2023年11月08日

子どものためのガイドブック だいじょうぶ!親の離婚

子どものためのガイドブック だいじょうぶ!親の離婚 ケント・ウィンチェスター ロベルタ・ベイヤー[著] 高島聡子 藤川洋子[訳] 本山理咲(もとやま・りさ)[装画] 日本評論社

 こどもさん向けの本です。
 離婚する親が増えました。
 夫婦がいっしょに暮らしたくないのです。しかたがありません。
 されどこどもたちにとっては迷惑です。
 わたしは、離婚ではありませんが、父親が中学一年の時に病死して母子家庭を体験しました。
 とにかく経済的に困りました。
 学校の制服以外に着るものがなくて、食事が粗食でした。
 学生時代は、アルバイトをしたり、奨学金をもらったりして生活費と学費を稼ぎました。

 こどもは、親の離婚がらみで苦痛があるのですが、こども自身は、おとなになって、自分のパートナーを見つけて、自分たち夫婦の家庭を築くという夢をもったほうがいい。
 こどもによっては、両親がケンカをして離婚する姿を見て、自分は将来結婚しないと決心する子もいるかもしれません。しかたがありません。

 さて、読み始めます。
 まずは、1ページずつ最後のページまでゆっくりと目をとおしながら、何が書いてあるのかをだいたい把握(はあく)します。

 『離婚は、ぼく/私のせい?』(そんなことはありません。パパとママのせいです)

 『もし両親が興奮して、おかしくなっちゃっているときは?』(まずは、仲介に入って止めてみて、だめならほおっておきます)

 『親に会いたくなったらどうしよう?』(たいてい、そうはなりません。ただし、別居の親はこどもに会いたいとは思うでしょう)

 仲が悪い者同士が、同じ家にいても、ひどいケンカが続くだけ。家の中が荒れる。そんなふうなら、両親は、別れたほうがいいと思う。そのような意見を述べる12歳男児がいます。(そうだね)
 
 『おじいちゃん、おばあちゃんはどうなるの?』(関係が濃い祖父母と関係が薄い祖父母がいます。どちらのタイプの祖父母かで、対応が異なってきます)

 『離婚のあと、もしお父さんやお母さんが、(別の異性と)付き合い始めたら?』(わたしの場合は許しませんでした。自分の父親は亡くなった父親以外にいません。そのような件を扱った名作本として、重松清作品『卒業』新潮文庫があります。亡くなった実親と継父母との間で悩むこどもの姿があります。かなり深刻です)

 この本の原作者について書きます。アメリカ人です。
 ケント・ウィンチェスター:弁護士。ふたりのこどもの父親。アメリカ合衆国ニューメキシコ州居住。離婚経験者でもある。

 ロベルタ・ベイヤー:弁護士。調停委員。女性。

 『「面会交流」はだれのためのもの?』(わたしは、血縁関係のある者同士は、お互いに会いたいときに自由に会えばいいと思っています。制限をつけることは奇妙です)

 訳者紹介
 高島聡子(たかしま・さとこ):家庭裁判所調査官
 藤川洋子:家庭裁判所調査官を退職後、女子大学心理学部教授

 2015年(平成27年)発行の本です。

(2回目の本読み)

 こどもさん向けの「親の離婚にどう対応しよう」という本は珍しい。やさしい言葉で書いてあります。ネットで別の種類の本の検索をしていてたまたま目に留まり、この本の成り立ちについて興味をもち取り寄せました。

 『はじめに』に、こう書いてあります。『この本は、「もう一緒に暮らさない」と決めてしまった両親をもつ子どものための本です……』
 著者が住むアメリカ合衆国は、離婚の多い国です。そのせいか、こどもさんへの語りかけが優しい。
 離婚はやめましょうではなくて、離婚することを前提として、こどもさんに心配しなくていいよと語りかけています。
 この本には、こどもたちの生の声が書いてあるそうです。
 相談にのってくれる、いいおとなをひとりでいいから見つけてくださいと、こどもさんへのメッセージがあります。

 離婚とは=結婚の終わり。夫婦関係は解消し、父と母は、もう同じ家では生活しません。
 (だけど、親子関係は切れない)

 『どうして離婚するの?』 こどもが生まれたとき、両親にとって、その日は、人生で最高の日だった。その後、これ以上、この人といっしょにいても幸せにはなれないということがわかった。だから離婚して、もう同じ家で一緒には住まない。生活しない。
 
