2023年10月10日

定本 本屋図鑑 夏葉社

定本 本屋図鑑 本屋図鑑編集部・編 徳地直美・絵 夏葉社

 わたしの実用書の読み方です。
 最初に1回目の本読みがあります。
 1ページずつすべてのページをゆっくりめくりながら、なにが書いてあるか見当をつけます。この本は全体で400ページあります。盛りだくさんです。

 古いものを追う企画にみえます。
 消えていくものです。(町の本屋)
 1995年、ウィンドウズ95が発表されて以降、物の流通が大きく変化していきました。
 ネットで注文、配達、電子書籍の登場です。
 町の本屋がたくさんなくなりました。

 憩いの場であった町の本屋です。
 こちらの本に、そんな本屋の紹介が盛りだくさんです。全国47都道府県を回っておられます。
 取材は、2012年(平成24年)11月から2013年(平成25年)6月の約半年間と2020年(令和2年)以降です。

 9月29日金曜日午前4時、ワールドカップラグビー日本対サモア戦を見ながらこの本のページをめくり始めました。(結果は日本のぎりぎり勝利でした。サモアも強かった)(その後:10月9日朝のこと。昨夜、アルゼンチンに惜敗しました。残念。またの機会を期待しましょう)

 さて、本の方は、手づくり感が満載です。
 書店の姿を描いた絵がいい。絵がたくさんあります。写真より絵のほうが、つくり手の気持ちが伝わってきます。
 ちびっこアイドル、ドラえもん、のび太君、しずかちゃん、スネ夫君、ジャイアンの顔も出てきます。
 空間の広がりがある絵です。
 
 全国を巡る取材力があります。
 本屋巡りを理由にした旅の本でもあります。
 
 241ページに初めて写真が出てきました。書店内のようすです。本棚の前で、店員さんがお客さんに本の説明をしています。その後何枚かの写真が登場します。味わいがあります。

 消えていくもの、衰退したものとして、『炭坑』があります。わたしが中学生ぐらいまでのころに全国から次々と炭坑が消えていきました。
 今の時代は、本屋が消えていく時代です。
 ガソリンスタンドも減りました。石炭が否定されて、ガソリンが否定されて、産業は順番に変化していきます。
 
(2回目の本読み)

 日本にある本屋の76店舗の記録です。
 リブロ:中規模書店チェーン。その後合併して「リブロプラス」になっている。

 ページの絵に、書店の陳列棚の絵があるのですが、わたしの自宅の本箱にある本や同じ作者の絵があって、うれしい気分になれました。
 ろう(耳が聞こえない)の写真家斉藤陽道(さいとう・はるみち)さんとか『ヒロシマ消えた家族 指田和(さしだ・かず 女性) 写真・鈴木六郎 ポプラ社』とか『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え 岸見一郎 古賀史健 ダイヤモンド社』とか、ショーン・タンの世界という本があります。うちの本棚にあるのは、『アライバル ショーン・タン 河出書房新社』とか、和田誠さんの絵だと星新一作品が思い出されます。
 今年は4月から9月末まで、NHKBSの再放送でじぇじぇじぇの『あまちゃん』を観ていたのですが、この本の中にある本棚の絵には『はしれさんてつ、きぼうをのせて』という本とさんてつの本が置いてあります。岩手県を走る三陸鉄道です。
 
 本屋の紹介内容はそれほど長い文章ではありません。コンパクトにまとめられています。
 起承転結にのせた文章です。ちょっと短いかなとも感じられます。情報についての物足りなさがあります。基本的に2ページで絵ものせてひとつの書店紹介です。

 大学を中退して、本屋へ通うようになり、本読みに没頭して、本屋を志した書店経営者の方がおられます。こちらの本の出版社の経営者の方と似ています。

 児童書の特徴として、本のサイズがさまざまであることが紹介されています。わたしは、絵本は、絵画集の面もあると思っています。

 住宅地図の価格は、40年ぐらい前は今よりもずいぶん安価だった覚えがありますが、今は高価になりました。理由はわかりませんが、情報量の増加と買い手の減少があるのかもしれません。

 昔は注文して配達してもらうということがよくありました。

 本の販売だけでは食べていけないので、文房具やしゃれたおしゃれ雑貨の販売もする。
 ちびっこたちに絵本の読み聞かせ会を定期的に開催してくれる本屋さんもあります。

 名言があります。『本は過去のことも未来のことも教えてくれる……』疑似体験ができることが本読みの楽しみです。

 こちらの本を読む楽しみのひとつがイラストの絵をながめることです。

 本屋経営は派手(はで)ではない。
 地味に息長くやっていくもの。
 長い歴史をもつ本屋がいくつか出てきます。地方に多い。
 できるならたくさんの本を置ける広いスペースがほしい。
 
 配達は、『文化』を届ける。

 おとなが満足するための絵本よりも、こどもが楽しむための絵本が売れてほしい。

 保育園では、毎朝15分、絵本の時間がある。それ以外、いつでも自由に絵本を読んでいい。
 (絵本読みは、こどもが成長してからの犯罪行為防止に役立つとわたしは思っています)
 身近に本がある環境をつくる。

