2014年04月13日

ちきゅうがウンチだらけにならないわけ 2014課題図書

ちきゅうがウンチだらけにならないわけ 松岡たつひで 福音館書店 2014課題図書

 この本は、大型絵本の形状をしていますが、中身は、絵本よりも文字数が多く、内容も濃く、図鑑のようでした。ページをめくりながら、感想の経過をふりかえってみます。
 小学校1年生ぐらい、これから、未知の世界を知るこどもさん向けの本です。冒頭にある飼いイヌの言葉がおもしろい。「ぼくのウンチは(飼い主が)拾ってくれる。でも、カラスのウンチはだれもひろってくれない」から始まります。野生動物のウンチは、だれもひろってくれないのです。
 これからの展開を考えると、まず頭に浮かぶのが「循環」です。ウンチは、自然界の循環の法則にのっかるのです。ページには、身近でみかけることが少なくなった生き物たちの絵があります。カエルだったり、おたまじゃくしだったり、バッタ、トカゲだったりします。
なかなかユーモアにあふれている絵本です。「イヌとしょかん」というネーミング(名付)がいい。イヌくんがひろげている本の表紙・裏表紙にある影絵で、動物の名前当て遊びができます。「知恵」があります。この本は「学習本」です。イヌは、読み手である子どもさんです。
 象の大きなウンチから昆虫ほかの小さなウンチへの変化がうまい。ページをめくるごとに、ものすごい量の動物が登場します。こんな絵本を読むのは初めてです。色合いがきれいで、動物の絵はきちんとしています。ナマケモノに、木から下りてウンチをする習性があるということは新発見でした。
 その後、展開が、海(水の中)へ移行することは予測できました。次は、「宇宙」か「山」でしょう。
 ピンポーン。ページをめくったら、やはり、「宇宙」でした。物語の締めは何をもってこよう。通常は、最初の発想に戻るか、あるいは、人間のウンチについて述べるかです。ここまできて、「循環」に関する視点が出てこないのは不自然です。
 次のページ、「循環」が出てきました。ウンチは、肥料のような役割を果たして、土となり、他の動植物の栄養素となっていくのです。この展開が必要です。それが、地球の自然環境を大切にしようというメッセージにつながっていくのです。地球は、さまざまな生き物が住む共同住宅なのです。人間だけのものではありません。
 次で、意表を突かれました。ウンチを食べる生き物登場です。考えてみれば、これも「循環」です。ウンチは、植物の種を運ぶ素材になる。ウンチは、生き物が生き続けていくためにある。命の保護膜にもなる。
 文章を読んでから、絵を見て考える。5回ぐらい繰り返して読んだあと、描かれている絵を真似して自分も絵を描いてみる。薄い本ですが、情報量は膨大です。
 解説は、この世に不要なものはないと思わせてくれます。
 最後にある問題提起の解答はこの本にはありません。自分で調べて考えるのです。捨てられた飼い犬のウンチは、焼却処理されたのち、灰は埋め立てに使われるのでしょう。水洗便所から流れていった人間のウンチは、下水道で処理されて、なにかに再利用される部分と汚泥(おでい)として乾燥・焼却処理のあと埋め立てとか海洋投棄されるのでしょう。
 最後の問題提起部分は、大人社会に対するもので、大人へ向けたメッセージです。この本の場合、省略してもよかった気がします。ごみとして無駄遣いされる部分が残る以上、明解な解答ができません。されど、問題提起部分を書かないと、最初のページから始まる理念(りねん。根本的な考え)を直線的に表現できません。ただ、こどもさんにそこまで教え込むことがその年齢の時期が適切かという部分があり、むずかしいところです。

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