2015年06月21日

おめでとう 川上弘美 新潮文庫

おめでとう 川上弘美 新潮文庫

 短編集です。
「いまだ覚めず」女子が女子を愛した遠い過去のお話。12年ぶりに東海道線に乗って、静岡県三島でタマヨさんに再会して、ふたりでタコを食べに行った話。独特の内容でした。文章は自由闊達(かったつ、ちいさなことにこだわらない)です。
「どうにもこうにも」女性の霊にとりつかれた女性のお話です。自動車事故により30歳で死んだモモイさんにとりつかれたのが、40歳の女性です。ふたりは同じ井上という男と付き合って別れたという共通点があります。怪談です。面白い。
「春の虫」なんというか、困りました。女子と女子のラブです。
「夜の子供」部屋をまるくはく人、だれでしょうが面白かった。がみがみ言っていたという記述を読んで、今は、使わない表現だとふと気が付いて、それもまた面白かった。
「天上大風」、「冬一日」、「ぼたん」、「川」、「冷たいのが好き」、「ばか」、「運命の恋人」、「おめでとう」と、短い作品が続きます。不倫ものです。男性のほうも女性のほうも不倫で、女性は主婦だったりします。あとは、離婚後、独身、ひとり暮らし女性、収入が少なくて貧乏だったりもします。哀愁がただよいます。結婚生活の男女関係にないものとして、恋愛感情、だから、家の外で恋愛をする。人間の本能なのか。文章の言い回しが上等です。うまい。<将来夫になり、夫でなくなる男にあのときエレベーターの中で出会った>という趣旨の文章、<自分の広い心・しなやかな生き方は、優柔不断・おしきられやすいに言い換えることができる>とか、すばらしい。登場人物女性のカナカナ名がしっくりきます。タマヨ、モモイ、ショウコ、ミヤコなどです。女同士で励まし合う、支えあう友情があります。不倫ものは真剣に考えると気持ちが重くなるのですが、小説と割り切れば読むのも楽しい。
 セクハラ防止運動の観点から見ると、合意とか、同意とかしているからいいようなものの、現実社会では、許されるような行為ではなく、泣いている相手方もいることだろうしと、余計な心配をしてみたくもなった。
 結局のところ、老いてしまうと、孤独死が待ち受けているという、男にも女にも、厳しい結末がある。今生きているこの瞬間がよければいい。未来はいらないという内容です。
 2000年11月刊行の作品群です。もう、15年も経過してしまった。


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