2021年06月04日

オランウータンに会いたい 久世濃子

オランウータンに会いたい 久世濃子(くぜ・のうこ) あかね書房

 オランウータン(森の人):生息地は、ボルネオ島(インドネシア国(インドネシアではカリマン島と呼ぶ)とマレーシア国、ブルネイ・ダルサラーム国に属する。4095mのキナバル山があり、赤道直下の山だが、標高が高いところでは雪が降ることもある。低地は熱帯雨林地帯。温度・湿度が高い。平均気温28℃。年間降水量3000mm。日本は1000mm~2000mm。日本から飛行機で6時間)、スマトラ島北部(インドネシア)
 スマトラ島の東にボルネオ島があります。いずれも赤道(緯度0度)直下の島です。
 動物は夜行性が多いのですが、オランウータンは「昼行性霊長類(ちゅうこうせいれいちょうるい)で唯一の単独性(ゆいいつのたんどくせい。ふつうは、複数性(群れをつくる))だそうで、調査時間帯は、朝の7時から11時と午後3時から5時と書いてありました。

 カバーの写真にあるオランウータンはかわいい。
 表紙をめくるとオランウータンがいる場所の略図があります。
 「イチジクの木」日本にあるイチジクが、そこにもあるのかとびっくりしました。あとからイチジクコバチという繁殖に必要なハチのことも出できました。
 「マレーグマ」最初は絵を見て、動物園にいるレッサーパンダと間違えました。
 「ウンピョウ」ヒョウの仲間。サルを食べる。オランウータンも襲うことがある。
 「オオコンニャク」サトイモ科の植物

 あかちゃんとおかあさんのオランウータンの写真がつづきます。
 熱帯雨林のジャングルです。衣食住について考えてしまいます。とくにおトイレのことを考えてしまいます。

 オランウータンはやがて絶滅してしまうそうです。第六章に理由が書いてあるようです。

 オランウータンは「のどぶくろ」を使って「ロングコール」をするとあります。「フクロテナガザル」を思い出しました。おもしろいけれど、とてもうるさいです。
 オランウータンは、腕が足よりも長いそうです。腕も足も物をつかめるようで器用な体をしています。(からだをじょうずにつかえる)

 先日読んだ本「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」ムンディ先生こと山﨑圭一 SBクリエイティブでは、人間の進化の経過を、アウストラロピテクス→北京原人・ジャワ原人→ネアンデルタール人→クロマニョン人と紹介されていました。
 ゴリラの話が出ます。イケメンゴリラの「シャバーニ」を思い出しました。年に何回か観に行きます。
 チンパンジーやゴリラは、アフリカで生れアフリカで生きた。オランウータンは、アフリカで生れアジアに移動した。そんなことが書いてあります。

 オランウータン研究家の著者自身のことが書いてあります。大学の研究者ですから学者さんです。こどものころから本読みが好きだったそうです。そういえば、「シートン動物記」とか「ファーブル昆虫記」というこどもさん向けの本もありました。

 エコツーリズム:自然環境保護を考える旅行
 
 学者になるための本の要素があります。
 利潤の追求をするサラリーマンとはまた違った世界です。
 経済的な後ろ盾がないとなかなかできない仕事です。
 わたしはおとななので、そういうことを考えてしまいます。
 
 東京都多摩動物公園:著者が大学院生のとき、8頭のオランウータンがいたそうです。メス6頭、オス2頭。一番年上のおばあちゃんが「ジプシー」4頭の娘を産んだそうです。

 オランウータンの特徴として「動かない」
 オランウータンの別名として「森の哲人(哲学者)」

 地球は狭い。若い頃は、飛行機に6時間乗るのは長いと感じていましたが、24時間以内で世界の各地に行けるなら地球は狭いと歳をとってきてからわかるようになりました。時間はあっという間に過ぎていきます。

