2014年09月03日

「ひきこもり」救出マニュアル<実践編> 斎藤環

「ひきこもり」救出マニュアル<実践編> 斎藤環(さいとう・たまき) 筑摩書房

 最初に思い浮かんだのは、喜怒哀楽の表情が少ない青年の顔でした。朝のあいさつをしても返事は帰ってこない。無言です。植物的。お礼を言わない代わりに謝罪の言葉もない。ときおり、文句は言う。自己評価が自分の味方。
 良書です。人生相談形式で、相談者の短い相談に長い文章を費やして答えています。網羅されています。
 まずもって、だれかのせいにしたがる。だれかのせいにすることは、自身の格付けを低くします。
 引きこもり+家庭内暴力。事態は深刻です。ひきこもり歴もかなり長い年数です。最後の手段として精神科への「入院」。されど、入院は解決の特効薬ではありません。読み続けていると、子どもは必要なのかとさえ思えてくるのです。こうならないようにするためにはどうしたらいいのだろう。名案は浮かびません。疎外されたら、自分も同様にひきこもりになりそうです。「なにも期待しないで」という言葉には悲しくなりました。ピンチはチャンスという言葉が心の支えです。
 いい子にならなくてもいい。たくましい子に育ってほしい。
 「教条的」という言葉が幾度か出てきますが意味がわかりません。調べてみました。状況・現実を無視して、特定の考えにこだわることのようです。
 主婦は合法的なひきこもりと読んだことがあります。定年後テレビだけをみている男性もひきこもりとも思えます。年齢や役割によってひきこもりが容認されることがあります。フツーであることの幸せがあります。
 自己愛が強いから自殺企図に至るまでの道は遠いとあります。そうあってほしい。
 「脅迫性障害」、監視されているという感覚。だれもあなたの行動や暮らしぶりに興味はもっていない。自己愛の強さからくるものだろうか。病気だからといって、労働や納税が免除されることが当然ではない。親にお金を要求する。著者は、必要なお金は出すべきと諭します。必要でないお金は渡さない。
 この本は、両親向けのものです。きょうだいはあまり関係ないし、関わりをもたなくてよいと記されています。最後には、本人にも読んでほしいと呼びかけをしておられます。
 懇切・ていねい、十分すぎるほどの情報量です。パソコンは有害ではない。むしろ有益とあります。
 自信をもつ。自分は自分であるという自信をもつ。脱出のためには、「本気」になる。
 2002年に書かれた本です。12年も前ですが、状況が変化したとも思えないし改善されたとも思えない。
 昔読んで、けっこう心が動いた本を紹介して終わります。

<2012年5月27日の感想文です>
14歳 千原ジュニア 講談社

 ひきこもりのお話のようです。いっき読みになりそうです。(12時に読み始めて、途中昼食をはさんで14時30分に読み終えました。)ピストルの弾丸になって、あっという間に的(まと)に命中した心境です。ひきこもりの理由は何? それがなかなかわかりません。母親との関係がよくありません。母親の愛情が足りなかったのか多すぎたのか。「ひきこもり」については長い目で見てあげたい。まだ14歳、先は長い。
 友だちの親から「あの子と遊んではいけない。」と言われたそうです。わたしもこどもの頃、同じことを言われた経験があります。いやなものです。みんなと同じことをする「平均化」がどうしてもできないこどもは大なり小なりいます。
進学コースからの脱落らしい。心が純粋すぎたのか。昼夜逆転の生活、テレビの砂嵐から虫が出てくるという幻覚。虚無があるだけです。
 母親を嫌いつつ母親に頼りたい。おかあさんがかわいそうです。村上龍著「半島を出よ」で、北朝鮮軍と戦ったこどもたちのようです。周囲からの疎外感、否定された存在。ひきこもりの肝心な理由が書かれていないので、作者と読み手の密着感を得られない。親はなぜひきこもっているドアの前にごはんを置くのだろうか。わたしなら与えない。ひきこもりはぜいたくです。わたしのこども時代は、こどもでも働いてお金を得ることを考えていました。
 作者がこの本を出版した理由は何だろう。疑問ばかりが湧いてくる。タバコが薬代わりになっている。学校にしても会社にしても、そこにひとりでも話し相手がいれば、通学や通勤ができる。
 何をそんなにあせっているのだろう、急いでいるのだろう。彼は居場所を探している。
 189ページのうち、前半が8割で、残り2割でいきなりラストになりました。ラストには泣けました。最初の8割の経験があったからこそラストではじけることができる。8割は貯蓄だったのです。お兄さんの彼に対する姿勢もいい。答えを提示して従わせるのではなく、弟自身に考えさせて企画させる。上手な指導法です。


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