 こちらの本の特徴です。
 問題提起があって、その解決をさぐるための本を紹介するというパターンでページが進んでいきます。
 
 複数の兄弟姉妹がいて、両親の離婚に伴って、兄弟姉妹が父と母のそれぞれに引き取られて分離となると、こどもにとっては、けっこうつらい。
 夫婦というのは、相手を責めるようになると、夫婦関係の終了へと流れが向かっていきます。
 婚姻関係を継続していくためには、忍耐です。昔の女性はよく耐えられました。(結婚は、昔は、家と家の結びつき、見合い結婚、利害関係者による紹介結婚が多かった。「恋愛」と「結婚」は別物というとらえ方が強かった)

 テレビ番組『徹子の部屋』で、フォークグループ「かぐや姫」のみなみこうせつさんが、お寺の住職であった父親が亡くなった時、母親が、『本当は、好きじゃなかった』と言って、そんな両親から生まれてきた自分たちの立場はどうなるのだと、うつろな気持ちになったことをお話しされていました。(そういう事例は多かったと思います。とりあえず、男に生活力があって、ご飯を食べていけるかが結婚の最優先事項でした。そして女性は夫に従い、夫とこどもがいる家族を支えることが女性の役割だったのです)

 もうひとつ、別の人の事例で、父親の葬儀が終わったあと、母親が、(今も生きている)初恋の人に会いに行くと言って、北海道行きの飛行機に乗って、札幌へ行ってしまったという話を聞いたことがあります。(母親が帰ってきたかどうかは定かではありません)
 
 本の中では、10歳の男児が、『(パパとママは)折り合うところを見つけたんだ』(折り合った結果が、『離婚』です)

 こどもさんが、つらいときの対処法が書いてあります。
 感情を表に出す。泣く。怒りを心の中にしまいこまない。
 あなたは、まだこどもだ。耐えなくていい。
 感情を管理(コントロール)する手段として、絵を描く、文章を書く、日記を書く、手帳にメモする。音楽を聴く。歌う。踊る。小説とか、マンガを読む。映画館で映画を観る。ビデオを観る。友だちと遊ぶ。笑う。電話をする。スポーツをしたり、観戦したりもあるでしょう。

 12歳男児の意見があります。『離婚することで、人生、救われたと思う親もいるんだよ……』

 相談相手について説明があります。アメリカ合衆国はそういうシステムがあるのだろうか。相手として、カウンセラー、家庭裁判所調査官、セラピスト、場所として、カウンセリングルーム、裁判所、相談室。(いずこも、こどもが簡単に行けそうな場所とは思えませんが……)

 こどもから見て、自分の意見や感情に対して、同調者がほしい。味方がほしい。自分のことを人にやってもらいたい。ストレスのはけ口がほしい。

 ひとり親家庭になって、生活費や学費がないという経済的困窮の話が出てきません。不思議です。読み進めてみると、お金のある家庭の離婚話だと、なんとなくわかります。

 ネコと話すこどもがいます。ネコは答えてくれませんが、話すと楽になるとこどもが言います。
 相手(ネコ)からのアドバイスはなくてもいい。だれかに自分のことを話したい。そのことを素材にして、映画ができそうです。

 こどもは、離婚する親のことをあれこれ考えるけれど、そんなこどもがおとなになって結婚して、こども自身も離婚するということもあります。親子の世代間で、離婚が連鎖します。こどもが離婚したいと言った時、離婚経験がある親は、こどもの離婚を止めるための説得ができません。『いっしょだね』としか言えません。

 養育費について書いてあります。あてになりません。たいていは、くれたとしても最初のうちだけです。そのうちなくなることが多い。

 お金がなければ、お金のことでもめます。こどもが貯めたお金を親が無理やり取り上げて使うこともあります。

 夫婦というのは、家事をどちらがやるかでケンカしているうちはまだいい。お金がないことでケンカになると情けない気持ちになります。

 こどもから見て、信頼できるおとなというのは、なかなかいない。見つけられないと宗教に行く人もいる。へんな人間にだまされて利用されないように気をつけたほうがいい。

 離婚にともなっての引っ越しや転校があります。拒否しないほうがいい。今いる場所を変わらなければならないことは、人生において、いくらでもあります。就職したら、転勤や人事異動があります。あれもこれも嫌だと主張していたら、ごはんを食べていけません。

 家事について書いてあります。ひとり親家庭になったら、こどもも衣食住のことを積極的にやらねばなりません。掃除、洗濯、アイロンかけ、買い物、料理に食器洗い、ごみ出しもです。
 いろいろやっておいたほうがいい。おとなになったら、一人暮らしの体験を一度は体験しておいた方がいい。衣食住のやり方の基本を知らないひとり暮らしを体験したことがない者同士が結婚すると、けっこうもめます。