 災害の被災地の本屋さんも訪ねます。『…… 人間が死ぬのは自然なことですよ』
 人は簡単に死にます。病気、事故、事件、自然災害、最近だと戦争、人のまわりには危険がいっぱいです。
(この本の240ページあたりにそんなことが書いてあります)

 本に掲載があるけれど、今現在で閉店されたお店も多い。
 時流ですからなかなか流れにはさからえません。
 
 イラストの絵はち密です。スマホで写真を撮っておいてあとから書名・作家名などを書き込んでおられるのかもしれません。そうではないにしても根気がいる作業です。

 ジュリスト:法律家。雑誌名

 全国を旅するような内容の本です。読んでいて思うことは、東北地方の人は、人生において、九州地方へ行くことはほとんどないだろう。その逆で、九州地方の人が、東北地方へ行くこともほとんどないだろう。

 傑作なページがあります。
 230ページあたりです。
 広島県に住む女子中学生の作文です。
 中学校に入学して、念願の図書委員に4人をじゃんけんで負かしてなった。
 ところが、その中学校にある図書室が開かない。
 毎日、開かない。
 図書室が、図書室として機能していない。
 (そんな学校図書室があるのかと驚いて笑ってしまいました)
 図書室を開けるところから始まるのです。
 図書室を開けたけれど、だれも来ない。
 利用客は自分だけ。
 その後、彼女はがんばります。
 『図書室愛』がさく裂します。
 中学3年間のことが書いてあります。
 おもしろかった。
 本が好きなのです。
 女子中学生の言葉で、『人ってすぐ死んじゃうんだ』と書いてあります。(本当にそうです。五十代になって同窓会名簿を見たら、同級生や先輩後輩のなかで何人もの方が亡くなっていました。今学校で、教室にいるメンバー全員が超高齢者になれるまで生きていられるわけではないのです。病気や事故、事件や自然災害、そして戦争、人間のまわりには危険がいっぱいです)
 『私の人生の目標は「やりたいことは全部やってから死ぬ」』と宣言してあります。すばらしい!
 たいしたものです。びっくりしました。今年読んで良かった一冊です。
 
 戦後からの書店の歴史経過があります。
 戦争は、文化の範囲を狭くします。
 大きな百科事典がありました。月賦払いの文学全集もありました。日本の文学とか、世界の文学とか、わたしは小学生のころ、父親に頼んで、毎月450円か500円で、『世界の文学』というシリーズの本を書店に頼んでいました。家に配達されていました。

 全国共通図書券があって、2005年に図書カードができました。

 大きな老舗(しにせ)の書店が倒産していきます。

 電子的な情報が広がります。
 「鬼滅の刃(きめつのやいば)」のことが書いてあります。
 
(つづく)

 『第九章 本屋さんの五十年』から写真のページが始まりました。昔の写真です。空犬太郎さんとう方のお名前が書いてあります。
 写真を見ながら、小学館の小学生向け雑誌を思い出しました。
 雑誌には付録が付いています。
 今年の夏は、『小学一年生』だったか、『小学0年生』だったか、どっちだったか思い出せませんが、孫たちは、付録で、『コンビニ店舗』と『ポケモンのボーリング』に夢中になっていました。
 ボーリングのほうは、紙の手づくり程度の小さなものなのですが、それを使用したボーリングゲームでかなり盛り上がりました。
 その場にいた親族5人が板の間で、紙でつくったボーリングのボールを、同じく紙でつくったポケモンのピンに向けて順番に投げて大騒ぎをして楽しみました。
 なんというか、こどもというものは、超豪華な遊び道具でなくても、楽しく遊べるものなのです。

 昭和30年代から40年代、50年代(1955年~1985年)ぐらいの写真です。
 写真をながめながら、自分もこの写真の中の世界で暮らしていたという実感がわきます。

 シュリンク:本のビニールカバー。1980年代から(昭和55年代)
 CVS:コンビニエンスストアー(本屋や雑誌の販売で流通に変化が生まれた)

 1975年(昭和50年)当時と現在を比較すると、15歳未満人口が1000万人ぐらい減っているそうです。本や雑誌を買ったり読んだりする少年や少女が減るわけです。

 スマホで育児。スマホで本読み。(絵本は絵本のままで読んだほうがいいと思います)

 345ページから『十章 本屋原論 笈入建志(おいり・けんじ)』とあります。
 『本には二種類ある。すぐに役立つ本(実用書。マニュアル本)といつか役に立つかもしれない本がある』から始まります。
 現代の特徴である、電子情報による情報の無料化についての記述があります。
 出版の仕組みを中心にして分析は続き、本屋にとっては、利潤を得るうえで不利なことがわかります。

 『本を愛する人ほど、いま世間で売れている本のみで埋め尽くされた本屋では満足できない……』とあります。ゆえに、ネットで注文するという手法になっているとわたしは考えます。
 本屋を経営するためには、『見渡す力』が必要だと強調されています。同感です。『世界の縮図を目指す』と思考されています。

 子どもさんを中心に考える。住んでいる身近に本屋があったほうがいい。マンガコミックに熱中するのは自然な育ちの法則です。

 付録部分では、本屋の一年と本屋の一日が紹介されています。

 あとがきでは、(本屋の)図鑑のような本をつくりたかったと、この本をつくった動機が語られています。
 『本屋図鑑編集部』という4人のチームでつくられた本です。

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