 著者がボルネオ島を初めて訪れたのは1998年だそうですから今から23年ぐらい前のことです。
 著者が現地の施設「セピロク・オランウータン・リハビリテーションセンター(傷ついたオランウータンを野生に戻すための野生復帰センター)」で初めて出会ったオランウータンが、幼稚園児ぐらいの大きさの「セコ」です。右足に抱きつかれて、長ぐつのなかにおしっこをされています。歓迎の意味だったのでしょう。
 また、わたしはおとななので、センターの管理運営費はどうなっているのだろうかなどと考えてしまうのです。国営なのだろうかとか、財団法人で運営だろうかとか、運営資金の出どころはどこだろうかとか、寄付があるのだろうかとか、人件費の支払いはどうしているのだろうかとか、そういうことを考えるいやなおとなです。(読み続けていたら163ページあたりからそのことについて書いてありました)
 (自分にかすかな記憶が残っていて、調べたら、テレビ番組「東野・岡村の旅猿」でセピロク・オランウータン・リハビリテーションセンターが登場していました。マレーシアでオランウータンを撮ろう!という企画でした。ゲストは出川哲朗さんでした。2015年の放送で、わたしはDVDで観ました。メンバー三人は野生のサルたちをまじかで観てかなり感激されていました。別の話として、センターがある場所は、日本文学作品「サンダカン八番娼館」(さんだかんはちばんしょうかん。山崎朋子作品に登場する女性が熊本県の島から行ったところで、しみじみとくるものがありました。)

 ダナムバレイ保護区にある調査基地「クアラ・スンガイ・ダナム・リサーチステーション」(書中では小屋)
 バレイ=英語で谷間、盆地、流域
 

 著者はボルネオ島をベースにして生活することを選択します。若い時には自分がやりたいことをやったほうがいいです。とくに親の顔色はうかがわないほうがいい。(気にしないほうがいい)
 密林の中でオランウータンを探すポイントとして「においを追え!」とあります。
 オランウータンを発見! 母の名が「リナ」娘の名が「ケイト(5歳)」
 
 全体で177ページあるうちの96ページまで読んだところです。
 かなり専門性が高い。
 オランウータンを研究する目的がはっきりしないのですが、オランウータンを初めてとした類人猿に作者の興味が強いということは伝わってきます。
 
 オランウータンのネスト:ネストは英語で「巣」オランウータンだと、「家」とか「寝床」の感じです。

 なんだかオランウータンは長時間寝ていて(12時間+昼寝時間)、あとは食べている。
 昼行性とかよく寝るとか、なんとなく人間に似ています。
 読んでいるとあとから出てくるのですが、オランウータンはイチジクが好物だそうです。イチジクはアケビに似ており、自分が小学生の頃は、近所のこどもたちと山に入って、木に登って、アケビをとって食べていました。なんだかやっぱり、人間とオランウータンはやることが似ています。

 研究は科学的です。糞を(ふんを)集めて、DNAを調べる(DNA:デオキシリボ核酸(かくさん)遺伝情報に関係がある物質。親子関係がわかる)

 スパトロブス:マメ科の木性(もくせい)ツルとあります。ネットで写真を見ました。ふつうの葉っぱでした。赤色の若葉から緑色に変化して、オランウータンは赤い葉っぱを好んで食べるそうです。
 サイチョウ:鳥。黄色いくちばしの上に黄色で長いツノがある。
 
 ピオ:著者の調査助手。たぶん女性。正しい名前は「エディ・ボーイ」。ピオは通称だそうです。(あとがきから)

 スコール:急に来て、短時間にシャワーのように強い雨が降る。熱帯でのにわか雨

 マレー語として、
 ボアッ・サラン:ネストをつくった(オランウータンが寝床をつくった)10分ぐらいでできあるようです。
 ハビス:終り
 
 トレイル:森の中で歩くきちんとした道のこと。森の中を歩くときのやぶの中ではない。
 
 森には毒ヘビがたくさんいるそうです。こわい。キングコブラ、ブラックコブラ、ヨロイハブ…… 名前を聞いただけでおそろしくなります。
 毒ヘビに噛まれたら、その毒ヘビを捕まえて殺して、医師に見せて、どのお薬にするか決めるそうです。わたしはとてもそこへは行けそうにありません。
 ほかにも、吸血ヒルがいるそうです。ダニもやっかいだそうです。さらに行く気が失せました(うせました)。
 アリもこわいそうです。ヒアリというのは以前日本で騒ぎになりました。ほかにも、軍隊アリ、モリオオアリなるアリがいるそうです。
 「アナフィラキシー」という言葉は、コロナウィルスワクチンの話題で最近よく耳にする言葉です。この本では、ハチに刺されて、アレルギー反応が出て、窒息する危険があるそうです。いざというときに備えて、薬と注射器を持参して調査しているそうです。「ポイズン・リムーバー」という毒液を吸い出す器具の写真が掲載されています。なんだか、命がけの調査です。
 植物も、ふれるとかぶれるものがあるそうで、これはたいへんです。ふれたところが腫れる(はれる)そうです。

