2014年09月27日

大人のアスペルガー症候群 宮尾益知

大人のアスペルガー症候群 宮尾益知(みやおますとも) 日東書院

 以前、アスペルガー症候群の男児を扱ったアメリカ映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を観ました。主人公男児の性格は本書にある「落ち着きがなく、暴力的な発作を起こし、破壊的で、処罰にも反応しない子どもたち」に属します。音に敏感で、幻聴も聞こえる。映画を観ていて、わかりにくい部分がありました。今回、この本を読んで理解できました。今年読んでよかった1冊です。
 これまで疑問に思っていたことが氷解(ひょうかい、疑念がなくなる。)した本でした。若い人たちを見ていて、なぜ、挨拶をしても返してくれないのか、なぜ、ひとりぼっちで、壁に向かってお弁当を食べるのか、来客と会話ができるのに、同僚との語らいはできないか。第三章「職場やまわりの人に溶け込めないのはなぜ?」を読んでいたときに、かわいそうだと思いました。生きることがつらいだろうに。
 偏った考え方ですが、あれもこれもアスペルガー(病気)が原因と考えれば、こちらの気持ちは救われます。
 理解が早くて頭のいい人たちには、その反動(はんどう、欠ける部分)もある。だから、うらやましいとは思いません。凡人でいい。
 アスペルガーが人の名前とは気づきませんでした。小児科医ハンス・アスペルガーという人の1944年の論文が由来です。本書によると、当時は、幻の病気とされていたそうです。
 前半の医学的な説明はむずかしい。診断に関する部分は素人ではわかりません。第四章では、アスペルガー症候群の人の子ども時代から高齢者になるまでの一生のパターンが紹介されています。10歳以降ぐらいから苦しみが始まります。いじめにあって自殺する子どももいるのでしょう。
 最終ページは、著者のアスペルガー症候群である人への愛情がよく伝わってきました。助けなければならない。助けてあげたい。この本は、「手助け」する本です。
 いくつかのポイントや趣旨をここに書きとめておいて、忘れないようにします。
・アメリカ人のように積極的に会話をする。(アメリカ人は、満員電車やバスの中で、知らない人と接触することを嫌うけれど、親しい人であれば、ハグしたりキスしたりする。)
・同時に複数の仕事を仕上げる手法は無理だからマニュアルロボットでもいたしかたない。
・トラウマ(過去がよみがえる精神的不安)に悩んでおられる。
・「火星からきた人類学者」という表現
・周囲に合わせた中庸(ちゅうよう、偏らずバランスがとれた)の考えができない。
・家庭が戦場になる。(家庭内暴力、ドメスティックバイオレンス、虐待)
・学校では、王様になれない。
・職業選択のあれこれ。
・アスペルガー症候群の夫をもつ妻の夫定年退職時の言葉として、「自分の人生を返してくれ。」
2010年発行の本でした。


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