2015年05月18日
ペンギンが教えてくれた物理のはなし 2015課題図書
ペンギンが教えてくれた物理のはなし 渡辺佑基 河出ブックス 2015課題図書
冒頭数ページに渡る動物写真は、動物が苦手な人にとっては抵抗感があるかもしれません。ことにペンギンが、うじょうじょいる写真は、ちょっと引きました。著者は、生物学者です。東京都立川市にある国立極地研究所の職員です。南極・北極を中心に活動しているそうです。
活動手法は、動物に測定機械を取り付けて、動物の行動記録をとる。機械には、カメラと移動記録が残る装置が付いている。タイトルを見て、なぜペンギンが物理なのだろうと思いました。11ページに「ペンギン物理学」という言葉が出てきますが、読み始めたばかりの今はまだ、その内容は語られません。
動物に取り付ける機械の大きさは、大小あって、人差し指の先ほどであったり、15cmくらいの長さであったりする。後日、動物を捕獲してその機械をはずしたり、機器だけを操作で動物の体から離したりして回収することができる。この方法を「バイオロギング」という。
記録をとって分析することは、この世のすべての物事の基本です。
本は、章によって、柱のごとく、項目が分けられています。「渡る」は、渡り鳥とか、魚の回遊とかでしょう。それに続くのが、「泳ぐ」、「測る」、「潜る」、「飛ぶ」です。
本書の狙いが、11ページにばっちり書いてあります。「バイオロギングの明らかにした野生動物のダイナミックな動きを紹介し、その背景にあるメカニズムや進化的な意義を明らかにすること」。わたしは、その文章の前にある記述のほうが気に入りました。「(動物の信じられない運動能力の背景にあるのは)重力やエネルギー保存則といったすこぶるシンプルな物理学である」
地球を南北に遠距離移動する「ミズナギドリ」、同様に地球を東西に移動する「アホウドリ」、体温を高く保つことができるから遠距離をスピードにのって移動できるクロマグロ、ホオジロサメの記述までを読みました。
地理がわかる人でないと、距離感を理解できないでしょう。
なかなかおもしろい内容です。
(つづく)
56ページまでの「渡る」まで、読み終えました。
生き物は、食べるために、食物を求めて移動する。生きるために移動している。地球の気候に合わせて移動している。その距離は、人間の想像を超えている。移動するときには、風である偏西風と貿易風を利用する。魚類は海流を利用している。彼らは移動のための道具を持たない。当然、お金ももたない。彼らは、超遠距離を何日もかけて、自力で移動する。各自、移動ができる体になっている。何百年も前から、彼らはそうやって移動している。えらい! びっくりしました。固定観念の打破です。やればできる! 動物に教わりました。
36ページに動物追跡システムとして、アルゴスというものの説明があります。人工衛星を用いた動物追跡システムです。その部分を読んでいる時に、メタボで健診にひっかかり、万歩計を付けさせられて2週間を過ごしたことを思い出しました。毎日24時間の記録が万歩計のデータに残るのです。何時から何時までちゃんと運動のために歩行をしたかどうかの記録が万歩計に残るのです。自分が計測される動物になった気分です。
43ページにニホンウナギの記事が登場します。先日読んだ、「うなぎ 一億年の謎を追う 塚本勝巳 Gakken 2015課題図書」を思い出しました。ニホンウナギはグアム島のそばで卵を産みます。そして、ウナギのあかちゃんは、日本を目指して黒潮に乗るのでしょう。
南極のアデリーペンギンという項目が46ページにあります。写真は、巻頭2ページ目、⑪の写真だと思います。遠方まで、ペンギンの群れが続いています。まるで、ペンギンが支配する星に人間がロケットで到着したようです。映画です。
著者は、2010年、2011年の2シーズンを南極で過ごしています。音のない世界。レトルトの食事。そしてペンギンもまた、2000kmぐらい移動しているのです。
(つづく)
「泳ぐ」のところまで読みました。一章読むのに1時間ぐらいがかかります。全部読むのに、あと3時間ぐらいかかりそうです。内容は、だんだん面白くなってきました。
マグロは時速80kmでは泳がない。定説をくつがえしています。これまでの説は誤っていました。それが良くないとは評論されていません。間違いは直せばよいということが研究成果の発表と定めておられます。しばらくうしろに80kmの根拠になった昔の研究者の調べ方が書いてあります。
マグロは、機器を付けて調べた結果、時速8kmが最高速度だそうです。
