2015年11月22日

ちょっと今から仕事やめてくる 北川恵海

ちょっと今から仕事やめてくる 北川恵海(きたがわ・えみ) メディアワークス文庫

 若い人向けの「救い」の書です。
 自殺防止の願いがこめられています。
 主人公俺(青山隆)は仕事のことでとても悩んでいます。職場の人間関係であったり、長時間労働であったりです。そこへ「ヤマモト」が登場します。まるで、幽霊のような存在です。
 ガネーシャが登場した「夢をかなえるゾウ」パターンで、ヤマモトがいろいろアドバイスをしてくれるのかと思いきや違っていて、オチはなかなかいい。
 昭和40年代以降にあった「過労死」とか、バブル崩壊後の就職氷河期にあったなかなか仕事に就けなかった若者の自死とか、そして今は、労働基準法違反のブラック企業での労働問題を背景に置きながら、人が生きる意味をさぐります。
 9月26日から始まって、12月24日に終わる日記形式で、3か月間の経過です。中身は、11月21日のところで終わって完成されています。
 休みなしの長時間労働を、あたりまえのものと肯定できる読み手の自分がいて、読書が始まりました。24時間、365日、寝ている間も仕事の夢をみます。だから、目覚めても疲れています。一般的にサラリーマンは、住宅ローンや子どもの教育費、ちょっとした趣味、車の維持費とか、お金が必要です。忍耐です。ストレスがたまっています。
 社会構造が変わりました。団塊の世代がリタイアして、少子高齢化社会です。これまでの繁栄は衰退へと向かっています。年功序列も終身雇用も崩れました。書中では、正社員へのこだわりを扱った部分があります。全員が正社員はもう無理なのでしょう。
 推理小説っぽい面をもった内容で、読み手は、途中で、うすうすからくりに気づくのですが、構成はよくできています。
 なぜ、退職よりも先に自殺が先なのか。以前テレビ番組で、大卒後数年間就職活動をしたが正社員の職につけなかった息子が自殺した父親のインタビューを見ました。驚いたのは、父親が、ほっとした様子だったことです。ちょっと、考えられません。
 本書のなかでは、青山隆の両親が隆を温かく支えてくれます。自殺の原因は、企業だけではなく、親にも問題ありです。
 逃げ方を学ぶ。知る。がんばれ一辺倒(ひとつにかたよった考え)ではもたない。224ページにあった言葉として、みんなもがき苦しみながら生きていくというような表現が良かった。今年読んで良かった1冊です。


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