2014年09月19日

働くことがイヤな人のための本 中島義道

働くことがイヤな人のための本 中島義道 日経ビジネス人文庫

 心安らぐ良書でした。今年読んで良かった1冊です。
 東京大学卒の筆者は、20代の頃、2年間ひきこもっていた。大学は13年間通った。37歳で大学で哲学者という正職に就いた。その途中、オーストリアのウィーンで過ごした。人生とは何か。なんのために働くのか。哲学を続けた。すでに70歳ぐらいの方です。本書を読んで、哲学とは、真理を探求すること。答えのない問題を深く考察することと受け取りました。
 最初のほうは、わかりにくい。しばらくするとわかりやすくなります。A,B、C、D、それぞれ20代、30代、40代、50代の人物が登場します。授業科目が7科目あります。1科目ずつ、著者が先生になって、4人と質疑応答をする形式です。
 わたしが考えたことです。たいていの人間は、楽をして、いい給料をもらって、休みをたくさんもらいたい。仕事は金のためと割り切る。だれかのため(家族のため)に働く。時間の拘束と気持ちの苦痛の代償が給料。著者は、割り切れなければ、割り切れない苦しみを味わいつくそうと言っておられます。つまり、哲学をするのです。美しい敗者になろうとも言い換えておられます。
 作者は言います。自分の体験を語ることで、ひとりでも布団から出したい。家から出ることができるように導きたい。ひきこもりの本人は現状を肯定してはいない。
 Dさんは50代で順風満帆の人生を送ってきました。しかし、癌の宣告を受け、かつ、それが再検査で癌ではなかったという出来事があってから、これまでの自分の人生に絶望しています。読み手から見ると、Dさんが長年働いてきたことに意味がないことはない。苦しさを克服できた思い出が人生の成果だと言い聞かせたくなります。
 読みながら考えたことです。やりもしない前から(仕事をしない前から)、こうなると決めつけている。現実には、そうはならない。周囲の人のことをあれこれ言うけれど、人は人、自分は自分でいいではないか。
 ひきこもっている人は悩んでいるということがよく伝わってきました。昔はやった「希望」という歌が脳裏に流れました。希望という名のあなたを求めて…。
 意外なことがありました。仕事だけならできる。でも、歓送迎会、忘年会などの飲み会、レクレーションのスポーツ大会、同僚とのおしゃべりなどが苦痛でできない。そういうこともあるのか。環境への適応障害という言葉が思い浮かびました。人間関係恐怖症です。
 後進に失敗談をして、育成を図る。著者の温かい気持ちが流れている作品です。後半は具体的です。主婦の仕事は仕事ではない。自称作家の仕事は作家ではない。そのへんが、わかりやすく説明されています。
 「死」について考えました。死に急ぐことはない。死は万人におとずれる。事件・事故、病気で早逝することもある。いつ死んでも悔いのないように今を生きる。覚悟をもつ。人生の勝者とか敗者とか言うけれど、それは何の価値もない。人はみな死ぬ。勝者とか敗者とか思っているのは自分だけ。死んだら忘れ去られる。人は死ぬために生きている。
 最終部では「遺伝」という言葉が浮かびました。著者は最後に自身の父親について語ります。
 いくつかの意味がわからなかった単語です。
「モノローグ」演劇での独り舞台。著者は、A~Dの4人を自分自身の個性と表明します。
「カタストロフィ」大変動。悲劇的結末。ひきこもっている人は、今、カタストロフィ(たとえば大地震)が起きて、今の状況が消滅しれくれればいいと思っているそうです。
「蓋然性(がいぜんせい)」実現の確かさ。著者は20代Aさんに、君は成功しない。成功しないけれど豊かな人生を送ることができると説きます。


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