2015年05月06日
パオズになったおひなさま 2015課題図書
パオズになったおひなさま 佐和みずえ くもん出版 2015課題図書
本のタイトルを見たときに、3月3日、女子のおまつりである桃の節句で、「おひなさまがパオズというものになる」ということはどういうことなのかがわかりませんでした。
パソコンで感想文を書こうと、「パオズ」と入力したら、「包子」という漢字の単語が出ました。パオズはどうも中国の料理です。
おばあちゃんが、物語のなかで、小学校5年生の孫である愛花に、パオズとは、肉まんであると話を始めます。そしてふたりは、肉まんをつくり始めるのです。
おばあちゃんの名前は「よしえ」ですが、小学校1年生6才のときの彼女は、まわりのひとたちから「よっちゃん」と呼ばれていました。
よっちゃん一家は、おとうさん、おかあさん、さとるおにいさんとみつるおにいさんの5人家族で、1936年から、中国の遼東半島にある美しい港町大連で、枡屋という店で商い(あきない)をしていました。売買で扱っていたのは、米、小麦、大豆、小豆、ゴマなどでした。
読み進めていくと、当時の日本と中国の関係が書いてあります。戦争をとおして、日本と中国の友好とか、国際社会で生きるわたしたちの心の持ち方について、書かれている本であろうという予測がつきます。当時の中国の政治体制は今とは違います。中華民国です。現在の中華人民共和国ができるのは、1949年です。
1937年、盧溝橋事件(ろこうきょうじけん)というのがあります。中国の軍隊が、盧溝橋という場所で演習をしていた日本軍に攻撃をしかけています。ここから、日本と中国は戦争状態に陥ります(日中戦争)。ただし、この物語の中では、まだその当時の大連に戦争の影響はみられません。日本人と中国人が商店街のなかで共存しています。
22ページにいいシーンがあります。祖母であるよっちゃんのおとうさんが、中国人におまけを提供する場面があります。間違っていなくても謝るのが日本人の性質です。それに、呼応するように、28ページで、よっちゃんの親友リンちゃん(母はシャオリンと呼ぶ。小さいリンちゃんという意味)のお母さんウーさんが、売り物にならないパオズ(肉まん)をおまけとしてよっちゃんにくれます。それから、リンちゃんはおとうさんがいない一人っ子でした。
25ページにある、ウマのしっぽとカッパの歩きのシーンもいい場面です。ウマのしっぽは、中国人リンちゃんの腰まで伸びた長い髪の毛をさします。カッパは、よっちゃんのおかっぱ頭をさします。ふたりが並んで歩く後姿が目に浮かびます。それは、とても平和なシーンの象徴なのです。
中国の正月が紹介されています。1944年、よっちゃんとリンちゃんは7歳です。旧正月(旧暦、太陰暦、月の動きでカウントする。太陽暦は太陽の動きでカウントする。)なので2月です。
中国の砂糖菓子タンフールー、女子向けの花の刺繍がある晴れ着、ドラ・カネ打ち鳴らしでにぎやかな獅子舞(悪霊除け)、貧乏神を家に入れないための「福」の表示、おめでたい色は赤色、45ページにある幸運をよびこむためのおまじない「スイスイピュアー(歳歳平安)は楽しい。
そこまで読んで考えました。
「パオズになったおひなさま」とは、肉まんになった日本のおひなさまです。素直に受け取ると、肉まんをおひなさまの形にしてつくったと読み取れます。もうひとつ想像できるのは、肉まんの中におひなさまを隠したというものです。それには、何か事情があります。
2月の旧正月が終わって、3月に桃の節句のひなまつりで、よっちゃんの家では、男びな、女びなの一組の人形を飾ります。日本にいる親戚のおじさんとおばさんが送ってくれました。よっちゃんもお人形さんのように赤い振袖をきています。