 「深追い(ふかおい)」は注意といういましめがあります。暗くなって、ジャングルの中で迷ったことがあるそうです。

 バナナのお話が出ます。原産地がボルネオ島だそうです。
 オランウータンもバナナが大好きです。わたしも毎日1本食べています。安いのがいい。半世紀ぐらい前は、バナナは高価で高級品でした。なかなか口にできませんでした。いつだったか、外国では家畜の餌だという記事を読んでショックを受けたことがあります。

 ドリアン:匂い(におい)が強烈に臭いけれどとてもおいしいとされています。もう30年ぐらい前に一度だけほんの少しだけ食べたことがありますが、もう匂いも味も覚えていません。「果物(くだもの)の王様」というらしい。
 マンゴスチン:「果物の女王」というらしい。白い果肉
 ランブータン:赤色で毛が生えたように見える。
 コンドロン:調べましたがどんな果実なのかわかりませんでした。コンドロイチンという物質と関係があるようです。
 熱帯雨林の中では、毎年果実ができるわけではなくて、10年に1回とか、2~3年に1回の頻度で(ひんどで)できるそうです。市場に流通しているものは、農園で育てられたものだそうです。
 オオタニワタリ:シダ。葉っぱの長い観葉植物に見えます。着生植物(ちゃくせいしょくぶつ):土ではなく、木の上とか岩の上に根を張る。

 読んでいると、オランウータンの調査とはいえ、人間が場違いな場所にいるような気がしてきます。いいのだろうか。
 案外オランウータンの天敵は「人間」ではなかろうか。
 オランウータンは、いつも木の上にいて、地面におりることはほとんどないそうです。地上にはオランウータンにとってこわいものがたくさんあるからでしょう。だけど、死んだときには木から落ちてくるような気がします。

 ギボン:テナガザル。腕渡り(ブラキエーション)木から木へと腕だけで移動していく。

 オランウータンのメスが、オスの半分しか大きくならないことは不思議でした。体重が40kgと80kgです。そのうちオスは、「フランジ・オス(顔がでかい)ケンカをする。繁殖に強い」と「アンフランジ・オス(顔がちいさい)ケンカはしない。繁殖に弱い」に別れるそうです。
 スマトラ島産のオランウータンは、毛が長めでオレンジ色。島にはたくさんの火山がある。スマトラオランウータンとタパヌリオランウータンがいる。アリやシロアリなどの昆虫をよく食べる。スローロリス(小さなおさるさんみたいに見えます)を食べる肉食。
 ボルネオ島産のオランウータンは、毛は短めで濃い茶色。島には火山がない。ボルネオオランウータン
 
 シベット:ジャコウネコ。体がほっそりとした動物

 スマトラ島にはトラがいて、トラはオランウータンを襲う。こわい。

 単独性の強いオランウータンは、読んでいると、人間ならば、おひとりさまの老後の暮らしに似ていると感じます。

 ホモ・サピエンスが誕生したのは、20~30万年前。そのほとんどを「狩猟採集生活」をしながら、獲物がいななれば移動する暮らしだったそうです。「助け合いと平等」で、リーダーはいないけれど、ケンカもめったにない。とってきた獲物(えもの)はみんなで分けて食べる。
 定住生活ができるようになった農業が始まったのは1万年前ぐらいだそうです。集落ができて、村ができて、川から水田に水をひく灌漑(かんがい)という作業をして、土地には所有者がいて、べつに耕す人がいてとだんだん平等がくずれていきます。支配する者とされる者の誕生です。

 スマトラ島のオランウータンの食文化があります。
 ネイシア:ドリアンのなかまを、スマトラ島のオランウータンは、細い小枝を道具として使用して種を食べる文化があるそうです。
 文化を伝えるためには「群れること」「(物まねを)許すこと」が必要だそうです。
 もうひとつが、イノベーター:発明者の誕生です。人間の真似をするそうです。
 
