2012年05月31日

セキタン 須藤靖貴

セキタン 須藤靖貴(すどうやすたか) 講談社

 セキタンとは石炭ではなく、書中の説明では相撲の隠語で「急いで」の意味となります。大関治15才の中学3年生から25才までの相撲道の記録です。中学生以上向けの内容となっています。相撲の知識や見学体験がない中学生にはちょっとむずかしい。
 長髪・Gパン・メガネをかけたタヌキみたいな男から「君は横綱になれる」と予言された大関治は、剣道部退部後美術部員となった父親病死後の片親で、弟がいる家庭のこどもで進路に悩みます。
 三角関係があります。競馬騎士を目指す絵島と香山美夏です。大関のサクセスストーリーであるようでそうではない。ラストへのもっていきかたはすっきりしません。大関が素直でまじめな青年であるがゆえにアンバランスです。ところどころに教訓の言葉があります。「人は善いことをしながら悪いことをする。」気に入ったのは「前へ前へ行け。」
 創りとしては、インドの神さまガネーシャが登場する本(タイトルを思い出せません。)形式です。中学生向け進路指導本のようでもあります。高校進学をしない大関と絵島の決心にはほろりときます。
 予言者であるタヌキ男については、先日観たフランス映画「5時から7時までのクレオ」を思い出しました。主観の時間(本人の意識する時間)と客観的な時間(時計が刻む時間)の違いが表現されていました。
 好きな女のために進路を決める男の純情があります。絵島はいい奴です。生活保護申請の話は追記がなく、出す必要もなかった。後半4分の1の部分がしっくりきません。そこまではよかった。「電車男」のような一直線のサクセスストーリー(成功物語)でよかった。人心はヒーロー(超人的な力を発揮する人)を求めています。

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