2015年01月24日

鬼はもとより 青山文平 徳間書店

鬼はもとより 青山文平 徳間書店

 まだ読み終えていませんが、感想は内容の理解を早めるために書き始めます。
 いくつかのわからない単語が登場します。
「御公辺(ごこうへん)」書中では徳川幕府上層部・幹部をさすようです。
「改易(かいえき)」人事異動をさすようですが、トップの交代とみました。
「除封(じょふう)」江戸時代大名の領地を除くですから、領地を減らす指令なのでしょう。増やすのが、加封とありました。
「道場の目録」ちょっとわからない。想像するに、道場の筆頭武芸者だろうか。それか、主な剣術技法を簡略に覚えたということか。
「自裁(じさい)」切腹
「万年青の栽培」おもとの栽培。ユリ科の植物。見たことがありません。観葉植物らしい。
「弁財船」大型帆船
「北国船」弁財船の前の大型船。帆と櫂(かい。人力でこぐ)で動く。どんぐり船とありました。
「執政」藩政を行う人
「冥加金」みょうがきん。書中では、商人から藩主への寄付です。
「仕法」しほう。やりかた。
「疵」きず。傷。
 物語には、佐島五人衆というのが出てきます。藩内に流通する紙幣の製作・管理の担当責任者として、藩札頭佐島兵右衛門70歳近く、五人衆として、主人公の奥脇抄一郎24歳剣の達人女たらし、長坂甚八同じく女たらし、垣内助松釣り名人の若者、鈴木四郎兵衛アオキの栽培をする若者、森勘三高い山を見ると登りたがる若者です。物語自体は、主人公奥脇抄一郎ひとりが引っ張っていきます。
 時代設定は、1750年~1758年ぐらいですから、江戸時代が始まって、4分の3ぐらいが経過したところです。
 貧しい藩の財政を救うために藩札という藩独自の紙幣を製作・管理することがテーマです。ここまで読んできて、内容がだんだんわかるにつれて、なかなか歯ごたえのある人智(人間の知恵)に濃厚な作品であることに気づきました。命がけの政策実行です。なお、藩札以外に当然江戸幕府公認の通貨(正貨)は存在します。
 武家は米で、百姓とのつながりが強い。商人は金で、武家は金に苦しめられている。前半は、お金と女にまつわる話で、読み手がそれをよしとするかしないかで評価が変わってくる作品です。中盤から、たとえば、武士はむやみに死なない。武士は、死ぬ時と場所を選択する。つまり、適時適切でなければ逆に死なない(自害しない)というような精神が語られるにつれて、読む意欲が増します。
 読みながら、優れた人材を組織に配備する必要性を痛感しました。北の海に臨むおそらく東北地方にあるらしき小さな島村藩を再建するのです。緊張感がただよいます。173ページにある執政役梶原清明の貧困に関する言葉として、貧しくなると人は優しくならざるを得ない。なぜなら(怒れば)「死」が口を開けて近づいてくるという趣旨は、胸に響きました。
 藩内で特産物をつくる。特産物を一括で島村藩が買い上げる。特産物を島村藩の領外で売る。特産物を育て、売るためだけに藩札を使用する。特産物を船で運ぶ。ここまできて、タイトルにある「鬼」は、主人公の奥脇抄一郎ではなく、島村藩の執政役梶原清明であることが判明しました。

(つづく)

 不要とするものを殺戮(さつりく)する織田信長の精神が梶原清明にあります。現代人は梶原清明の意識についていけないし、ついていってはいけない。子は、親を親と思わぬように育ったのだろうか。
 身近な地名が出てきてうれしい記述がありました。
 特産品として、魚油(ぎょゆ。書中では、いわしを煮て、圧縮して出た油)、〆粕(しめかす。魚油をとったあとのいわしのかす。肥料にする。)、大豆。
 当たり前のことを当たり前にやろうとすると、敵が生まれて、命を狙われる。富が増えると、抗争が起こる。貧困だったときには、平等で、みな優しかった。
 武士の魂がこめられた入魂一発のヒット作品でした。本格派武士小説として完成されています。


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