定置網漁のことが、著者にとっては、大きな歓喜として書いてあります。文章を読んだ限りで言えば、お魚さんたちにとって残酷ではなかろうかという感想をもちました。海のその位置にいた生き物すべてが網にかかってもちあげられます。魚類、甲殻類、イカ、アンコウ、マンボウ、狭いところに引き上げられて、呼吸ができなくなって、死んでしまいます。
地震とか津波の記述はないのですが、岩手県大槌町が研究用魚類採取の場所として紹介されています。そこに、大学の研究施設があるようです。
話題は、世界で一番動きが遅い北極にいるニシオンデンザメ、逆に動きが早い魚として、マグロ、ホホジロザメ、太古に絶滅したムカシオオホホジロザメが紹介されます。
マンボウというさかながいます。作家・精神科医である北杜夫さんの小説を読んで育った世代です。ドクトルマンボウなんたらかんたらというパターンの本をたくさん読み増した。ユーモラスなマンボウですが、研究材料としてみるとけっこうシビアなおさかなのようです。
さて次の章は「測る」です。
(つづく)
測定機器を発案して製作し、使いこなしていく歴史経過が記されていました。アナログ(手作業)からデジタル(パソコンによる作業)です。
1940年に論文を発表したアメリカのショランダーという人が先駆者とあります。プールでアザラシを飼育して研究材料にした結果、アザラシは、潜水すると心拍数が下がる、反対に水から上がると心拍数が上がることを発見しました。「潜水徐脈」とか「潜水反射」という単語が現代は使用されているそうです。
ショランダーの実践を踏まえて、アメリカのジェラルド・クーイマンが、1960年代初め、知り合いの時計修理工職人と相談しながら、クーイマン式記録計をあみだします。アザラシの生態がこと細かく明らかにされていきました。バイオロギングの機械の始まりです。
海鳥の研究家であるイギリスのローリー・ウィルソンに関する記述が続きます。南アフリカの海岸にたむろするケープ・ペンギン、1984年に放射性物質を使用した記録計で潜った深度、滞在時間を測定しました。
日本人の学者が登場します。アザラシにカメラを装着しようとしていたのが、極地研究所の内藤氏です。1980年代から劇的にデジタル化が進行します。精密機器メーカーと開発を進めます。1984年に内藤型記録計ができあがりました。南極の昭和基地に記録計は運ばれアデリーペンギンに取り付けられました。
次の章は「潜る」です。
(つづく)
ペンギンはなぜ潜るんですかという質問が提示されます。これに対して、オキアミ(エサ)をとるためですとう答えが用意されています。著者は、さらに深く考えました。そもそもペンギンは鳥である。鳥なのになんで、海に潜るのかです。
ペンギンだけではなく、アザラシ、クジラ、ウミガメなど、祖先は、空を飛んでいたし、陸を動き回っていたそうです。進化したはずなのに、なぜまた海へ戻ってきたのか。大きな疑問が出されます。進化は理屈に合わないと解釈されています。おもしろい。
以降、アザラシによる潜水のことが、物理の計算式ともからめて、調査結果分析・考察と続いていきますが、わたしは、あまり理解できませんでした。ただ、著者の興奮する気持ちはよく伝わってきました。
説明の中で、ペンギン、アザラシ、クジラは、よく潜る(上手に潜る)ために、筋肉と血液に酸素をためる。だから、それらの肉は血が染みてまっかっかというような表現があります。たしかに、今から50年ぐらい前、こどものころによく見かけたクジラの刺身は、血が染みて赤い肉でした。
アザラシは、息を吐いてから潜水に入る。肥満体は、サバイバル能力に優れている。一見反対のように思えますがそうではありません。それなりのメリットがあるのです。
さて、ついに最後の章「飛ぶ」まできました。
(つづく)
「飛ぶ」の章を読んで、最後の「おわりに」も読み終えました。
「おわりに」では、生物学に関するふたつのアプローチについて書いてありました。そのひとつは、伝統的なやりかたで、典型を掘り下げる手法、もうひとつは、異例からあぶりだす手法です。著者は、後者を選択するそうです。経費も手間もかかりますが、エキサイティングだそうです。どちらの手法が正しいとは評価はできない。取り組む人の趣向です。
さて、「飛ぶ」です。ワタリアホウドリのことが書いてあります。体重10kg、両翼3mです。楽に飛んでいる。飛んでいるときの心拍数は、休んでいる時と同じ。そういうシンプルなところが大事です。がんばらない。だけど、成果は残している。
次に多摩動物公園にいるハチ鳥が登場します。ホバリング(停止した位置で空中にいる)しています。ものすごい筋力と紹介されています。
