2014年11月27日

ふたりでひとり旅 高森千穂

ふたりでひとり旅 高森千穂 あかね書房

 タイトルにあるふたりのうちひとりは幽霊という設定を知って読む意欲が湧きました。霊の怖さや暗さはありません。以前同作者の課題図書を読んだことがあります。亡くなったお父さんを慕って、ふたりの小学生が自転車で鎌倉の海岸を目指すものでした。
 この物語では、小学校4年生木島達也身長139cm体重30kが、交通事故死して幽霊になった同じく4年生杉山真一と鉄道を利用して、横浜から岐阜県まで旅をします。その地域性は、自分にとっても身近で読んでいて内容がわかりやすかった。
 幽霊の杉山真一は、木島達也に3つのお願いを提案します。1つ目が忍び込み、
2つ目がひとり旅のようなふたり旅です。3つ目を書くことはやめておきます。
 しばらく前からはやっている死者との再会パターンです。映画「ツナグ」、「トワイライト ささらさや」などです。現代人は、亡くなった人と会いたい願望が強いようです。
 時刻表に関する記述が手厚い。自分自身小学生から中学生にかけて、時刻表をめくって旅のプランを立てていました。物語の中では、新幹線は「のぞみ号」ではなく「ひかり号」です。それらの点で、この物語は、昭和時代の世代の少年がモデルです。今は、スマホ、携帯電話、パソコンなどで、路線検索します。便利になった反面、頭を使わなくなりました。いいこととは思えませんが、どうしようもありません。手作業の味わいをどこかの部分で伝えていきたい。
 読んでいたらもう忘れていた遠い過去を思い出しました。18歳の時、夜行列車で名古屋-岐阜-富山と旅して、早朝、富山駅に着きました。若かったから体に無理がききました。書中にある木島君同様に、家出と間違えられて、やくざみたいなおじさんに声をかけられました。昔は、電車の中で、知らない人同士でおしゃべりをしたものですが、今は、だれしも無言で寝たふりをしているか、スマホや携帯電話をいじっています。互いを信じられなくなったのだろうし、個の空間を重視するようになりました。
 鉄道は、JRだけではなく私鉄もある。本では、長良川鉄道とか名鉄電車が紹介されています。
 この本の趣旨は、もうひとつあります。親ごさんに読んでいただきたい。特に父親に読んでいただきたい作者からのメッセージがこめられています。子どものことを第一に考えてあげてほしい。

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