2021年05月13日

そのときがくるくる 作・すずきみえ 絵・くすはら順子

そのときがくるくる 作・すずきみえ 絵・くすはら順子 文研出版

 「そのとき」とは、どんなときなのでしょう。そんな疑問をもちながら読み始めます。
 最初のページに、野菜のおなすの絵が描いてあります。
 出だしがおもしろい。『けさは、ぐじゅぐじゅしたやつに おいかけられて、のみこまれちゃうゆめで、目が さめた』おばけのお話でしょうか。
 主人公は、たくま。小学一年生で、もうすぐ夏休みが始まるそうです。
 たくま:食べ物で、なすがにがてです。学校は大好きです。
 まい:クラスメート。なすが食べられないたくまを心配してくれます。にがてなものは、かぼちゃです。
 さき:クラスメート。さきも、なすがきらいです。
 けんご:クラスメート。なすは好きです。
 りょう:クラスメート。体も声も大きいらんぼうもの。ちょっとこわい。だけど、りょうも、なすがにがてです。
 たくまは、なすが、にがいといいます。にがいかなあ。
 たくまとりょうは、給食に出たなすを食べることができなくて、いつまでたっても食事が終わりません。
 そこの部分を読みながら自分が小学二年生ぐらいだったころを思い出しました。おみそ汁の中に入っているワカメがにがてでした。
 給食時間中に食べることができなくて、給食時間のあとも、もうひとりのワカメがにがてな男の子と黒板の前で正座をさせられて、涙をにじませながらワカメを食べようとしていました。
 ワカメのぬるぬるした感触が嫌でした。食べ物を残すと、もったいないとしかられる時代でした。でもやっぱりふたりとも、ワカメをのみこむことができませんでした。体罰には、はんたいです。できないことはできないのです。
 そのときは、ワカメを食べることがにがてでしたが、今はにがてではありません。いつから、にがてじゃなくなったのかは覚えていません。
 それから、給食に出る「チーズ」もにがてでした。せっけんを食べているような味がしていやでした。それでも体が成長するにつれて、チーズも、にがてではなくなりました。チーズケーキも食べることができます。チーズをおいしいと感じることができるようになりました。
 この本のタイトル「そのとき」というのは、そういうときのことをいいます。いまは、できなくてもだいじょうぶなのです。しぜんに、できるようになるときがきます。

 たくまくんのおじいちゃんとおばあちゃんが、たくまくんに、「そのとき」がくることを教えてくれます。
 『いまはきらいでも、おいしく思えるときがくる』
 たくまくんは、おじいちゃんたちといっしょに野菜をつくる世話をします。なすやきゅうりを収穫します。
 年配の人たちは、こどものころに農作業の体験をしたことがある人が多い。日本人の大半は、昔は農家をしていました。祖先をさかのぼれば、農業の家系につながる人が多い。
 39ページにある野菜の絵がきれいです。なす、プチトマト、とうもろこし、きゅうり、左下の絵がなにかわかりにくいのですが、ピーマンのような気がします。どれもおいしそうです。とくに、とうもろこしがおいしそうです。
 夏休みなので、おじいちゃんとおばあちゃんの家に遊びに行ったたくまくんです。よるごはんのときに、れんこんも出ました。てんぷら、サラダ、いためもの。新鮮野菜のごちそうです。
 おばあちゃんは子どものころ、おさしみがにがてだったそうです。いとこのみっちゃんがおいしそうに食べるのを見て、自分も食べられるようになったそうです。
 おじいちゃんも昔は、なすがきらいだったそうです。もしかしたら、たくまが、なすがきらいなのはおじいちゃんからの遺伝かもしれません。
 おじいちゃんは、おばあちゃんと結婚して、おばあちゃんがはりきって、なす料理をつくってくれたので、いつのまにか、なすがおいしいと思えるようになったそうです。
 たくまのまわりにいる人たちが、やさしくたくまを見守ってくれています。まわりにいる人たちは、たくまにとっての財産です。

 パパやママはあまり出てこない物語でした。むかしむかしで始まる物語もそうです。パパやママは仕事で忙しいので、じじやばばが孫の子守りをしていました。
 こどもさんのすこやかな成長を願う、心優しい物語でした。

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