2021年06月22日

日本独立 邦画DVD

日本独立(にほんどくりつ) 邦画DVD 2020年公開

 観るほうに、白洲次郎(しらす・じろう)さんのことと、第二次世界大戦終戦時の歴史知識の下地がないと、観ていても、わかりにくい映画でしょう。

 白洲次郎(しらす・じろう):1902年(明治35年)-1985年(昭和60年)83歳没 実業家 吉田茂氏の側近。英国ケンブリッジ大学卒業
 白洲正子:1910年(明治43年)-1998年(平成10年)88歳没 白洲次郎氏の妻。随筆家
 吉田茂:1878年(明治11年)-1967年(昭和42年)89歳没 政治家 外交官 内閣総理大臣 外務大臣
 松本丞治(まつもと・じょうじ):1877年(明治10年)-1954年(昭和29年)76歳没 商法学者 法学博士 国務大臣
 近衛文麿(このえ・ふみまろ):1891年(明治24年)-1945年(昭和20年)54歳没 服毒による自死 政治家 内閣総理大臣
 幣原喜重郎(しではら・きじゅうろう):1872年(明治5年)-1951年(昭和26年)78歳没 外交官 政治家 外務大臣 内閣総理大臣
 東条英機:1884年(明治17年)-1948年(昭和23年)64歳没 昭和20年9月拳銃自殺未遂 昭和23年死刑執行 陸軍軍人 内閣総理大臣
 他の戦争犯罪者として処刑された人たち。主に東条英機内閣当時の大臣職:板垣征四郎(陸軍大将。満州事変を決行) 木村兵太郎(陸軍大将) 土肥原賢二(どひはら・けんじ。陸軍大将) 武藤章(陸軍中将) 松井石根(陸軍大将) 広田弘毅(内閣総理大臣)

 ダグラス・マッカーサー氏の姿があります。1880年(明治13年)-1964年(昭和39年)84歳没 連合国軍最高司令官(連合国軍最高司令官j総司令部)GHQ  General Headquarters, the Supreme Commander for the Allied Powers)
 勝負事は負けるとみじめです。
 1945年7月26日(昭和20年)ポツダム宣言。ベルリン郊外ポツダムにて。第二次世界大戦における日本への降伏要求の最終宣言。米英中三国共同宣言。のちにソビエト連邦が追認。
 第二次世界大戦の戦後処理についての話し合い。同年9月2日東京湾内に停泊中の米戦艦ミズーリの甲板で降伏文書(休戦協定)に調印した。
 戦争終結。主権と領土の範囲。戦争犯罪人の処罰。民主主義的傾向の復活強化。言論、宗教、思想の自由、基本的人権の尊重を確立する。
 戦後の日本は、すごい勢いで変化をしていきます。財閥解体、農地解放、教育改革、選挙制度改革、そして、象徴天皇、新憲法制定に伴う戦争放棄がこの映画の題材です。

 白黒映像が混じります。歴史の記録映画の面があります。若い頃、映画館で「東京裁判」というとても長時間の白黒映画を観たことがあります。ちんぷんかんぷんでした。その映画にあったような映像がこの映画に流れます。
 
 藁葺き屋根(わらぶきやね)の大きな木造日本家屋は懐かしい。広い縁側があります。こどものころ、そういう家屋で暮らしていたことがあります。
 
 米国の日本占領政策の基本です。戦争責任は、日本軍上層部にいた軍国主義者のせいにする。日本国民は被害者扱いをする。
 
 コスモポリタン:国際人。世界的視野と行動力を持つ人。国籍、民族にこだわらない。

 戦勝国が敗戦国の憲法をつくる作業です。(なおかつ米国が日本国憲法の作成に関与したことは秘密にしなければならないのです。公表してはなりませんとあります。日本人のみで日本国憲法をつくったことにするのです)
 日本に関して不利な条件設定に、イギリスへの留学歴があり英語に堪能な白洲次郎氏が通訳の立場と国の職員の立場で、自身の考えも織り込みながら日本を管理する米国人集団に切り込んでいきます。
 日本人の憲法をアメリカ人たちがつくる。なにかしらさびしい。これが戦争で負けるということなのか。

 戦艦大和(やまと)が出てきます。若い頃アニメがあって、そのときは、ヤマトは、勇猛果敢に敵に向かって行ったけれど悲劇的に破れていったヒーローだと思っていました。それから何十年か経って読んだ小説の文章に、やまとは「大和ホテル」だった。日本軍の幹部をもてなすために上等な料理や音楽がふるまわれていたと書いてあり、かなりショックを受けました。それが事実かどうかはわかりませんが、相手の言うことをうのみ(まるのみ)にしてはいけないという教訓にはなりました。

 ふーっ。この映画もタバコ映画なのか。くさい煙がイヤな非喫煙者にとっては、喫煙シーンを観るのは不快です。日本映画界はタバコ業界からなにかもらっているのだろうか。これがアニメ日本映画にかなわない理由のひとつではなかろうか。日本映画は始まる前から、観てイヤな気持ちになるかもしれないと思って観始めることが多い。

 デリケートな問題提示があります。確かに、武力をもたない独立国家は生存できません。代わりに米国軍隊に滞在してもらい日本を守ってもらう話が出ます。そのことに対して声があります。『これは永久平和ではなく、(米国への)永久従属になる』

