2020年10月27日
思考の整理学 外山滋比古
思考の整理学 外山滋比古(とやま・しげひこ) ちくま文庫
エッセイ集です。あとがきの日付は、1983年早春です。
最初の「グライダー」を読んだところで感想を書き始めます。ことし読んで良かった一冊になりそうです。
著者は、英文学者、言語学者、評論家、エッセイスト。1923年-2020年 96歳没
Ⅰ
「グライダー」
非常におもしろい内容です。勉強する人間を、「グライダー」にたとえます。目標として、ずっと、「グライダー人間」であってはいけないのです。自力で飛ぶ、「飛行機人間」の機能も兼ね備えていなければ自身の学問の発展はないのです。教わったとおりに飛んでいるだけでは、花は咲かないのです。
学校は、「グライダー人間」の養成所とあります。グライダーと飛行機は似ているが、グライダーは自力では飛べない。優等生は、グライダーとして優秀なのであって、飛行機として優秀なのではない。大学を卒業して社会に入っても社会で適応できない人がいます。そもそも学校でなにがあったかは社会では関係ないことが多い。学歴の盲信は過信に終わります。
「不幸な逆説」
学校の先生は教師の言うことを聞くグライダー人間に好意をもつようになる。(好ましいことではない)
なんとしても学問をしたいという積極性がないと問題解決能力は伸びない。
(1980年当時の現代として)教えすぎる弊害がある。
問題を解く能力よりも問題をつくる能力がほしい。
そういうことが書いてあります。
「朝飯前」
頭は、「朝」使うというお話でした。一番頭脳が明晰(めいせき。明らかではっきりしている)に活動している時間帯だそうです。
Ⅱ
「醗酵(はっこう)」「寝させる」「カクテル」
大学の卒業論文のテーマ選びについて書いてあります。
アイデアは、時間を置けという内容です。素材になにかを加えて化学反応を起こして新しいものを産み出す。
「エディターシップ」
本の「編集」について書いてあります。短編を並べる順番によっていい作品が仕上がるそうです。そのセンス(感じる感覚。判断)を問うています。
「触媒」
だんだん内容が大学の学者さんの世界に限られてきて狭くなってきました。
アナロジー:類似を使って他のことに利用する。
「アナロジー」「セレンディピティ」
模倣する(新しいものが生まれる可能性がある)→「たいていの場合、『無』から『有』は創造されない」→「素材を並べる順番でいいものができることがある」とここまできました。
アナロジー:言葉をつなげるものがある。ひとつひとつは単体だが、連続性をもつものに変化するものがある。たとえば、映画のフィルムのコマ。「余韻(よいん)」が、ふたつの単体をつなぐ。
マッチ・ポンプ:自作自演。自分で火をつけて、自分で火に水をかけて消す。偽善。
セレンディピティ:たとえば、なにかをさがしているときに、別のなにかを発見すること。
脱線から新しい発想が生まれるときもある。
Ⅲ
「情報のメタ化」
メタ化:思考の範囲が広がっていく。
だんだんむずかしくなってきました。人の周りには、「自然」と「人為」がある。「人為」について考えるようです。
メタ化しながら、「思考」を整理していくのです。「醗酵」「混合」「アナロジー(連続させるもの)」がその方法です。
「整理」というものは、取捨選択で捨てるものではないとあります。「第一時的思考をより高い抽象性へ高める質的変化」だそうです。うーむ。わからない。量ではなく質だそうです。平面ではなく立体化して純化する。理解することがむずかしい。
「スクラップ」「カード・ノート」「つんどく法」
新聞記事の切り抜き整理の話。カードやノートによる知識の整理と保存の話に続きます。いまは見かけなくなった「百科事典」の話も出ます。
パソコン、コンピューターの現代からみると古い手法なのですが、電子化の基礎となる考え方であることに違いはありません。ポイントをしぼって整理する。
「つんどく法」は、本を買っても読まずに積んでおくということではなく、類似系統の研究素材となる本をたとえば10冊積んで、片っ端から目を通して読んで、重複する内容の記事が多ければ、そのことを信頼できると判断するやり方です。
