2018年09月09日

ズートピア 洋画DVD

ズートピア 洋画DVD 2016年公開

 ズー(動物園)+ユートピア(楽園)=ズートピアなのでしょう。肉食動物が草食動物を食べない平和な社会です。

 警察官になりたいウサギさん女子がいるところから始まります。
 現実はユートピアのようにはいきません。
 ウサギは警察組織の中で差別されます。ここはウサギが就職するところではない。
 同様に社会ではキツネが差別されます。キツネはすべて詐欺師というレッテルあり。

 前半から中盤にかけては物語性が高く、さすがディズニー作品と感心しましたが、やがて理屈っぽくなり、後半の展開は尻すぼみでした。ギャングが出てきたあたり、警察署長のパワハラ、市行政の腐敗、リアルな大人社会でこどもさんには楽しめない内容です。あとは、時間が長すぎます。108分の映画ですが、20分ぐらいは短くできるような気がします。

 映像はきれいです。先日映画館で観た「ポケモン」とかDVDで観た「DESTINY 鎌倉物語」、「千と千寿の神隠し」などと共通する美しさがありますが、この映画はさらに立体的です。キャラクターの中に人間が入っているのではないと思えるものもあります。

 メッセージとして、平等な社会をつくる。人種差別をしない。  

2018年09月08日

実践小説教室 根本昌夫

実践小説教室 根本昌夫 河出書房新社

 最初の文にある「人生七掛け時代」は実感があります。60歳なら42歳です。ただし、目、耳、記憶力、全般的な体力の衰えはあります。がんばりすぎないようにしてゆっくりとです。時間はあきらめなければたっぷりあります。「たくさん書く」「たくさん読む」「よく考える」は励みになります。

 3部構成です。
 小説とは小説家から読者へのメッセージだと思います。幸せな気分を味わってもらうために感動を届ける。

 創作にあたり体験は必要です。取材だけで書ける人はそれほどいない。
 
 文章の美しさではなく、構造、仕掛け重視
 仕事をしているとどうしても報告書風に書く文章が身に付いています。
 
(つづく)

 長編よりも短編のほうが書くのにエネルギーがいるとあり、そうかなと疑問をもちましたが記述を読んで納得しました。

 小説を書くためにいろいろなアルバイトを経験している小説家は、大きな組織で異なる業務を転々とする人事異動に似ています。

 小説は「自由度」が高いことを再確認しました。

 第二部にある作品の書き直しは、書き直し後のものが味わい深い。

 数値に隠された秘密の解読が興味深い。

 純文学には覚悟がいると考えました。

 なぜ小説を書くのかという問いに、理屈抜きで、「書きたいから書く」という答えもあります。
 著者の論理は説得力があり、はまりました。
 
 共感することが多い本でした。よく整理されていてわかりやすい。

 良かった文節や趣旨などとして、「映画は非日常」、「日本語として正しくなくても小説では通用するという説明」、「性の排除」、「語りの文学」、「心の整理をしたい」、「過去の一時期から生き直す」

 調べた言葉として、「糖衣:薬を飲みやすくするために薬の回りにはる甘い膜」、「小説誌:雑誌のジャンル。新作小説」、「固執:こしつ。あくまで主張して譲らない」、「アプリオリな小説:超越的」、「結界:仏教にある一定の区域。出てはいけない」、「リリカル:叙情的」、「モノローグ:独り言」、「フェティッシュ:呪物」、「メタファー:暗喩、隠喩、言い換え」、「金色夜叉への道:金色の鬼神?」、「コード:役割を演じる。コンビニ人間を思い出しました」、「恣意的:思いつきできままに判断する」  

Posted by 熊太郎 at 06:09Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年09月07日

ヒミズ 邦画DVD

ヒミズ 邦画DVD 2012年公開

 ずいぶん前にマンガで読んだことがありますが映画を観たのは初めてです。

 映画の撮影だと思わないとショッキングなシーンは見ておれません。

 東日本大震災と重ねてあります。主人公中学生3年生男子スミダ=地震・津波の被災者です。

 主演二人は中学生には見えない。見た目は高校生です。

 詩の暗唱、暴力、捨て子同然、クラシック音楽、観たことはありませんが、ヨーロッパ的で、シェイクスピアの悲劇を観るようです。

 男子の親は離婚、子を遺棄、女子の親は、母親がパチンコ狂いのようです。男子も女子も親から生まれてきてもらわなくてもよかったと告げられるような立場で悩みます。「悲しみ」を追い詰めます。親が子を虐待します。
 映画は、鬼親への復讐劇です。

「オレはだれなんだ。何をすればいいんだ」
そう思っている若者が何人もいます。
スミダひとりだけではありません。

 予測できない展開でつながっていきます。

 女子の男子に対する言葉として、「君が死んだらこの先やっていけません」そう言う女子も親から虐待を受けている。帰る家があるようでない。あるのは絶望です。
 映画では女子の家庭のその後が説明不足のような気がします。

