の短編につながります。わたしの好きなパターンです。

「ねぇ、卵の殻がついている」昼食としてゆで卵をむく保健室登校をしているサエとナツがいます。読み手としては、だめだなあと元気がなくなります。いじめが要因のようですが、まずは、規則正しい生活を幼少時から体に染みこませてこなかったことが弱さの原因ではないか。みんな忙しいので、いつまでもふたりの相手はしていられない。置いてきぼりです。そして、当然、そんなふたりにも別れが訪れるのです。わからない言葉が出てきました。『シュール:非現実的、幻想的』

「好きな人のいない教室」中2の女子の恋です。相手はぶさいくな男子。だから女子は、他の女子のおもちゃにされて、いじめにあいます。残酷です。教師に訴えるとかしなければいけない。森川さんの人格がくずれていく様子を力量豊かに記述してあります。可哀そうになってくる。作者は男子なのに、どうして手に取るように女子の気持ちを圧倒的な文章力で表現できるのだろう。

「死にたいノート」これもまた悲惨な短編です。メモ帳に遺書を毎朝書く藤崎涼がいます。そのメモ帳を学校で紛失して、クラスメートの女子に拾われて読まれてしまいました。死にたい、死にたいは、本当は、生きたいという叫び声です。

「プリーツ・カースト」中学2年生女子の制服スカート丈の話から始まり、匂い(香り)の話に続き、福原真由がおたふくとかオランウータン踊りとかでいじめられます。スカート丈による人間の分類、上下身分位置をカーストというタイトルで表現しています。いじめの発端をつくるのは、福原真由の小学校時代の友だちエリです。裏切り行為です。女子集団は人間のカスです。陰湿です。思いやりのない会話が続きます。どうして、どこから、そのような冷酷な発想と言葉が出てくるのだろう。育ち方を疑います。

「放課後のピント合わせ」スマホで自分の裸同然の写真を撮影してネットのコミュニティにアップして賞賛を浴びることに快感を感じる中学2年生女子が堀内しおり(ハンドルネームマリ)です。これまでの作品と違って、人が更生(正しく生まれ変わる)していくドラマです。彼女はアナログな一眼レフフィルムカメラを手にしてから輝き出します。暗い雰囲気の作品が続いていたので救われました。印象に残った文節として『だから交(ま)ざれないんだ。』がありました。

「雨の降る日は学校に行かない」この短編集の読み始めから感じていたことです。教室ってなんだろう。大人になって、学校から遠ざかっていくと、教室って、意味のない空間だったことがわかります。そこはとても狭い世界(空間)です。最後のこの短編では、その点を深く考察してあります。読んでいると泣けてきます。本来、悩まなくてもいいことで、少女は深く悩み傷ついています。

今年読んでよかった1冊でした。重い内容でしたが、強い意思をもって、堂々と自分の好きなことに打ち込む姿勢があれば生き抜けます。

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