グンカンドリの話が出ます。高度2500mまで上昇し、海面近くまで急降下する。大規模な上下運動をする。グンカンドリは、木にとまるようなことはしない。たいていは、空中にいる。上昇気流を利用して上昇し、自分の気分で下降する。力はいらない。そのへんを物理の公式のような数式を利用して説明がなされています。
ヒマラヤ山脈を超えて移動するインドガンという鳥の話が出てきます。8時間で5000mから6000mの高度に達する。山を越えたらいっきに下降していく。山脈の高度が低い位置を超えていく。空気が冷たい夜に出発して、体温の調整をする。飛行速度もいちばん負担のないスピードを選択する。自然の驚異がありますが、物理的に数値的に論理的に行動している。
アホウドリは振り子運動をしている。上がったり下がったりの繰り返し。位置エネルギーと運動エネルギーという言葉で解説がされています。アホウドリは風を有意義に活用している。
後半に、南インド洋南極近くにあるフランス領ケルゲレン島におけるフランス人たちとの調査旅行で、ケルゲレンヒメウという鳥の遊泳速度を調べる機械から、飛行速度を計測する手法を偶然発見できた体験が書かれていました。フランス料理と日本食のお話を出しながら、感激の体験となっています。
以下は、言葉の意味が分からなかったので、調べておきました。
ポスドク生活:ポストドクターの略。常勤研究者になる前の研究者。非常勤研究者で、所属先組織とか企業がまだ決まっていないけれど研究活動はしている人のことかと思いました。
パラメーター:振り子の振動を決めるもの。本書の場合、アホウドリ、グンカンドリなど大型鳥類が飛行するときの様子を、振り子に例えてあることから、鳥の動きや風の動きを指しているのかもしれません。
ダイナミックソアリング:上昇気流にのって滑空すること
最後に、研究者の生活についてコメントしておきます。この本を読んで学者生活にあこがれるこどもさんもいることでしょう。
ただ、学者生活はかなり窮屈そうです。ひとつのことを極める。自分の欲望をかなえる。それが最優先の毎日が続きます。家庭生活は二の次になるでしょう。家族がいてもいないような生活が続きそうです。それを踏まえて、学究生活に入っていかれた方がいいし、周囲の人も孤高の研究者に研究以外のことを求めないという覚悟を決めた方がよさそうです。
冒頭数ページに渡る動物写真は、動物が苦手な人にとっては抵抗感があるかもしれません。ことにペンギンが、うじょうじょいる写真は、ちょっと引きました。著者は、生物学者です。東京都立川市にある国立極地研究所の職員です。南極・北極を中心に活動しているそうです。
活動手法は、動物に測定機械を取り付けて、動物の行動記録をとる。機械には、カメラと移動記録が残る装置が付いている。タイトルを見て、なぜペンギンが物理なのだろうと思いました。11ページに「ペンギン物理学」という言葉が出てきますが、読み始めたばかりの今はまだ、その内容は語られません。
動物に取り付ける機械の大きさは、大小あって、人差し指の先ほどであったり、15cmくらいの長さであったりする。後日、動物を捕獲してその機械をはずしたり、機器だけを操作で動物の体から離したりして回収することができる。この方法を「バイオロギング」という。
記録をとって分析することは、この世のすべての物事の基本です。
本は、章によって、柱のごとく、項目が分けられています。「渡る」は、渡り鳥とか、魚の回遊とかでしょう。それに続くのが、「泳ぐ」、「測る」、「潜る」、「飛ぶ」です。
本書の狙いが、11ページにばっちり書いてあります。「バイオロギングの明らかにした野生動物のダイナミックな動きを紹介し、その背景にあるメカニズムや進化的な意義を明らかにすること」。わたしは、その文章の前にある記述のほうが気に入りました。「(動物の信じられない運動能力の背景にあるのは)重力やエネルギー保存則といったすこぶるシンプルな物理学である」
地球を南北に遠距離移動する「ミズナギドリ」、同様に地球を東西に移動する「アホウドリ」、体温を高く保つことができるから遠距離をスピードにのって移動できるクロマグロ、ホオジロサメの記述までを読みました。
地理がわかる人でないと、距離感を理解できないでしょう。
なかなかおもしろい内容です。
(つづく)
56ページまでの「渡る」まで、読み終えました。
