2013年07月17日

サムライ・ダイアリー 天野純希

サムライ・ダイアリー 天野純希(すみき) 人間社

 江戸時代尾張藩の侍の日記があるというニュースを新聞で知ったのはもう15年以上前です。日常茶飯事の些末(さまつ)な事柄が記してあり、歴史風俗を知るための貴重な資料としての面もあるし、なかなか面白おかしいユーモアもあるというものでした。でもその時は、たいして興味は湧きませんでした。
 今回、この本を読みました。面白い。どこまでが事実なのかは不明です。創作部分もあるでしょう。されど、なかなか楽しめます。26年間書き続けた日記の抜粋となっています。1600年関が原の合戦からおよそ100年後、江戸時代天下泰平の世の中で、武士は暇をもてあましています。
 主人公朝日文左衛門さんの18歳からスタートします。日記を付け始めた動機は「暇だから」となっています。以降、先妻、後妻、さらに3人目の妻、女中複数と続く浮気性な彼の女性遍歴や浄瑠璃を初めとした芝居好き、文学好きが書かれています。彼は趣味人です。結局アルコール摂取過多が病因でおそらく40代半ばで亡くなっています。こういう人って今でもいるような気がする。
 最初のうち、文左衛門さんは元気がいい。やはり若い。ぴちぴちしています。それがだんだん尻すぼみではないのですが、老いてくるにつれて、みじめで暗い生活に転落していきます。妻から夫に対するDV(家庭内暴力)、文左衛門自らのストーカー行為もあり、いつの時代でも人間の素行に変わりはありません。子どもを産めない、産めても男子を産めないことで世間体が悪いという女子の悩みは大きい。侍男子にとって「家督相続」は重要な事柄のようです。物事は殿さまが許可する。あるいは殿さまグループが決めていく。やっかいな身分階級あり。そのあたりを読んでいると、武家社会に嫌気がさします。
 地元尾張に住む人間にとっては身近な地名がそこここと出てきます。過去への時間旅行をしている面があり、300年ぐらい前、ここでこんなことがあったという想いに浸(ひた)ることができます。
 心に残った書中に出てくるセリフは、「人の本質は数百年で変わるものではない。戦は怖いし、斬られるのは嫌だ。できれば楽をして出世したい。」でした。


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