2021年01月09日
(再読)変身 カフカ
(再読)変身 カフカ 新潮文庫
二十代のころに読んだことがあります。朝起きたら昆虫の体になっていた。最後まで昆虫のままだったと思います。特段の感想記憶は残っていません。
本箱の整理をしていたら文庫が出てきたので読んでみました。
主人公は、グレゴール・ザムザという若い男性で、外交販売員をしています。両親と妹と同居していて、家族もグレゴール・ザムザが昆虫になった姿を目撃します。あと、ザムザの会社の支配人も昆虫になってしまった彼を見ます。
てんとう虫か、カナブンのような昆虫です。あおむけでベッドの寝ている状態なので起き上がれません。ひっくりかえって起き上がれない亀のような状態です。
深刻な状態だと思うのですが、ユーモアがあります。
家族も驚きはしますが、暗い雰囲気はありません。不思議です。本のなかにあるこの世界では人間が虫に変態することがときおりあるのだろうか。
もういまの仕事を辞めたいけれど両親のためにやめないとか、人づきあいが苦手だとか、グレゴール・ザムザの嘆く声が聞こえます。
虫になったそんな姿でもグレゴール・ザムザは、仕事場へ出勤しようと努力するし、出勤するつもりです。朝4時に起きて、午前5時の電車に乗って出勤するつもりです。仕事に行く気は満々です。
グレゴール・ザムザの意識はひきこもりの青年のようにも思えます。されど、出勤はしたい。
グレゴール・ザムザの姿は仮面ライダーのようなものに思えてきました。
昆虫の姿になってもグレゴール・ザムザは出勤することに前向きなのに、驚いた父親が、彼を部屋に閉じ込めてしまいました。みんなはグレゴール・ザムザを病気だと思っているようです。
変態した後の虫の種類が甲虫のたぐいであることに間違いはないと思うのですが、読んでいると、ときおり、ムカデか、あるいは、ゴキブリのような虫を想像する文章が出てきます。
それでもやっぱり背中に硬い羽をもつ甲虫でしょう。
志村けんさんをはじめとしたドリフターズのメンバーによるコントのようでもあります。
家族がいろいろ考えて、虫になってしまった息子のために食べ物を提供してくれます。とくに17歳の妹であるグレーテが心優しい。
虫になったグレゴール・ザムザは、しゃべることはできるのですが、それは虫語で、人間の言葉ではないから、家族へは意思が伝わりません。家族は彼の言葉を虫が鳴いているようにしか聞こえません。
グレゴール・ザムザは、仕事熱心で、収入は家族の生活費にあてられていたそうです。
貯えがあるので、一家は、しばらくは生活していけるそうですが、だれかが働かなければなりません。
グレゴール・ザムザは、虫の体になったというのに、幸せを感じています。仕事をしないで食べていけるからのようです。
現実には、グレゴール・ザムザは、眠っていて、夢をみているのだろうか。
母親と娘はグレゴール・ザムザの部屋を片付けて、家具の配置を変更したりしています。虫の姿をしたグレゴール・ザムザはそのようすをおとなしく見ています。
読んでいて、ゴキブリにスプレー式の薬剤を噴射しているようなイメージの文章です。
父親が思いがけない行動に出ました。
おそろしいことに、父親が、息子にめがけて、リンゴを2個ぶつけてきました。1個目は目標をはずれましたが、2個目は命中しました。息子は気を失いました。重傷です。
(つづく)
父親にリンゴをぶつけられた甲虫になったグレゴール・ザムザは幸いに命を落とすことなく、重傷でありましたが、元通りまでには至りませんが、一か月後に体力を回復しました。父親は自分がした行為を反省しているそうです。
グレゴール・ザムザ宅には、お手伝いさんの女性もいて、みな、甲虫になったグレゴール・ザムザのことをわかっているようです。お手伝いさんはグレゴール・ザムザに「馬糞虫(まぐそむし)さん」とか「おいぼれ虫」と声をかけてきます。彼女に反抗すると彼女は椅子を持ち上げて椅子の足でグレゴール・ザムザをつぶそうとします。ときにはザムザをほうきでつつきます。
グレゴール・ザムザがいる部屋は物置化します。
そのうち、グレゴール・ザムザは名前ではなく、「これ」と呼ばれるようになります。
甲虫になったグレゴール・ザムザのめんどうをみきれなくなった。
家の中から異質なものを排除しようという雰囲気が流れ出しました。
甲虫になったグレゴール・ザムザはしだいに衰弱していきます。
死ぬのではないか。
甲虫になったグレゴール・ザムザは部屋に閉じ込められました。
そして、甲虫になったグレゴール・ザムザは死んでしまいました。
父親が神様に感謝します。
季節は三月の終わりでした。
父親は、過去は過去だと割り切ります。自分のことをかまってくれと妻と娘に話します。
作者はどうも父親を憎んでいたようです。
異質なものを排除して、自分たちだけの幸福を築こうとする人間の性質と悪意をあぶりだす毒のある作品でした。
解説部分も含めて調べた言葉などとして、
毛皮のマフ:筒状の毛皮の両側から手を入れて手を温める。
一気呵成(いっきかせい):ひと息に成し遂げること。
椅子の背凭れ:せもたれ
グルデン:オランダの通貨単位。ギルダー、グルデン。2002年まで使用されていた。
興がらせる(きょうがらせる):興味を示すようにする。
ニヒリズム:虚無主義。今生きている世界に価値がない。絶望、疲弊のなかで、仮想世界をつくりだして自分の身をそこにおく。
けだし:まさしく、たしかに
