2013年02月28日

ガリレオの苦悩 東野圭吾

ガリレオの苦悩 東野圭吾 文藝春秋

 短編集です。主人公である物理学者の帝都大学湯川准教授は作者自身なのでしょう。タイトルにある「苦悩」の様子は作中にはありません。
「落下る(おちる)」飛び降り自殺をした女性の謎解きです。読みながらまっさきに考えたのは犯人像の動機です。科学だけではなく、人間の心模様も描かれています。
「操縦る(あやつる)」家族というものは美しいものではないとか、草薙(くさなぎ)刑事の必要以上の仕事はやりたくないという本音がいい。
「密室る(とじる)」「指標す(しめす)」このシリーズの成り立ちについて考えました。雑誌掲載のための小編ということになります。ドラマ化まで意識してあるのかまではわかりません。同作者の「白夜行」とか「幻夜」という長編に通じる物語の展開と内容がみられます。本当の悪党とは、犯人ではなく、犯人になるように犯人を追い込んだ人間なのです。
「攪乱す(みだす)」つながりについて考えました。つながろうとするとつながりができる。つながらないようにすればつながりは生まれてこない。つながろうとする人間よりもつながらないようにする人間が昔より増えました。

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