2021年04月27日

まんげつのよるに 木村裕一・作 あべ弘士・絵

まんげつのよるに 木村裕一・作 あべ弘士・絵 講談社

 シリーズ「あらしのよるに」の第7話でこれが最終話です。
 第6話で雪崩に飲み込まれたオオカミのガブはどうなったのか心配です。
 ガブは物語の主人公ですから必ず生きているはずです。
 ほら生きていました。よかった。
 えッ?! なんとそれはヤギのメイの夢でした。

 二匹の思い出の回想が続きます。
 
 「命」について考える物語です。

 そして「満月」へのこだわりがあります。
 そういえば先日読んだ「はてしない物語」」ミヒャエル・エンデ作品でも月にこだわる部分がありました。なぜ、こども文学作品の創作者たちは「月」にこだわるのだろう。月に引き寄せられる魅力があるのでしょう。

 さて、ヤギのメイのともだちの相方であるオオカミのガブはどうなったのか。

 失礼ながら、ページをめくったときに、ブタの絵と見えました。ブタではなく、ヤギのメイでした。よーくみるとやっぱりヤギで、生き生きとした絵でした。衝撃があってなかなかいい絵です。

 生きていなければいけません。死んではだめです。本には「いきて はたさなければ ならない やくそくが あるかのように。」と書いてあります。

 オオカミが出てきたのですがようすが変です。どうしたんだ。現れたオオカミは、ガブではないのか。
 ガブは、雪崩に巻き込まれて頭を打って、これまでの記憶を失ってしまったのですね。
 そうか…… すごい展開になってきました。ガブがメイを食べてしまいそうです。「だまれ、おまえは ただのえさなんだよ。」と書いてあります。ヤギのメイを救わねばなりません。

 なんだか、人間の男と女みたいです。ガブはDV男になってしまったのか。

 メイは、ガブに食べられて、ガブの体の中で存在するという結末なのか。むかしそんなふうな小説を読みました。クローン人間の話で「私の中のあなた」ジョディ・ピコー作、早川書房でした。

 そしてお話は「あらしのよるに」戻ります。物語の最後は最初に戻ることが基本のひとつです。

 あの日あの時あの場所で、あなたという人と出会わなければ、こんな不幸な境遇には、ならずにすんだのにと考えるのか、あるいは、それでもあれはあれで自分にとってはいい思い出なのですとふりかえるのか。
 幸せというものの選択肢が目の前にあります。何が幸せなのかは、自分の気持ちの持ちよう次第という結論に達するのですが、まとめると、人それぞれの感じ方ということで終わります。
 気が合う人というのはなかなか見つからないものです。
 よかった言葉として「ここまで きたら いく ところまで いってみますか。」
 感動的な終わり方でした。一本の映画を観終えたような感覚が心に広がりました。今年読んでよかった一冊でした。

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