ひな祭りが過ぎ、4月も過ぎ、よっちゃんのお父さんが、捕まってしまいます。だれに引っ張られたのかが、最初の疑問でした。中国の警察? それとも日本軍? 日本人を守ってくれる日本軍が、日本人を捕まえるのはおかしな話です。でも、よっちゃんのお父さんを捕まえたのは、日本の日本人の憲兵(軍事警察官)でした。捕まえただけではなくて、拷問を加えて、思想を変えようとしました。言論の自由が奪われました。本当のことを言ったら痛い目にあうのです。一部の権力者を守るために大勢が犠牲になるのです。暴力を加えられて屈服した人間は自信を失います。自尊心が折れます。気持ちがねじれます。
人は人をいじめる習性をもっています。それまで仲良くしていても人は自分が生き残るためには簡単に人を裏切ります。それがおとなです。
よっちゃんとリンちゃんはまだこどもでした。だからふたりとも、ふとんの中で泣いていました。
よっちゃんファミリーは日本へ帰る準備を始めます。
「タイタイ(奥さん)」リンちゃんのおかあさんの口癖です。相手に対する呼びかけの単語ですが、自分なりに「こんにちはとか、さようならに、プラスありがとう」という感謝の言葉に置き換えています。
よっちゃんのお母さんは、リンちゃんのお母さんに小麦粉が入った袋をあげました。お別れの品物です。おそらく再会することはもうないでしょう。よっちゃんは、リンちゃんのおかあさんに、ひな人形をあげようとしました。
帰国は12月だったようです。終戦が翌年の8月です。桟橋でのつらい別れがあります。涙がにじみました。
ここまできて、ようやく、おひなさまが、パオズ(肉まん)になったわけがわかりました。それは、肉まんがおひなさまの形をしているのではなく、また、肉まんの中におひなさまが隠されているわけでもありません。おひなさまもパオズ(肉まん)も「気持ち」なのです。中国人と日本人が気持ちを交換したのです。
へこんでいたお父さんも「うちの小麦粉でつくった(パオズ)」と大声をあげて精神的に立ち直ります。
よっちゃんとリンちゃんのふたりは、再会はしないほうがいいと思うのは、わたしの心がねじれているからでしょう。
本のタイトルを見たときに、3月3日、女子のおまつりである桃の節句で、「おひなさまがパオズというものになる」ということはどういうことなのかがわかりませんでした。
パソコンで感想文を書こうと、「パオズ」と入力したら、「包子」という漢字の単語が出ました。パオズはどうも中国の料理です。
おばあちゃんが、物語のなかで、小学校5年生の孫である愛花に、パオズとは、肉まんであると話を始めます。そしてふたりは、肉まんをつくり始めるのです。
おばあちゃんの名前は「よしえ」ですが、小学校1年生6才のときの彼女は、まわりのひとたちから「よっちゃん」と呼ばれていました。
よっちゃん一家は、おとうさん、おかあさん、さとるおにいさんとみつるおにいさんの5人家族で、1936年から、中国の遼東半島にある美しい港町大連で、枡屋という店で商い(あきない)をしていました。売買で扱っていたのは、米、小麦、大豆、小豆、ゴマなどでした。
読み進めていくと、当時の日本と中国の関係が書いてあります。戦争をとおして、日本と中国の友好とか、国際社会で生きるわたしたちの心の持ち方について、書かれている本であろうという予測がつきます。当時の中国の政治体制は今とは違います。中華民国です。現在の中華人民共和国ができるのは、1949年です。
1937年、盧溝橋事件(ろこうきょうじけん)というのがあります。中国の軍隊が、盧溝橋という場所で演習をしていた日本軍に攻撃をしかけています。ここから、日本と中国は戦争状態に陥ります(日中戦争)。ただし、この物語の中では、まだその当時の大連に戦争の影響はみられません。日本人と中国人が商店街のなかで共存しています。
22ページにいいシーンがあります。祖母であるよっちゃんのおとうさんが、中国人におまけを提供する場面があります。間違っていなくても謝るのが日本人の性質です。それに、呼応するように、28ページで、よっちゃんの親友リンちゃん(母はシャオリンと呼ぶ。小さいリンちゃんという意味)のお母さんウーさんが、売り物にならないパオズ(肉まん)をおまけとしてよっちゃんにくれます。それから、リンちゃんはおとうさんがいない一人っ子でした。