 ボートハウスが舞台です。夜景が何度も出てきます。風情があります。

 ひどい生活環境ですが、それでも生きていくのです。

 「スミダガンバレ」、「夢をもて!」 感動的なラストシーンでした。



読書感想文 2012年1月30日記事
ヒミズ(アンコール刊行劣情の種子編) 古谷実 講談社

 コンビニに立ち寄った折に見かけて購入しました。映画が評判になっていたことがきっかけです。原作となった漫画です。「ヒミズ」の意味は読み終えた今になってもわかりません。「劣情の種子」は不遇な境遇にあって殺人がらみのトラブルに巻き込まれると解釈します。映画は他に観たい作品がいくつかあるので、公開が終わらなければ見に行くつもりです。
 登場人物たちの整理から始めます。最初は高校生3年2組メンバーかと勘違いしました。中学生でした。主人公が「住田祐一」15才。離婚母子家庭のひとり息子で、父親は無気力なろくでなし。金をせびりにきます。母親は男をつくって家を出て行きました。家といってもボートハウスで、祐一はホームレスに近い状態です。「ホームレス中学生」を思い出しました。祐一は孤独で人間不信です。心は冷めています。平凡で目立たない生活を目指しますが時の流れはそれを許してくれません。「夜野正造(よるのしょうぞう)」小柄で前歯が出ている。同じく15才。お金と女子が好きです。「赤田健一」ブタのような容貌でグロテスクです。漫画家志望の15才です。大西とか西という学生にいじめられています。彼には本格的に漫画家へ挑戦する年上いとこの男性がいます。いとこは「きいっちゃん」と呼ばれています。「茶沢景子」気の強い女子15才です。映画では重要な役柄なのでしょうが、この漫画では小さな脇役です。
 さて感想です。奇怪ですが魅力があります。作者の実体験も織り交ぜてあるのでしょう。母子家庭両親再婚等の設定からは、「オルゴォル」のフジワラハヤト11才とか「晩鐘」の笹塚大輔11才が思い浮かびます。笹塚大輔の方は殺人犯の父親をもつこどもになります。表面には出ないけれど人間がもつ「悪」は至るところではびこっています。被害をまっさきに受けるのはこどもです。こどもの気持はゆがみます。住田祐一は人間を「普通の人間」と「特別な人間」に分けます。自分は普通でいたいのに神は特別になることを求めます。純文学小説を読むようでした。養育を放棄した父親を怨む。母親も憎いでしょう。洋画ロバート・デ・ニーロのタクシー・ドライバーが出てきたり、森進一の冬のリビエラが登場したりするのはわたしと同世代なのでしょう。親からは放置されて育った世代です。よくいえば、地域の縦型こども集団の中で育った世代です。
 暗い漫画です。先日観たイタリア映画「道」で、大道芸人に売られたジェルソミーナが自分は何のために生まれてきたのかわからないと嘆きます。同様にこの漫画では、住田祐一が同じようなことをつぶやきます。ときおり顔が妖怪になった絵が登場します。人間の「悪」をうまく表現してあります。人間が妖怪に変身するのか、妖怪が人間に変身しているか、そう考えると体がゾクゾクする快感と憂鬱が生まれてきます。日本では、1日2500人が病気や事故で亡くなっているという言葉からこの物語は始まります。
(その後)
 「ヒミズ」の意味は「もぐら(の種類)」でした。陽見ず(ひみず、太陽を見ない)からきているのだろうと自分で理解しました。作者は若く同世代ではありませんでした。10年下の世代になります。  

2018年09月06日

運動靴と赤い金魚 イラン映画DVD

運動靴と赤い金魚 イラン映画DVD 1999年公開

 89分間の短い映画です。いろいろ不可解な面もありますが、胸を打つ内容で良作です。

 最初にアラビア語が出てきて面食らいます。登場する俳優さんの名前でしょう。

 アラビアの貧しい地域で暮らす両親と兄9歳たぶん小学校3年生、妹7歳小学校たぶん1年生。妹の靴を修理してもらって兄がそれを家に持って帰る途中、八百屋さんの店先で靴を紛失してしまいます。妹は靴がないので(1足しかもっていない)小学校へ行けないと言い出します。しかたがないので、兄の履いているぼろぼろの運動靴をふたりで共用します。どういうわけか、小学校1年生の授業が先にあって、それが終わったら小学校3年生の授業が開始する時刻設定になっています。授業が終わると女児はかけっこをして家に帰る途中、待っている兄に運動靴を渡します。女児はそのあとサンダルです。もうふたりとも、走って走って走りまくるわけです。そこで、兄について、マラソン大会があるのです。3等になると賞品が運動靴です。兄は3等を目指してがんばるのです。

 兄が正直に両親に妹の靴を紛失したと言わないことが不思議です。叱られるからとか貧乏なので言いにくいとかあるのでしょうが、やはり言うべきです。妹も同様です。そのへんの親子のコミュニケーションのなさが気になりました。