 こどもさんがこの本を読んで、離婚のことがよくわかるとは思えませんが、読まないよりも読んだほうが、気持ちが落ち着くということはあります。

 こどもは、いつまでもこどもではいられません。体が大きくなる。成長します。あっという間におとなになります。それからが長い。

 書中の書き方の特徴として、これこれについては、〇〇ページから〇〇ページを読んでくださいという表現があります。すんなり、その場で理解できません。そういう書き方はわかりにくい。

 一般的なこととして、仕事人間のパパを信じたり頼ったりしないほうがいい。パパは仕事場が好きなんです。自己顕示欲と自己実現を満たすことができる職場が好きな人は、家庭を顧みません。(かえりみない:考えない)。会社が家庭で、社員が家族です。

 こどもはこどもであって、物事の中心にはいない。だから、こどもは自分に責任を感じる必要はありません。
 
 どうにもこうにもならないときは、しかたがないとあきらめる。
 今はこうするしかないと、気持ちに折り合いをつける。
 なるようになる。なるようにしかならない。あきらめる。とりあえず生きていれば、いつかはいいことがあるに違いないと気持ちに折り合いをつける。

 ここまで、この本を読みながら、自分の考えを中心に記述しています。

(つづく)
 
 書中に参考図書の紹介があるのですが、日本の本も何冊か紹介されています。もとはアメリカ合衆国の本ですから、その部分は、日本の担当者の判断で日本の本が入れてあるのでしょう。
 紹介されている本で、『我が家の問題 奥田英朗(おくだ・ひでお) 集英社文庫』があります。わたしは、『我が家のヒミツ 奥田英朗 集英社』は読んだことがありますが、同じ作者で、似たようなタイトルで本が出版されています。
 『我が家の問題』の紹介文では、高校二年生女子が、祖母からの間違い電話で、両親に離婚話があることを知るとあります。どうしよう?です。
 いろいろ考えていて思い出す児童文学があります。
 『オルゴォル 朱川湊人(しゅかわみなと) 講談社』
 両親が離婚した小学生男児が、離婚後東京から大阪に移り住んだ父親にひとりで会いにいくのです。鉄道で大阪まで行ったところ、父親は女性と再婚・同居しており、女性は赤ちゃんを妊娠していて、少年にとっての異母きょうだいが生まれるのですが、周囲の人々は、少年を温かく迎え入れてくれたのです。
 さらに、東京で少年と暮らしている実母には彼氏がいるのです。
 自分の生活環境を、どうすることもできない小学生男児の姿が切ない。少し内容が違うかもしれませんがそんなふうだった記憶です。魅力的な文章と文脈の流れが心地よく、作者のもち味のひとつとなっていました。

 離婚届けが提出されて離婚が成立するといろいろとややこしい話になります。日本社会は、婚姻関係が成立している家族にとって有利なシステムになっています。
 法律的には、親子の扶養義務とか、相続とか、いろいろ課題が発生してきます。
 夫婦関係は切れても親子という血縁関係は切れません。関係ないとか、知りませんでは済まされないことも出てきます。いろいろ嫌なことが待ち受けています。

 こどもに対しては、きみは、秘密をかかえこまないほうが、心の安定にはいいとアドバイスがあります。おとなが内緒にしてね(ないしょにしてね)と言っても、知ったことか!です。自立と自活は、親やおとなと対立するところから始まります。

 なんというか、読んでいると、さみしくなってくる本です。
 別れるということは、さみしいことです。
 126ページ以降に訳者からのメッセージがあります。
 離婚することを否定はされていません。
 離婚する親に対して、『親子の関係をどう考えておられますか?』と、質問を投げかけられています。
 次に親以外のこどものまわりにいるおとなに質問を投げかけておられます。
 両親の離婚によって、たいていは、こどもの心は傷つきます。
 文脈から察すると、こどもに『おりこうさん』になることを求めてはいけないと読みとれます。『過剰適応』という言葉があります。こどもの心に無理をさせてはいけない。心が壊れます。深刻な結末につながることもあります。親が離婚して、何も感じないこどもはいない。
 その子にとって、『信頼できるおとなの誰か』になってほしいとメッセージがあります。

 最後のほうに書かれていたこととして、
 ハーグ条約:国際的な子の奪取(だっしゅ)の民事上の側面に関する条約。1980年(昭和55年)に採択された条約。国境を超えた不法な子どもの連れ去り、留置をめぐる紛争に対応するための国際的な枠組み。条約締結国相互間で有効。子どもの返還、親との面会についての決め事。日本は2014年(平成26年)に締約国になった。(ハーグ:オランダの都市)
 有名な女子卓球選手のことが思い浮かびました。

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