2023年03月05日

ポンコツ一家 にしおかすみこ

ポンコツ一家 にしおかすみこ 講談社

 先日新聞で著者のインタビューを読みました。
 しっかりものの看護師をしていた母親が『(自分の)頭をかちわって死んでやるーー』と大きな声を出していたそうです。驚きました。認知症で人格が変わってしまったようです。
 ぱっと本に目をとおして、おかあさんが認知症、お姉さんがダウン症、お父さんはお酒飲み、にしおかさんは芸人さんです。なかなかハードなものがあります。
 ダウン症:ダウン症候群。染色体が1本多い。遺伝子疾患。身体的発達の遅延。軽度の知的障害。特徴的な顔つき。
 中学のときに病気で亡くなりましたが、うちの親父もお酒飲みで苦労しました。お酒飲みの親をもつと、こどもは、ふつうなら体験しなくてもいい苦労を体験させられます。そうでない家がうらやましかった。

 にしおかファミリーです。
 お母さん:80歳。認知症で無表情。いろいろなことの管理能力なし。機械が壊れるように人間が壊れています。糖尿病があります。
 お姉さん:47歳。ダウン症。
 お父さん:81歳。酔っ払い。耳が遠い。
 著者:45歳。元SM女王さまキャラクターの芸人。独身とあります。なかなか厳しい生活環境です。

 2020年6月(令和2年)コロナ禍の日本から始まります。

 これはカオス(混沌(こんとん)無秩序。混乱)だと思った13ページです。そうしたら、17ページに著者本人が『カオス』と記していました。案外著者とは気が合うかもしれません。
 著者が知る母親は、もうこの世にはいない。人間の姿で、生きて目の前にはいるけれど、かつての母親ではない。
 14ページ、困った、困った。お母さんのセリフ「頭かち割って死んでやるーー」が出てきました。(自分だったらどうするだろうと考えました。医者だ、医者に連れて行こう。それから地域包括支援センター(ちいきほうかつしえんせんたー)に相談だ。(そうしたら、78ページに「地域包括支援センター」という文字が見えました。やっぱり考えることは同じです)
 著者は、家族との同居を選択しました。(施設入所は考えなかったのだろうか。まだわかりません。今は、16ページ付近を読んでいます)
 17ページ、ダウン症47歳の姉の行動が、読んでいて笑えます。「蛍の光」を歌います。もうどうにもならなくなったら、笑うしかありません。
 読んでいると、読み手に、うちはまだましだという気持ちになれて、救われる面があります。
 西岡家は、よく、生活を維持していけるなあと尊敬したくなりました。

(つづく)

 2020年6月(令和2年)、母を精神病院に連れて行きます。
 精神障害者が家族にいるうち(家)の同居家族の対応は大変です。
 究極のツンデレ:二面性あり。冷たくツンツンしたかと思えば、デレデレ甘えてくる。
 『糖尿病と鬱(うつ)とボケはセット』(そんなことは聞いたことがありませんが…… 認知症のお母さんの主張です)
 もうめちゃくちゃです。
 母親が、生年月日を医師にたずねられて『はい。令和2年6月……何日だったか(思い出せません)』されど、それでは 『あかちゃんばあさん』になってしまいます。笑えました。自分は、他人の立場だから笑ってすませることができます。
 まあ、芸人さんですから話の流れづくりがうまい。
 母親『(医師に)頭パカッと割って……(中身を)見せたいです。』
 医師『……後でCTも撮りますから、そしたら中も見られますよ』
 母親の口からは『頭をカチ割る』が何度も出てきます。とにかく、頭を割りたい人です。

