2010年06月15日

つみきのいえ DVD

つみきのいえ DVD

 はじめにナレーションなしで見て、次にナレーションつきで見ました。ナレーションを聴いて、自分の想像力のなさにがっかりしました。上手な語りです。
 うまく表現することができませんが、色彩、色調が濃くて素朴で美しい。はじまりの場面は、薄い膜がかかっていて、だれかが室内にいるおじいさんを見ているようです。家が水に沈んでいくので、家の上にまた建築をしていくということはあり得ないことです。これは、心象風景なのです。人間の心の中にできあがった水没しつつあるこの世の風景です。
 住みにくい家であるわけで、ふつうなら住める場所に引っ越すのです。引っ越さないのは、「家」に愛着があるからです。思い出があるのです。若くて元気だった頃に、ある女性と夫婦になって、こどもが生まれて、こどもがおとなになって家を出て行って、こどもの結婚式に出て、終わり近くに天国に旅立った妻を見送った家なのです。家は自分そのものです。おじいさんの妻に対する愛情は強い。
 ひとり暮らしで孤独になって、死にたいけれど死ねない。だから社会の片隅で思い出にひたりながらひっそりと暮らしていく。時は静かに流れていきます。
 抽象的なのがいい。固有名詞が出て、どこのだれがなにをどうしたとなると心を打たれる視聴者の範囲が狭くなります。

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