 50年ぐらい前の日本の風景を見ているようでした。
 
 起承転結の転の部分で、運動靴の片足がどぶに流されたあたりが話のひっくり返しとして勢いがついたのでおもしろかった。

 教頭先生が意地悪で、児童の話を深く聞きださない姿勢が良くない。遅刻が多いからといって、教育を受ける権利を奪うことはできない。

 街並みとして、貧民街と富裕層の住む高級住宅地の比較があります。地球上のどこも形態は同じです。  

2018年09月05日

無限の玄/風下の朱 古谷田奈月

無限の玄(むげんのげん)/風下の朱(かざしものあか) 古谷田奈月(こやた・なつき) 筑摩書房

「無限の玄(むげんのげん)」
 父、叔父、兄、主人公、叔父の子の5人組音楽バンドがある。自宅は月夜野つきよのという場所にあるが、全国公演をしているので、つきよのに居るのは夏の間のひと月半ぐらいである。
 5人はアメリカ合衆国カントリーミュージックに似た古臭い演奏をしているプロのバンドである。楽器は、フィドル(バイオリン)、ギター、バンジョー、マンドリン、シンセサイザー、あとはボーカルがいるし、合唱もあるのだろう。
 女っ気がない。女性が出てこない男くさい小説ですが作者は女性です。
 亡祖父宮嶋環(たまき)が主人公たち兄弟の父親(玄)を、父親玄が兄律を虐待するようなシーンあり。
 不可解です。父親玄が何度も死んで、そのたびに翌日生き返って登場するのです。詩的ですが、ファンタジーではありません。まわりの人間も「死んでくれてありがとう」みたいな雰囲気がただよっています。感謝の気持ちすら伝わってきます。でも、父親玄は次の日には生き返るのです。
 父から子に対する暴力があります。重苦しい。

 音楽を素材にした物語です。

 主人公の深層心理にある世界を物語にする。

 父はもともと生きてはいないんじゃないか。

 今、80ページ付近です。感想は継ぎ足します。

(つづく)

 最後まで読みました。最後まで読みましたが、この物語は、「終わりのない物語」になっています。

 印象に残る文節などは、「玄さんが死にきれない」、「環さんの音楽を死なせない」、(生き返るのはふたりがつくった音楽のことなのか)。「今日は俺たちの誕生日」

 調べた単語などとして、「気怠い:けだるい」、「目眩:めまい」、「トライバル:民族的なファッション」、「荊:いばら」、「膿む:うむ」、「窺えた:うかがえた」、「レイトショー:終了時刻が23時前後」、「歯噛み:はがみ。歯を食いしばる。歯ぎしり」、「可笑しさ:おかしさ」、「攪拌:かくはん」

 良かった表現として、「ありもしない故郷を探す」


「風下の朱(かざしものあか)」第159回芥川賞候補作

 「朱」は大学の女子ソフトボール部のユニフォームを指します。風上というか隣にあるのが、女子野球部のグラウンドです。両者が部員集めの関係で対抗するのです。女性の生理を扱う作品で、男性のわたしにはわかりにくい。

 前半付近は、野球の話なのか、ソフトボールの話なのかわかりにくかった。
 先輩後輩の上下関係について、高校と大学は違う。何でもないことを難しく考えるこだわりあり。

 78歳の凛々しい英文学者の女性が出てくるのですが、これはもう生理が終わった人という意味合いで凛々しいのだろうか。ちょっと理解不能です。

 対立においては、相手の話を聞いて受け入れる。もう頑固さはいらない。時代は変わったというメッセージか。

 物悲しい女子の世界があります。

 うーむ。ちとわからない。ほかの方の書評なども読んでみます。

 調べた単語などとして、「フレアースカート:シルエットが朝顔のように広がったスカート」、「槌:つち。物を叩く工具。金槌、木槌など」、「鑿:のみ」天を穿つ:てんをうがつ。空に穴をあける」、「瘴気:しょうき。熱病を起こさせる山川の毒気。悪い空気」、「弦月形:げんげつけい。半月の形」、「刺々しく:とげとげしく」、「縒る:よる。糸状のものをねじって1本にする」、「グランド整備用のレーキ:野球のとんぼ。熊手」、「わたしはあなたのアンモナイトじゃない:?」  

Posted by 熊太郎 at 05:47Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年09月04日

ポテチ 邦画DVD

ポテチ 邦画DVD 2012年公開

 今年観て良かった映画でした。68分の短時間ですが十分感動します。

 冒頭の「引力」の話が、最後のシーンにつながります。

 生年月日が同一の男子ふたりの話です。ひとりは主人公タダシ、もうひとりは試合に出してもらえないプロ野球選手オザキです。ドラマがあります。

 タダシひとりだけの「夢」が、観ているうちに映画観覧観客全員の「夢」に格上げされていきます。

 ポテトチップスの塩味とコンソメ味の違いは、タダシとオザキの違いなのです。

 ハートフルなコメディでした。