2012年07月14日

いなかのネズミとまちのネズミ イソップ


いなかのネズミとまちのネズミ イソップえほん 蜂飼耳 今井彩乃

 わたしがこの物語をはじめて読んだのは、8歳ぐらいのときでした。いなかのねずみととかいのねずみというタイトルで覚えています。都会ではなく、町が正しいようです。また、8歳のとき、舞台は日本という設定で理解しましたが、この本ではイギリスの風景です。
 赤いネズミがいなかのネズミ、黒いネズミがまちのネズミです。いなかは粗食(収入が少ない)、まちは美食(収入が多い)、人間社会のありようをネズミをとおして擬人化してあります。年収が少なくても気楽な生活がいいのか、(逃げ回るのに)忙しくても豪華な生活がいいのかという対比の面があります。長い人生を通して、どちらか一方の暮らし方をするということは少ない。若い頃はまちに出たい。老齢になってくると田舎暮らしをしたいということもあります。
 いなかのネズミにしてもまちのネズミにしても、世界が狭いということに変わりはありません。このふたりがどこで出会ったのかの説明はありません。縁があったのでしょう。それとも最初はふたりともいなかにいたのかもしれません。あるいは、親子なのかもしれません。もうひとつの共通点として、両者に「生産性」がありません。他者の食べ物に依存します。自らが食べ物を育てるという知恵がありません。
 イソップさん(2600年ぐらい前のギリシャの作家さん)が、いなかとまちの暮らし、どちらがいいかという単純な選択を目的としてこのお話をつくったのか、それとも解決不可能な人間の欲望について深い考察をされたのかは、今となっては知る由もありません。

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