 母親の診断が下りました。
 『初期のアルツハイマー型認知症』です。
 たいていの人は、自分が認知症になるとは思っていません。
 だけど、なる人はいます。

 ダウン症のお姉さんが、話のオチ(締め(しめ))をつくってくれます。
 「ヨヨイノヨイィィ」と踊る。
 読んでいてほっとします。騒がしい混乱がおさまります。

 思いもしないことが起こります。
 予測できません。
 母親が、電気のスイッチを入れないで、電動自転車をこいでいます。

 食材を大量に購入して、食べずに溶かしていく。(放置していると、とけてしまうのです)
 四人家族でちゃんとしているのは著者ひとりだけ。
 この先、だいじょうぶだろうか。

 お金の管理がたいへんです。

 2020年10月(令和2年)
 怖い(こわい)。恐ろしい(おそろしい)。
 母親が、自分の娘である著者は、麻薬をやっていると言い出します。

 蜂(はち)との戦いがあります。
 うちも2年前、雨戸の戸袋の下にハチが巣をつくって繁殖してしまって、ハチたちに薬剤をまきながら激しいバトルを繰り広げたことを思い出しました。
 読んでいて、その時と同じぐらいの緊張感と警戒、恐怖心、闘争の心理が湧いて(わいて)きました。

 生きている間だけ、いっしょに過ごせるのが親子です。
 会話ができるのも生きている間だけです。
 人間は歳(とし)をとると、こどもに戻っていく。
 姉が、保育園児が歌う『おべんうばこのうた』を歌う。「これっくらいの おべんとばこに……」
 
 おふろに入らない女性が増えました。
 毎日は入らないとか。シャワーだけとか。
 いいのかなあ。
 あかちゃんをどうやっておふろに入れるのだろう。心配です。
 さて、西岡家の母も姉もおふろに入っていないようすです。

 本に書かれているこの年にはやった『鬼滅の刃(きめつのやいば)』の話は、最近はあまり聞かなくなりました。『パプリカ』という歌も毎日のように流れていましたが聞かなくなりました。

 にしおかすみこさんの心は折れ、精神は切れている状態です。そうなりますわな。
 お姉さんが歌います。『すじーのとおった ふーき……』おもしろい。

 たまに正気になるお母さんからのメモ手紙があります。『……ごめんなさい! ママより』
 にしおかすみこさんは、がんばるしかありません。
 67ページまで読んで「本」っていいなと思いました。苦労している人は、応援したい。

(つづく)

 2021年1月(令和3年)、母親がどこまで正常なのかわかりません。読んでいても不安になります。母親はどういうわけか、自分が自分の次女のにしおかすみこさんを介護していると思っています。事実は逆です。
 母親からにしおかすみこさんに厳しい言葉が飛び続けます。母は、柄が悪い(がらがわるい)。『……(おまえは)死ぬまで一生独身か……』
 母親のこれまでの人生において、母親は今まで仮面をかぶっていたのだろうか。
 お母さんは家族のために尽くしたのです。SMを売りにした(サド・マゾ)芸人の次女、ダウン症の長女、耳が遠いお酒飲みの夫、母親は、いっしょうけんめいがんばって、疲れ果てて、認知症になってしまったのだと思いました。ちょっと……つらいものがあります。

 もう介護保険を活用したほうがいい状態です。
 元看護師だからいいことがあるような気がして読んでいたのですが、元看護師であるがゆえに知りすぎていて、まずいというような状況がみられます。なにかしら疑り深い(うたぐりぶかい)お母さんです。
 にしおかさんは、姉のクソにまみれ、母のゲロにまみれ、たいへんです。
 文章中に出てくる『冷凍マグロ』というのはお母さんのことで、体重が重たいのです。動かすのがたいへんです。
 
 要介護認定の判定は『要支援1』
 まあ、そんなものでしょう。
 
 たいへんですが、ただ、死んでしまうまでの時間は確実に減っていっています。
 人の一生は長いようで短い。
 お葬式で、亡くなった人をあの世へ見送るときにそう思います。
 
 94ページまできましたが、ここまで出てくるのは、お母さんの話がほとんどです。本のタイトルは『ポンコツ一家』です。父と姉はどうなったのだろう。(心配しないでください。このあとのページで出てきました)

