2008年11月02日
夕凪の街桜の国 原爆ドーム
夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国 こうの史代 双葉社
再読になります。
この漫画の中で、被爆が原因で昭和30年9月8日に23歳で亡くなった平野皆実(みなみ)さんの弟石川旭(あさひ)さんが、老齢になって、夜行バスで東京から広島へ向かい、その姿を娘の石川七波さんと七波さんの弟石川凪生さんの恋人利根東子さんがこっそりつけるシーンがあります。わたしの場合は夜行バスではなく広島終点の新幹線に乗りこの本を車内で読むことにしました。
気づいたことは、亡くなった平野皆実さんの皆実という名前は、おそらく現在も存在する町名が由来なのでしょう。
広電「宮島口」から電車に乗車して原爆ドーム前駅を目指しました。目的地駅に近づいてきて眼前に原爆ドームの姿が広がりました。生まれて今まで50年間一度も見たことがなかったので、日本人なら見ておかなければならないと思い立ち今回の見学としました。
第一印象は、建物の色が思っていたものとずいぶん異なることでした。わたしは壁が濃厚な緑がかった暗い雰囲気の構築物を想像していましたが、実際は正反対で、淡いパステルカラーでした。話は脱線してしまうのですが、以前名古屋市東区の徳川美術館で、源氏物語絵巻の再製版を見たことがあるのですが、そのときも深い色の水彩画をイメージしていたのですが、パステル(クレパスのようなもの)で描いたような明るい色調でした。話を戻すと、この前日に京都の同志社大学横の道を歩いていたのですが、同大学の建物と原爆ドームの建物のレンガ色が同一で、かつ両者ともに洋風建築でわたしにとってはいずれも不思議なことでした。原爆ドームについては、建築されたときにこの姿になることが運命づけられていたのではないかと神がかりのように思えました。
さて、物語の感想に戻ります。
原爆の病気でなくなった平野皆実さんは、原爆投下後も生き残ったことを悔やみ自分を責めます。そしてもうひとつ、死ねばいいと思われた(アメリカに対しての言葉だと思うのですが)ことについて憎しみを通り越して、悲しみを感じ続けます。加えて先日読んだ東野圭吾著「鳥人計画」では、楡井(にれい)君22歳天才スキージャンパーが、コーチに毒殺されます。楡井君は同じくコーチに死ねばいいと思われたことを苦にします。人間としてこの世に存在することを人から否定されることはつらいものです。
戦後63年が経過して、戦争体験者の減少とともに原爆投下の出来事は風化していくのでしょうか。何十年経っても、何百年経っても忘れてはいけないことだと感じました。この本は、世代間の流れをとおして受け継がれる心とか気持ちを表しています。
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