2015年03月22日

本屋さんのダイアナ 柚木麻子

本屋さんのダイアナ 柚木麻子(ゆずきあさこ) 新潮社

 真面目な内容でした。いつの日か、直木賞を受賞する作家さんです。最初に読んだのは1年前ぐらい「ランチのアッコちゃん」でした。料理を作品に添加することがこの作家さんの特徴です。食べ物で、幸せになることを売りとする部分があります。
 主人公矢島大穴(ダイアナと読む)のまず、小学校3年3組時代から始まります。そのあと、6年4組、15歳、高卒後の本屋さんでのアルバイトと続きます。主人公はダブルキャストで、同級生の神崎彩子(あやこ)との対比があります。ダイアナは貧困母子家庭、母はキャバクラ、神崎は、裕福、お嬢さまです。
 女子向きの作品です。女性の世界、女子同士の対立、男性に対するあきらめ、差別、格差、母子関係、父子関係、かなり複雑で、たぶん現実的です。
 134ページ付近からの逆転の展開は切れ味鋭い。胸がすく感覚があります。物語は、本(読書)と生活が一体化した生活を送る大人になったら本屋さんになりたいダイアナという日本人娘の話です。
 ぽつり、ぽつりと読書の経過をふりかえります。
 ダイアナは両親に再婚してほしい。ふつうの家族になりたい。そう思うのが、彼女の小学生時代です。ごもっともです。
 ほんわかとした雰囲気が続きます。ちびまる子ちゃんの世界です。優しい。不思議の国のアリスとか、赤毛のアンとか、そんな世界が垣間見られます。
 16歳でダイアナを産んで、母子家庭でダイアナを育てた通称ティアラ34歳(キャバクラで雇われママをしている矢島友香子、彼女は実はいいところのお嬢さま育ちだったが、彼女の思うところあって、ドロップアウトした。)ダイアナの父親は行方不明だが、「秘密の森のダイアナ」という作品を世に残した作家。
 いっぽう、純粋培養された神崎彩子は、大学に入って、酔いつぶされ強姦され、意地を張って、自己否定をしないために、強姦した相手と恋人関係を築く。
 世の中の不条理を知って、本を読まなくなったダイアナの母ティアラがいる。彼女もまたお嬢さまだった。彼女たちの信じてきたことを打ち消すのが、「呪いをとく魔法の呪文」。セクハラに対する強い抗議があります。嫌われたくなくて、自分を飲み込んでしまったとの記述があります。
 なにかしら、最後のほうがうまくまとめられていません。「何度でもやりなおせる」というワンフレーズが心に残りました。

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