二十代のころに読んだことがあります。朝起きたら昆虫の体になっていた。最後まで昆虫のままだったと思います。特段の感想記憶は残っていません。
本箱の整理をしていたら文庫が出てきたので読んでみました。
主人公は、グレゴール・ザムザという若い男性で、外交販売員をしています。両親と妹と同居していて、家族もグレゴール・ザムザが昆虫になった姿を目撃します。あと、ザムザの会社の支配人も昆虫になってしまった彼を見ます。
てんとう虫か、カナブンのような昆虫です。あおむけでベッドの寝ている状態なので起き上がれません。ひっくりかえって起き上がれない亀のような状態です。
深刻な状態だと思うのですが、ユーモアがあります。
家族も驚きはしますが、暗い雰囲気はありません。不思議です。本のなかにあるこの世界では人間が虫に変態することがときおりあるのだろうか。
もういまの仕事を辞めたいけれど両親のためにやめないとか、人づきあいが苦手だとか、グレゴール・ザムザの嘆く声が聞こえます。
虫になったそんな姿でもグレゴール・ザムザは、仕事場へ出勤しようと努力するし、出勤するつもりです。朝4時に起きて、午前5時の電車に乗って出勤するつもりです。仕事に行く気は満々です。
グレゴール・ザムザの意識はひきこもりの青年のようにも思えます。されど、出勤はしたい。
グレゴール・ザムザの姿は仮面ライダーのようなものに思えてきました。
昆虫の姿になってもグレゴール・ザムザは出勤することに前向きなのに、驚いた父親が、彼を部屋に閉じ込めてしまいました。みんなはグレゴール・ザムザを病気だと思っているようです。
変態した後の虫の種類が甲虫のたぐいであることに間違いはないと思うのですが、読んでいると、ときおり、ムカデか、あるいは、ゴキブリのような虫を想像する文章が出てきます。
それでもやっぱり背中に硬い羽をもつ甲虫でしょう。
志村けんさんをはじめとしたドリフターズのメンバーによるコントのようでもあります。
家族がいろいろ考えて、虫になってしまった息子のために食べ物を提供してくれます。とくに17歳の妹であるグレーテが心優しい。
虫になったグレゴール・ザムザは、しゃべることはできるのですが、それは虫語で、人間の言葉ではないから、家族へは意思が伝わりません。家族は彼の言葉を虫が鳴いているようにしか聞こえません。
グレゴール・ザムザは、仕事熱心で、収入は家族の生活費にあてられていたそうです。
貯えがあるので、一家は、しばらくは生活していけるそうですが、だれかが働かなければなりません。
グレゴール・ザムザは、虫の体になったというのに、幸せを感じています。仕事をしないで食べていけるからのようです。
現実には、グレゴール・ザムザは、眠っていて、夢をみているのだろうか。
母親と娘はグレゴール・ザムザの部屋を片付けて、家具の配置を変更したりしています。虫の姿をしたグレゴール・ザムザはそのようすをおとなしく見ています。
読んでいて、ゴキブリにスプレー式の薬剤を噴射しているようなイメージの文章です。
父親が思いがけない行動に出ました。
おそろしいことに、父親が、息子にめがけて、リンゴを2個ぶつけてきました。1個目は目標をはずれましたが、2個目は命中しました。息子は気を失いました。重傷です。
(つづく)
父親にリンゴをぶつけられた甲虫になったグレゴール・ザムザは幸いに命を落とすことなく、重傷でありましたが、元通りまでには至りませんが、一か月後に体力を回復しました。父親は自分がした行為を反省しているそうです。
グレゴール・ザムザ宅には、お手伝いさんの女性もいて、みな、甲虫になったグレゴール・ザムザのことをわかっているようです。お手伝いさんはグレゴール・ザムザに「馬糞虫(まぐそむし)さん」とか「おいぼれ虫」と声をかけてきます。彼女に反抗すると彼女は椅子を持ち上げて椅子の足でグレゴール・ザムザをつぶそうとします。ときにはザムザをほうきでつつきます。
グレゴール・ザムザがいる部屋は物置化します。
そのうち、グレゴール・ザムザは名前ではなく、「これ」と呼ばれるようになります。
甲虫になったグレゴール・ザムザのめんどうをみきれなくなった。
家の中から異質なものを排除しようという雰囲気が流れ出しました。
甲虫になったグレゴール・ザムザはしだいに衰弱していきます。
死ぬのではないか。
甲虫になったグレゴール・ザムザは部屋に閉じ込められました。
そして、甲虫になったグレゴール・ザムザは死んでしまいました。
父親が神様に感謝します。
季節は三月の終わりでした。
父親は、過去は過去だと割り切ります。自分のことをかまってくれと妻と娘に話します。
作者はどうも父親を憎んでいたようです。
異質なものを排除して、自分たちだけの幸福を築こうとする人間の性質と悪意をあぶりだす毒のある作品でした。
解説部分も含めて調べた言葉などとして、
毛皮のマフ:筒状の毛皮の両側から手を入れて手を温める。
一気呵成(いっきかせい):ひと息に成し遂げること。
椅子の背凭れ:せもたれ
グルデン:オランダの通貨単位。ギルダー、グルデン。2002年まで使用されていた。
興がらせる(きょうがらせる):興味を示すようにする。
ニヒリズム:虚無主義。今生きている世界に価値がない。絶望、疲弊のなかで、仮想世界をつくりだして自分の身をそこにおく。
けだし:まさしく、たしかに
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