 歴史を深く考えるいい映画でした。

 「かんきんされて、むりやりやったら、あいのこがうまれた」憲法案が完成した時の白洲次郎氏のセリフです。

 屈辱(くつじょく。相手の力に屈服させられたくやしさ)があります。
 「日本人は素直だからねぇ」の米国側のセリフがあります。

 ラストシーンは、太平洋の大海原が広がる海岸です。
 海は広いなあ。すがすがしい。


(2012年9月のときの読書メモから)
風の男 白洲次郎(しらす・じろう) 青柳恵介 新潮文庫
 わたしは標題の方を存じあげません。本関係のホームページを巡っていて何度か見かけたことがありました。今回書店で本が目に留まったので読み始めました。伝記でしょうか。魅力的な個性の人のようです。昭和60年に亡くなっています。経済界の重鎮のように認識しました。
 わたしがまだ生まれる前のお話です。戦後の新しい日本を築くことを目的として吉田茂首相の側近にいた重要人物という位置づけです。わたしにとっては、夢のようなお話ばかりです。親御さんは資産家、中学校卒業後は英国へ行き長い間同国で学び過ごした。奥さんの育ちも夢のようです。やはり、結婚は似たものどうしがいいと変なところで思い知らされました。
 白洲氏の信条として紹介されている「自分で見て、自分の頭で考えて、自分が責任をとる」、ともすれば、だれしもが、「力の強いと思われる他人にやらせて、その人に責任をとってもらう」となりがちです。その信条は英国式でしょうか、いいえ本人の気質でしょう。
 資産家のこどもに生まれると大変なのだなと感じつつ、うらやましくもあります。幹部候補生としての教育を受ける、帝王学を学ぶ、留学、外遊、土地とお金に恵まれる。
 夫婦円満の秘訣にはほほえみました。「一緒にいないことだよ」
 戦後新憲法制定の緊張感が伝わってきます。”天皇制の廃止”を決断する。戦後生まれのわたしは、今までそのことの重大さを感じたことがありませんでした。
 この本を読んでいた同時期に山下清氏の放浪物語を読んでいました。ふたりとも同じ時代に、かたや新憲法の制定に取り組み、もう一方は日本を放浪して美しい日本の情景を絵にして残していった。人はそれぞれ自分の生まれ持った使命を自分の与えられた世界で果たしてゆくのだと悟りました。
 白洲氏は頑固である反面、非常に柔軟であることが不思議でした。人間は社会環境の変化に応じて変化していくべきであるという記述を読んだときです。ケースバイケースでしょうか。
 この本は全体として、「戦後日本の礎(いしづえ)を築いてきた人たち」の記録です。以前読んだ北朝鮮から開放されたジェンキンスさんの「告白」に似ている。白洲氏とジェンキンスさんの相手に対する姿勢が似ています。ふたりともに英国魂が宿っているのでしょか。ただジェンキンス氏はアメリカ人ですが、根っこ(ルーツ)は英国かもしれません。
 198ページあたりからの彼の語録には凄みがあります。教育は伝承されていくものです。こういう生き方を白洲氏はだれに教わったのだろう。今続けて、本人の記述を集めた「プリンシプルのない日本」という本を読み始めました。プリンシプル=信念でいいと思いますが…


プリンシプルのない日本 白洲次郎 新潮文庫
 「プリンシプル principle」 著者本人が記した言葉ですが、文中で本人はどう訳せばいいのかわからないと言明しています。「原則」だろうかという解釈になっています。
 40ページ、吉田茂首相を指して「昔の人」という表現が不思議です。これが書かれたのは1951年(昭和26年)です。現代人が「昔の人」という表現をすることには何の疑問もないのですが、この不思議さは何でしょうか。いつの時代も「今」を基準にすると高齢者は「昔の人」になるのでしょう。
 著者の文章からは「怒り」が伝わってきてその迫力に圧倒されます。読者としてうなずくこともあるし、うつむきたくなる彼の主張もあります。先日インターネットの番組で見た台湾人年配女性の言葉がよみがえってきました。「台湾は日本人から多大な恩恵をいただいた。いま、日本人は変わってしまった。元に戻ってほしい。昔の日本人は、まじめで勤勉、そして義理堅かった。」サッカー日本代表元監督オシム氏も同じことを言っていました。「日本人は日本人になってほしい」
 文章のほとんどは命令口調で威圧感がありますが、もう1冊の「風の男白洲次郎」青柳恵介著を読んだあとなので、著者はごく普通の人だと思います。あたりまえのことをあたりまえにやりましょうと呼びかけておられると思います。彼の考えの背景には、正直者が馬鹿をみる世の中にしてはいけませんという正義感があります。若者に対する教育に情熱がある人です。
 124ページ、母について語るは感動的です。おじいちゃんの説教を聞いている孫のような気持ちで読み続けています。
 アメリカがつくって押付けた日本の憲法は改正すべきである、自衛隊は必要である、防衛能力をもたない国家の存在はありえない、参議院は必要が無い、政党は協力して連立政権をひとつつくればよい、効率的な経済をめざす、そういった主張のひとつひとつが現代の社会状況にも通じます。
 230ページ、日本はイジメ社会。これは1969年に書かれています。人間社会からイジメを除去することはできないのではないか。そのたびごとに退避、あるいは抗戦するしかないのでしょう。人間の営みには無益なことです。
 240ページ、日本国憲法において、天皇は象徴。英文で書かれた憲法案を訳したときの状況が書かれています。訳し方がわからなかった。英文の意味がとれなかった。その結果「象徴」と訳した作業は意外に軽易な行為でした。
 最後に3人の対談が掲載されています。著者と今日出海(こん・ひでみ)氏、河上徹太郎氏。いずれもすでに他界されています。それだけに対談は天国で行われているように感じながら読みました。

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