2012年10月16日

重力ピエロ 伊坂幸太郎


重力ピエロ 伊坂幸太郎 新潮文庫

 弟の名前は「春」1973年4月8日生まれ、2歳年上である兄の名前は「泉水(いずみ)」、ふたりは異父兄弟。弟はレイプで生まれたこどもだが、4人家族で暮らしていた。そして、母が死去、父は胃ガンで入院している。
 テーマは「なぜ人を殺してはいけないのか」であり、最初の17ページまでで春の圧倒的な魅力の虜(とりこ)になります。473ページに渡って、細切れの話が続きます。
 弟「春」のことを放火事件にからめて語る兄いずみです。DNAとか遺伝子情報にこだわる。生物学上の父と育ての父をもつ春の遺伝について焦点を絞ってあります。260ページの整形は後の同著者「ゴールデンスランバー」への導線となっています。
 放火犯人の目途がつきません。春が犯人では物語が成立しません。390ページ、「目には目を」の解釈がいい。犯罪者は罰を受けるべきです。そうしないと被害者家族から殺されます。親族の絆(きずな)は強いのですが、春の出生のあり方から考えるとこれはありえない話です。毒をもって毒を制すという理論には共感しました。父親から息子へ、男から男への愛情でした。この本の主役は父親だった。


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