2015年03月26日

東京百景 又吉直樹

東京百景 又吉直樹 ヨシモトブックス

 日記の掘り起しと感じました。作者が若い頃、売れなかった頃の思い出話です。大阪から出てきたのが18歳、芸人として売れだしたのが何歳かわかりませんが、おそらくそれから10年間ぐらいの記録でしょう。作者が冒頭で言うとおり、この本は、東京の観光案内の資料にはなりません。場所は場所として表記してあり、記述内容は作者の深層心理に関するものが大部分です。
 最近評判になっている同作者の作品「火花」につながる記述もあります。112ページ、コーデュロイパンツのベージュ色は、ださい。
 読書の経過をふりかえります。
 ファンは彼のどこに魅力を感じるのだろうか。もともと大阪人なのだから大阪百景があってもいいんじゃないか。「物書きを始めて、最初の6年間は一銭ももらえなかった」というフレーズがいい。書き終えたとき32歳になっていたとあるので、18歳から14年間ですが、内容は若い頃のことが大部分です。
 井の頭公園で、宣教師に「アナタヲ、スクッテアゲタイ」と言われた記事には、彼の風貌からして、そうなるだろうと笑いました。以降の記事もなかなか面白い。短文集なので読みやすい。
 文章の雰囲気はいい。ただ、わからない内容のものもあります。無理にオチとか、〆(しめ)の部分をもってくる必要はなかった。
 作者は、太宰治のファンです。そういえば、なにかしら似ている。
 ディズニーランドがある舞浜の語源は、マイアミ(アメリカディズニーランドがある。)なのか。感心しました。
 バイトをしている友人を手伝って、バイト代を分け分けするほのぼのさがあります。ただ、芸能人なら一般人に迷惑をかけないよう社会ルールを守って暮らしてほしい。郵便局とのやりとりの記事にはちょっと嫌悪感をもちました。裕福になられたのなら、自分が多忙でも自分の身辺を世話してくれる役割の人を雇ってほしい。
 単発の散文が続きます。いいものもあるし、平凡なものもあります。花火が好きだから「火花」なのか。
 孤独と貧困のあまり心を病んでいたときがあったのではないか。幻聴、幻覚、幻視のような部分がちらほらとあります。それとも詩的才能なのか。
 170ページ、西加奈子さんが登場します。登場人物はみなさん、ユニークです。
 最後半部では、作者が根っからの芸人であることが再確認できます。舞台は、芸人だけで成り立つものではない。音響、照明、大道具、制作、監督、みんなが協力して創りあげていくものとあります。


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