2013年08月21日

風の中のマリア 百田尚樹

風の中のマリア 百田尚樹 講談社文庫

 不思議な成り立ち方をしたハチの物語です。読む前にあった擬人法が用いられた作品だろうという予測ははずれました。もろにハチの話です。オオススズメバチに名前を付けて、感情をもたせています。テレビ番組アニマルプラネットのような生き物紹介作品です。昆虫同士の空中戦は、同作者の名作「永遠の0(ゼロ)」の下地になったでしょう。ぶ厚い攻撃と防御の記述が続きます。
 何のために生きるのか。「種の保存」です。血統にこだわる内容です。食べて、寝て、働いて、女王バチを頂点とした組織を防衛しながら維持していく。侵略者に対しては、攻撃し、自身が属する組織を維持していくために逆に侵略して食料を奪う。正も悪もない食物連鎖の世界で生きて、死んでいく。本能(動物の既定された行動様式)です。戦いはたいていは、数の力で勝利者が決まるけれど、そうではないときもある。
ハチがハチを喰う(くう)。ワーカー(働きハチ。メス)の命は30日。カマキリ、オニヤンマ(大型のトンボ)と争う。1日に100km以上の距離を飛ぶこともある。オオスズメバチの生態紹介です。
 ミツバチには、ニホンミツバチとセイヨウミツバチがある。ニホンミツバチは、オオススズメバチには熱球の術(おおぜいで包み込み熱で焼死させる。小説では、ほうきゅう蜂球)で勝つけれど、セイヨウミツバチには無力で負ける。(セイヨウミツバチを敵と認識できない。遺伝子にその情報がない。)
 子を産んではならないワーカー(すべてメスのハチ)という仕組みも、生命維持ができるかできないかの土壇場(どたんば。最後の場面)になるとくつがえる。合理的です。
 読み終える頃に、家の洗面台に行ったらハチがとまっていてびっくりしました。何かの啓示(けいじ、神さまや仏さまからのお知らせ)かと思いました。丸めた新聞紙の穴にハチを誘い込み、屋外に出しました。穴はハチの巣の穴に似ている。
 以下は印象に残った文節の趣意です。
 ワーカーの報酬は強い妹が育つこと(そういえば、読んでいる途中、ハチには土日の休日はないと思いました。)
 自分たちは何のために生まれてきたのだろう。
 子孫を残すことが目的
 帝国の束縛から逃れられない。
 餌を譲ってくれるハチに初めて出会った。
 ワーカーの宿命
 姉たちから受けた恩を妹たちに返す。
 理解できなくてもいい。そういうものだと思えばいい。
 あなたも負けるときがくる。


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