 お父さんの意見です。「ママはぼくが嫌いなんだ」と主張します。なにかしら頼りないパパです。

 まるで、ゾンビ映画を観ているような、にしおか家(け)の夜中の家の中です。怖い(こわい)。たいへん。つらい。

(つづく)
 
 お話の構成がおもしろい。
 さすがお笑い芸人さんです。うまい。
 ダウン症のお姉さんの言葉がおもしろい。
 48歳になる姉の誕生日に
 妹著者『おめでとう。いくつになったの?』
 姉『永遠のハタチ~』
 笑いました。

 認知症のお母さん80歳も強烈です。
 『……ハゲた医者にハゲを治せるわけがない!(皮膚科にて)』

 ダウン症の長女をとても愛している母親です。

 なんというか、底辺の暮らしです。
 逆にほっとする人もいるでしょう。うちはまだましだと。
 読んでいて思ったことです。
 まず心身の健康が大事。健康が幸せの基礎。

 ダウン症の姉の存在は、負担ではあるけれど、いないと成立しない家族の一員です。

 ひとつひとつの項目が『小噺(こばなし)』のように書いてあります。落語のようであったり、ショートコントであったりです。されど、当事者は深刻です。
 お酒飲みの『パパ』のことは『パパクソ』と呼びます。
 お母さんの頭の中は壊れています。勘違いによる薬の複数過剰摂取があります。誤飲です。
 あれやこれやと読んでいると悲しくなってきます。自分の次女(にしおかすみこさん)の存在を認識できなくなった母親がいます。
 大丈夫だろうか。介護をしている人間のほうが、うつ病になりそうです。

 四人で線香花火をするシーンが出てきました。
 さだまさしさんの『帰去来(ききょらい)』というLPレコードにある『線香花火』という物悲しい歌が思い出されました。
 47歳ダウン症の姉『(妹の名前)すみちゃん、おもいでだねぇ』
 母親は線香花火10本ほどの束に火をつけます。線香花火の状態ではありません。火の玉状態です。
 母親は、自分が死んでもダウン症の長女を施設には入れないでくれというようなことを次女の著者に言います。

 十二支(じゅうにし)の干支(えと)に『サソリ座』をさがす母親です。(サソリ座は「えと」にありません)
 『土曜日の次は日曜日』で盛り上がっているダウン症の姉と認知症の母です。
 何もかもが壊れている。ここから(この位置から)始まるものがあるような気がしました。
 
 敵愾心(てきがいしん):相手に対して憤りを(いきどおり。怒り(いかり))を感じ、あくまで戦おうという気持ち。
 ケンタウロス:ギリシャ神話にでてくる下半身が馬、上半身が人間の種族。

 考えられないことが起きるのが西岡家の日常です。
 お米の重複購入をしそうだという話が出てきます。
 母親が、同じ要望を複数の家族にするためです。各自が同じくお米を買いに行きます。

 親子でご飯を食べる。
 おいしいものを食べるということは、心の交流を図るうえで大事です。

 172ページまで読んできて、人間って何なのだろうなあという気持ちになりました。
 お花に言葉をかける母親がいます。時には優しくなって、時にはおかしくなってしまう母親です。

 下着姿のままのようなかっこうで、外へ散歩に出て行こうとする80歳の母親です。夏だから、暑いからということがその理由です。もし、下着姿で、外で倒れて死んでいても事件じゃないからと言われても身内は困ります。

 母親の頭の中は、ダウン症の長女中心で回っていることがよくわかる本の内容です。
 お酒飲みの父も認知症予備軍ではなかろうか。アルコールの飲み過ぎです。

 生活費を得るために家族のことを書く。
 まずは生活費を稼がねば生活が始まりません。

 著者あとがきの手前の最後のページまできて思ったことです。(186ページ)
 ウチはウチでこんなウチ(家。いえ)であることを恥ずかしい(はずかしい)と思うことはないのです。
 そんなふうに、この本の内容を受け止めました。

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