生き物は、食べるために、食物を求めて移動する。生きるために移動している。地球の気候に合わせて移動している。その距離は、人間の想像を超えている。移動するときには、風である偏西風と貿易風を利用する。魚類は海流を利用している。彼らは移動のための道具を持たない。当然、お金ももたない。彼らは、超遠距離を何日もかけて、自力で移動する。各自、移動ができる体になっている。何百年も前から、彼らはそうやって移動している。えらい! びっくりしました。固定観念の打破です。やればできる! 動物に教わりました。
36ページに動物追跡システムとして、アルゴスというものの説明があります。人工衛星を用いた動物追跡システムです。その部分を読んでいる時に、メタボで健診にひっかかり、万歩計を付けさせられて2週間を過ごしたことを思い出しました。毎日24時間の記録が万歩計のデータに残るのです。何時から何時までちゃんと運動のために歩行をしたかどうかの記録が万歩計に残るのです。自分が計測される動物になった気分です。
43ページにニホンウナギの記事が登場します。先日読んだ、「うなぎ 一億年の謎を追う 塚本勝巳 Gakken 2015課題図書」を思い出しました。ニホンウナギはグアム島のそばで卵を産みます。そして、ウナギのあかちゃんは、日本を目指して黒潮に乗るのでしょう。
南極のアデリーペンギンという項目が46ページにあります。写真は、巻頭2ページ目、⑪の写真だと思います。遠方まで、ペンギンの群れが続いています。まるで、ペンギンが支配する星に人間がロケットで到着したようです。映画です。
著者は、2010年、2011年の2シーズンを南極で過ごしています。音のない世界。レトルトの食事。そしてペンギンもまた、2000kmぐらい移動しているのです。
(つづく)
「泳ぐ」のところまで読みました。一章読むのに1時間ぐらいがかかります。全部読むのに、あと3時間ぐらいかかりそうです。内容は、だんだん面白くなってきました。
マグロは時速80kmでは泳がない。定説をくつがえしています。これまでの説は誤っていました。それが良くないとは評論されていません。間違いは直せばよいということが研究成果の発表と定めておられます。しばらくうしろに80kmの根拠になった昔の研究者の調べ方が書いてあります。
マグロは、機器を付けて調べた結果、時速8kmが最高速度だそうです。
定置網漁のことが、著者にとっては、大きな歓喜として書いてあります。文章を読んだ限りで言えば、お魚さんたちにとって残酷ではなかろうかという感想をもちました。海のその位置にいた生き物すべてが網にかかってもちあげられます。魚類、甲殻類、イカ、アンコウ、マンボウ、狭いところに引き上げられて、呼吸ができなくなって、死んでしまいます。
地震とか津波の記述はないのですが、岩手県大槌町が研究用魚類採取の場所として紹介されています。そこに、大学の研究施設があるようです。
話題は、世界で一番動きが遅い北極にいるニシオンデンザメ、逆に動きが早い魚として、マグロ、ホホジロザメ、太古に絶滅したムカシオオホホジロザメが紹介されます。
マンボウというさかながいます。作家・精神科医である北杜夫さんの小説を読んで育った世代です。ドクトルマンボウなんたらかんたらというパターンの本をたくさん読み増した。ユーモラスなマンボウですが、研究材料としてみるとけっこうシビアなおさかなのようです。
さて次の章は「測る」です。
(つづく)
測定機器を発案して製作し、使いこなしていく歴史経過が記されていました。アナログ(手作業)からデジタル(パソコンによる作業)です。
1940年に論文を発表したアメリカのショランダーという人が先駆者とあります。プールでアザラシを飼育して研究材料にした結果、アザラシは、潜水すると心拍数が下がる、反対に水から上がると心拍数が上がることを発見しました。「潜水徐脈」とか「潜水反射」という単語が現代は使用されているそうです。
ショランダーの実践を踏まえて、アメリカのジェラルド・クーイマンが、1960年代初め、知り合いの時計修理工職人と相談しながら、クーイマン式記録計をあみだします。アザラシの生態がこと細かく明らかにされていきました。バイオロギングの機械の始まりです。
海鳥の研究家であるイギリスのローリー・ウィルソンに関する記述が続きます。南アフリカの海岸にたむろするケープ・ペンギン、1984年に放射性物質を使用した記録計で潜った深度、滞在時間を測定しました。
日本人の学者が登場します。アザラシにカメラを装着しようとしていたのが、極地研究所の内藤氏です。1980年代から劇的にデジタル化が進行します。精密機器メーカーと開発を進めます。1984年に内藤型記録計ができあがりました。南極の昭和基地に記録計は運ばれアデリーペンギンに取り付けられました。
次の章は「潜る」です。
(つづく)
