2018年09月07日

ヒミズ 邦画DVD

ヒミズ 邦画DVD 2012年公開

 ずいぶん前にマンガで読んだことがありますが映画を観たのは初めてです。

 映画の撮影だと思わないとショッキングなシーンは見ておれません。

 東日本大震災と重ねてあります。主人公中学生3年生男子スミダ=地震・津波の被災者です。

 主演二人は中学生には見えない。見た目は高校生です。

 詩の暗唱、暴力、捨て子同然、クラシック音楽、観たことはありませんが、ヨーロッパ的で、シェイクスピアの悲劇を観るようです。

 男子の親は離婚、子を遺棄、女子の親は、母親がパチンコ狂いのようです。男子も女子も親から生まれてきてもらわなくてもよかったと告げられるような立場で悩みます。「悲しみ」を追い詰めます。親が子を虐待します。
 映画は、鬼親への復讐劇です。

「オレはだれなんだ。何をすればいいんだ」
そう思っている若者が何人もいます。
スミダひとりだけではありません。

 予測できない展開でつながっていきます。

 女子の男子に対する言葉として、「君が死んだらこの先やっていけません」そう言う女子も親から虐待を受けている。帰る家があるようでない。あるのは絶望です。
 映画では女子の家庭のその後が説明不足のような気がします。

 ボートハウスが舞台です。夜景が何度も出てきます。風情があります。

 ひどい生活環境ですが、それでも生きていくのです。

 「スミダガンバレ」、「夢をもて!」 感動的なラストシーンでした。



読書感想文 2012年1月30日記事
ヒミズ(アンコール刊行劣情の種子編) 古谷実 講談社

 コンビニに立ち寄った折に見かけて購入しました。映画が評判になっていたことがきっかけです。原作となった漫画です。「ヒミズ」の意味は読み終えた今になってもわかりません。「劣情の種子」は不遇な境遇にあって殺人がらみのトラブルに巻き込まれると解釈します。映画は他に観たい作品がいくつかあるので、公開が終わらなければ見に行くつもりです。
 登場人物たちの整理から始めます。最初は高校生3年2組メンバーかと勘違いしました。中学生でした。主人公が「住田祐一」15才。離婚母子家庭のひとり息子で、父親は無気力なろくでなし。金をせびりにきます。母親は男をつくって家を出て行きました。家といってもボートハウスで、祐一はホームレスに近い状態です。「ホームレス中学生」を思い出しました。祐一は孤独で人間不信です。心は冷めています。平凡で目立たない生活を目指しますが時の流れはそれを許してくれません。「夜野正造(よるのしょうぞう)」小柄で前歯が出ている。同じく15才。お金と女子が好きです。「赤田健一」ブタのような容貌でグロテスクです。漫画家志望の15才です。大西とか西という学生にいじめられています。彼には本格的に漫画家へ挑戦する年上いとこの男性がいます。いとこは「きいっちゃん」と呼ばれています。「茶沢景子」気の強い女子15才です。映画では重要な役柄なのでしょうが、この漫画では小さな脇役です。
 さて感想です。奇怪ですが魅力があります。作者の実体験も織り交ぜてあるのでしょう。母子家庭両親再婚等の設定からは、「オルゴォル」のフジワラハヤト11才とか「晩鐘」の笹塚大輔11才が思い浮かびます。笹塚大輔の方は殺人犯の父親をもつこどもになります。表面には出ないけれど人間がもつ「悪」は至るところではびこっています。被害をまっさきに受けるのはこどもです。こどもの気持はゆがみます。住田祐一は人間を「普通の人間」と「特別な人間」に分けます。自分は普通でいたいのに神は特別になることを求めます。純文学小説を読むようでした。養育を放棄した父親を怨む。母親も憎いでしょう。洋画ロバート・デ・ニーロのタクシー・ドライバーが出てきたり、森進一の冬のリビエラが登場したりするのはわたしと同世代なのでしょう。親からは放置されて育った世代です。よくいえば、地域の縦型こども集団の中で育った世代です。
 暗い漫画です。先日観たイタリア映画「道」で、大道芸人に売られたジェルソミーナが自分は何のために生まれてきたのかわからないと嘆きます。同様にこの漫画では、住田祐一が同じようなことをつぶやきます。ときおり顔が妖怪になった絵が登場します。人間の「悪」をうまく表現してあります。人間が妖怪に変身するのか、妖怪が人間に変身しているか、そう考えると体がゾクゾクする快感と憂鬱が生まれてきます。日本では、1日2500人が病気や事故で亡くなっているという言葉からこの物語は始まります。
(その後)
 「ヒミズ」の意味は「もぐら(の種類)」でした。陽見ず(ひみず、太陽を見ない)からきているのだろうと自分で理解しました。作者は若く同世代ではありませんでした。10年下の世代になります。

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