2014年11月02日

自閉症の僕が跳びはねる理由 東田直樹

自閉症の僕が跳びはねる理由 東田直樹 エスコアール

 先日読んだ同作者「跳びはねる思考」の中学生版です。ショッキングの程度からいうと前作のほうが強烈でした。自閉症児による自分の心にあるものの伝達内容です。
 原稿は、筆談、パソコンで作成されています。障害者が何を考えながら生活を送っているのかがわかる本です。病気で、意識、認識なく生きているという見方は間違っていることがわかります。書中にある言葉、見かけだけで判断しないでくださいが、胸に突き刺さります。何のために人としてこの世に生まれたのだろうという言葉も重い。感情がないのではなく、感情はある。知能が低いのではなく、知能はある。
 普通の人になりたいですかという質問に対して、このままの自分を選ぶかもしれませんという答えを読んで、以前読んだアメリカ人視覚障害者が書いた本を思い出しました。本のタイトルは思い出せません。全盲の人でした。手術を受けて片目が見えるようになったのですが、盲目のときにできたことが、見えるようなったらできなくなってしまった。見えることと、見えることを理解することは違うということがわかって絶望した。結局、見えない状態を想像することで、立ち直ったというものでした。たしか、彼は、目は見えなくてもスポーツ運動能力に優れていて、スキーができたし、驚いたことに、一度は車の運転も体験したというような内容でした。
 作者の創作による64ページにある飛行機を素材とした小話で、「自閉人」、「地球人」の表記がよかった。
 112ページにある“どうか僕たちの本当の姿に気づいてください”は説得力があります。
 前回読んだ同作者の本の内容と比較すると、今回の形式は、Q&A方式であることが退屈です。
 後半にある短編小説「側にいるから(そばにいるから)」の感想です。ミステリーの要素をもった不思議な感覚の小説です。途中、主人公は死んでいます。“どうやって死んでいればいいのだろう”という言葉は、健常人にはなかなか出せません“天国で80年暮らしている。”も同様です。雪のひとひら、桜の花びらの記述も良かった。

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