2013年03月22日

フリーター、家を買う 有川浩

フリーター、家を買う 有川浩(ひろ、女性) 幻冬舎

 タイトルにある家を購入する経過や場面は少ない。後半にほんの少しあるだけです。別のタイトルでもよかったのではないか。
 家族の再生話です。4人家族のうち、おかあさんがうつ病になってしまう。原因が、安価な借家住まいをご近所の主婦たちがうらやんで嫌がらせをするというのは、説得力に欠けるのですが、よしとしましょう。
 全体はゲームシナリオの流れのようです。前半部分は重苦しいのですが、主人公武誠治くん24歳の仕事がのってくると、あとは驀進(ばくしん)するがごとくハッピー路線が続いていきます。
 なかなかおもしろい。姉亜矢子さんのセリフは生きているし、父誠一さんは、誠治くんが主張するほど悪人ではない。全体をとおして、登場人物が少ないことがいい。各自の個性がはっきりしていて読みやすい。
 息子というものは、おかあさんのために最善を尽くす位置にあります。部分的に登場人物たちのやりとりが人形のやりとりに感じられるのが、ゲームの印象につながっていきます。
 最初の頃の誠治くんは、だらしのない人間です。わたしは、父親の立場で本を読みますので、息子である彼にがっかりします。
 181ページにある彼の言葉、「(母親を)空気のように無視してそっとしておいてください」は名言でした。

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