25ページにある、ウマのしっぽとカッパの歩きのシーンもいい場面です。ウマのしっぽは、中国人リンちゃんの腰まで伸びた長い髪の毛をさします。カッパは、よっちゃんのおかっぱ頭をさします。ふたりが並んで歩く後姿が目に浮かびます。それは、とても平和なシーンの象徴なのです。
中国の正月が紹介されています。1944年、よっちゃんとリンちゃんは7歳です。旧正月(旧暦、太陰暦、月の動きでカウントする。太陽暦は太陽の動きでカウントする。)なので2月です。
中国の砂糖菓子タンフールー、女子向けの花の刺繍がある晴れ着、ドラ・カネ打ち鳴らしでにぎやかな獅子舞(悪霊除け)、貧乏神を家に入れないための「福」の表示、おめでたい色は赤色、45ページにある幸運をよびこむためのおまじない「スイスイピュアー(歳歳平安)は楽しい。
そこまで読んで考えました。
「パオズになったおひなさま」とは、肉まんになった日本のおひなさまです。素直に受け取ると、肉まんをおひなさまの形にしてつくったと読み取れます。もうひとつ想像できるのは、肉まんの中におひなさまを隠したというものです。それには、何か事情があります。
2月の旧正月が終わって、3月に桃の節句のひなまつりで、よっちゃんの家では、男びな、女びなの一組の人形を飾ります。日本にいる親戚のおじさんとおばさんが送ってくれました。よっちゃんもお人形さんのように赤い振袖をきています。
ひな祭りが過ぎ、4月も過ぎ、よっちゃんのお父さんが、捕まってしまいます。だれに引っ張られたのかが、最初の疑問でした。中国の警察? それとも日本軍? 日本人を守ってくれる日本軍が、日本人を捕まえるのはおかしな話です。でも、よっちゃんのお父さんを捕まえたのは、日本の日本人の憲兵(軍事警察官)でした。捕まえただけではなくて、拷問を加えて、思想を変えようとしました。言論の自由が奪われました。本当のことを言ったら痛い目にあうのです。一部の権力者を守るために大勢が犠牲になるのです。暴力を加えられて屈服した人間は自信を失います。自尊心が折れます。気持ちがねじれます。
人は人をいじめる習性をもっています。それまで仲良くしていても人は自分が生き残るためには簡単に人を裏切ります。それがおとなです。
よっちゃんとリンちゃんはまだこどもでした。だからふたりとも、ふとんの中で泣いていました。
よっちゃんファミリーは日本へ帰る準備を始めます。
「タイタイ(奥さん)」リンちゃんのおかあさんの口癖です。相手に対する呼びかけの単語ですが、自分なりに「こんにちはとか、さようならに、プラスありがとう」という感謝の言葉に置き換えています。
よっちゃんのお母さんは、リンちゃんのお母さんに小麦粉が入った袋をあげました。お別れの品物です。おそらく再会することはもうないでしょう。よっちゃんは、リンちゃんのおかあさんに、ひな人形をあげようとしました。
帰国は12月だったようです。終戦が翌年の8月です。桟橋でのつらい別れがあります。涙がにじみました。
ここまできて、ようやく、おひなさまが、パオズ(肉まん)になったわけがわかりました。それは、肉まんがおひなさまの形をしているのではなく、また、肉まんの中におひなさまが隠されているわけでもありません。おひなさまもパオズ(肉まん)も「気持ち」なのです。中国人と日本人が気持ちを交換したのです。
へこんでいたお父さんも「うちの小麦粉でつくった(パオズ)」と大声をあげて精神的に立ち直ります。
よっちゃんとリンちゃんのふたりは、再会はしないほうがいいと思うのは、わたしの心がねじれているからでしょう。
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