 オランウータンのメスは、15歳ぐらいで初めてのこどもを産む。以降、7年おきにこどもを産み続ける。平均寿命は60歳ぐらい。あかちゃんは、1500gぐらいで生まれる。人間のあかちゃんの半分ぐらいです。
 オランウータンの子育ては、読んでいると、どちらかといえば「放任(ほうにん。こどものやりたいようにしておく)」です。オスはいっさい子育てはしないそうです。いろんな子育てがありますが、通常、親が子を育てるときは、自分が親に育てられたようにしか育てられないものだと気づいたことがあります。それは、各家庭で異なっており、夫婦はこうあらねばならないとか、親子はこうあらねばならないとか、家族はこうあらねばならないとかを考えるとゆきづまることが多いです。結局、生きていればいいんだというところにたどりつきます。自殺をされるのは、残された者にとってはかなりつらい。話が脱線してしまいました。オランウータンの場合は、トラやウンピョウに襲われたり、伝染する病気にかかったりして命を落とすことがあるそうです。
 本では、人の赤ちゃんの説明があります。自分でも思うに、こどもの死亡率が低くなったり、日本人全体の寿命が延びたりしたのは、大昔からのことではなく、終戦後ぐらいからです。戦後75年ぐらいがたちました。本では、「赤ちゃんが死なない社会」をつくったのがオランウータンで「少産少死社会」の大先輩と讃えて(たたえて)おられます。
 次に、オランウータンの場合は、ママ友みたいな存在があるとことを説明しておられます。
 いろいろ読んでいると、オランウータンも人間もおんなじだなと思えることもあります。

 オランウータンの絶滅について書いてあります。
 地球温暖化の気候変動とか、農業のために動物が生息している森をつぶして畑にしたとかです。動物は居場所がなくなりその数を減らしていきました。動物が住む場所も食べ物もありません。
 国際自然保護連合:1948年創設。国、政府、NGO(非政府組織)が組織する自然保護団体。本部はスイスにある。
 ボルネオ島やスマトラ島の森林が伐採されて、日本ではラワンという建築資材で大量の木材を輸入した。
 読んでいると「だれかの幸せは、だれかの犠牲(ぎせい)のうえにある」と思えてきます。
 さらに、「大多数の幸せのために、特定少数が犠牲になるのはやむを得ないとか、しかたがない。これは、必要な犠牲者だ」という発想まで生まれてきます。人間とはこわい生き物です。リーダーの立場に立つ人がそのように考えると戦争が起こります。

 オイルパーム:アブラヤシの果実からつくられる油として、パーム油。食用油。食べ物の原料。燃料にもなる。パーム油をつくるための農園をつくるために森が伐採(ばっさい)されていくそうです。森がなくなれば動物は食べるものがなくなって死滅します。日本の加工食品にも多用されているそうですので、こんど商品の説明書きを読んでみます。

 オランウータンを食用とするということは初めて聞きました。ちょっとキモイ。
 先住民族の「首狩り」も出てきました。人間の首です。オランウータンの首も対象になったとのことです。
 おそろしいけれど「生活」のため。生きるためなのでしょう。

 ペットにされるオランウータンの赤ちゃんがいるそうです。密猟です。法令等を無視して動物を狩ることです。お金のための行為です。
 読んでいると「経済と命」について考えます。お金が大事か、命が大事かです。通常は命が大事だと思う人が多いのでしょうが、なかには、命よりもお金のほうが大事だという人もいます。そういう人がリーダーになると、死ななくても良かった人が死んでしまったということになります。
 バランスをとることがとても難しい課題です。

 マレーシアやインドネシアの人で、オランウータンを見たことがない人がけっこういるそうです。へーっです。びっくりしました。野生のオランウータンはなかなか見ることができないだろうし、動物園も数が少ないそうです。日本人はいろいろと恵まれています。

 本を読んだことがきっかけになって、熱帯林伐採(ばっさい。切り倒し)の関係で、2020東京オリンピックの施設建設で使用される木材をインドネシアやマレーシアの島々で日本が大量伐採することはやめてくださいという声が現地や環境保護団体にあったことを知りました。
 競技場等は完成して、おそらく日本の木材を中心に使用したとは思いますが、事実はよく知りません。新国立競技場が、大量の木材を使用したことがいいこととしてアピールされていた記事は見たことがあります。

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