ペンギンはなぜ潜るんですかという質問が提示されます。これに対して、オキアミ(エサ)をとるためですとう答えが用意されています。著者は、さらに深く考えました。そもそもペンギンは鳥である。鳥なのになんで、海に潜るのかです。
ペンギンだけではなく、アザラシ、クジラ、ウミガメなど、祖先は、空を飛んでいたし、陸を動き回っていたそうです。進化したはずなのに、なぜまた海へ戻ってきたのか。大きな疑問が出されます。進化は理屈に合わないと解釈されています。おもしろい。
以降、アザラシによる潜水のことが、物理の計算式ともからめて、調査結果分析・考察と続いていきますが、わたしは、あまり理解できませんでした。ただ、著者の興奮する気持ちはよく伝わってきました。
説明の中で、ペンギン、アザラシ、クジラは、よく潜る(上手に潜る)ために、筋肉と血液に酸素をためる。だから、それらの肉は血が染みてまっかっかというような表現があります。たしかに、今から50年ぐらい前、こどものころによく見かけたクジラの刺身は、血が染みて赤い肉でした。
アザラシは、息を吐いてから潜水に入る。肥満体は、サバイバル能力に優れている。一見反対のように思えますがそうではありません。それなりのメリットがあるのです。
さて、ついに最後の章「飛ぶ」まできました。
(つづく)
「飛ぶ」の章を読んで、最後の「おわりに」も読み終えました。
「おわりに」では、生物学に関するふたつのアプローチについて書いてありました。そのひとつは、伝統的なやりかたで、典型を掘り下げる手法、もうひとつは、異例からあぶりだす手法です。著者は、後者を選択するそうです。経費も手間もかかりますが、エキサイティングだそうです。どちらの手法が正しいとは評価はできない。取り組む人の趣向です。
さて、「飛ぶ」です。ワタリアホウドリのことが書いてあります。体重10kg、両翼3mです。楽に飛んでいる。飛んでいるときの心拍数は、休んでいる時と同じ。そういうシンプルなところが大事です。がんばらない。だけど、成果は残している。
次に多摩動物公園にいるハチ鳥が登場します。ホバリング(停止した位置で空中にいる)しています。ものすごい筋力と紹介されています。
グンカンドリの話が出ます。高度2500mまで上昇し、海面近くまで急降下する。大規模な上下運動をする。グンカンドリは、木にとまるようなことはしない。たいていは、空中にいる。上昇気流を利用して上昇し、自分の気分で下降する。力はいらない。そのへんを物理の公式のような数式を利用して説明がなされています。
ヒマラヤ山脈を超えて移動するインドガンという鳥の話が出てきます。8時間で5000mから6000mの高度に達する。山を越えたらいっきに下降していく。山脈の高度が低い位置を超えていく。空気が冷たい夜に出発して、体温の調整をする。飛行速度もいちばん負担のないスピードを選択する。自然の驚異がありますが、物理的に数値的に論理的に行動している。
アホウドリは振り子運動をしている。上がったり下がったりの繰り返し。位置エネルギーと運動エネルギーという言葉で解説がされています。アホウドリは風を有意義に活用している。
後半に、南インド洋南極近くにあるフランス領ケルゲレン島におけるフランス人たちとの調査旅行で、ケルゲレンヒメウという鳥の遊泳速度を調べる機械から、飛行速度を計測する手法を偶然発見できた体験が書かれていました。フランス料理と日本食のお話を出しながら、感激の体験となっています。
以下は、言葉の意味が分からなかったので、調べておきました。
ポスドク生活:ポストドクターの略。常勤研究者になる前の研究者。非常勤研究者で、所属先組織とか企業がまだ決まっていないけれど研究活動はしている人のことかと思いました。
パラメーター:振り子の振動を決めるもの。本書の場合、アホウドリ、グンカンドリなど大型鳥類が飛行するときの様子を、振り子に例えてあることから、鳥の動きや風の動きを指しているのかもしれません。
ダイナミックソアリング:上昇気流にのって滑空すること
最後に、研究者の生活についてコメントしておきます。この本を読んで学者生活にあこがれるこどもさんもいることでしょう。
ただ、学者生活はかなり窮屈そうです。ひとつのことを極める。自分の欲望をかなえる。それが最優先の毎日が続きます。家庭生活は二の次になるでしょう。家族がいてもいないような生活が続きそうです。それを踏まえて、学究生活に入っていかれた方がいいし、周囲の人も孤高の研究者に研究以外のことを求めないという覚悟を決めた方がよさそうです。
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