「手帳とノート」
ふと頭に浮かんだアイデアの記録方法です。おおむね書いてあるとおりにわたしも実行しています。いわゆるメモ魔です。胸ポケットにはメモ用の紙が折りたたんで入っています。寝床のそばには大きなメモ用紙が複数おいてあります。
書いてあるとおり、思いついたアイデアは瞬間的にメモしておかないと頭から消えてしまいます。
「メタ・ノート」Ⅳ「整理」「忘却のさまざま」「時の試練」「すてる」「とにかく書いてみる」「テーマと題名」「ホメテヤラネバ」
ノートをつくたあと、ポイントになる点をピックアップする。
人間の頭脳が倉庫だとして、保管する物量には限度がある。
これからは、コンピューターが広まるので、倉庫としての役割はコンピューターにまかせる。
頭脳は創造するために使う。新しいことを考え出す工場とする。
忘れていいものと忘れてはいけないものを区別する能力がいる。
そのバランスがむずかしい。価値観をしっかりもっていないと、いるものを忘れて、いらないものを覚えていることになる。『思考の整理とはいかにうまく忘れるか』と記されています。
アルコールによる忘却の欠点が書いてあります。なにごとをやるにしても健康第一です。
リフレッシュ、気分転換の必要性を強調されています。
「休憩」とは、なにもせず休むことではなく、別のなにかをやることでもよいと説明があります。例えば学校の時間割のように異なる科目を順番にやる。
年数をかける。たとえば60年間という期間をふりかえってみると、当時は肯定されていたことが現在は忘却されている。逆に、否定されていたことが現在は良いこととして定着している。ものごとは、長い年数を経て観ないと真価が判明しない。
書き直しの労力を惜しんではならない。いい例として、『平家物語』。琵琶法師の口伝えによる傑作だとうご意見には賛同しました。
テーマの付け方に関して簡潔にというご意見があります。同意するのですが、現代の実態をみていると自由自在なテーマ、タイトルがはやっています。受け入れられて通用しています。時代が変わりました。
自分はだめだと思い込むとうまくいかない。自分はできると暗示をかけてやるといい結果が生まれるそうです。消極的だとできるものもできなくなると解説されています。くよくよすると、いい結果がでない。
『肯定』したほうが楽になれる。『否定』すると苦しくなる。そういうことってあるなと納得できます。真剣に考えすぎると否定してしまいます。
ほめられると頭脳は調子にのる。勢いづく。いいアイデアが浮かんだりもする。最上のあいさつは、『ほめること』
今年読んで良かった一冊になりました。
Ⅴ「しゃべる」「談笑の間」
書き上げた原稿を声を出して読むとわかることがある。小さな声でもいい。繰り返すことで、『結晶的純度』に達する。納得しました。時間がかかいますが。(間違いさがしにはいい)琵琶法師(びわほうし)の口伝えによる『平家物語』の良さをわかりやすく述べておられます。
「垣根を越えて」「三上・三中」「知恵」「ことわざの世界」
インブリーディング:弱体化、いずれ没落する同系繁殖、近親交配、近親結婚の弊害から始まり、新しく異質な要素を取り入れることで活性化を図る説明があります。
ブレイン・ストーミングでは、「もうだめだは、まだまだこれから」の意識で新たな発想を得ます。
Ⅵ「第一次的現実」「既知・未知」「拡散と収斂(しゅうれん。集約)」「コンピューター」
いまある物理的現実が、「第一時的現実」、そして、脳の中にあるのが、「第二次的現実」とあります。
「第二次的現実」は、かつては、「読書」で得られたが、現代は、「テレビ」が進出してきた。
テレビは正確とはいえません。意図的に加工することが可能な映像の世界です。人心を誘導することができる媒体なので警戒して接する。
テレビ画面の向こうにある世界と画面のこちらにある世界に差異があります。そのことを頭の片隅に置いて番組内容を精査して判断をして行動します。
なにごとも相反するふたつの力でこの世はバランスを保っています。
情報を広める。情報を集める。情報同士を関連づける。結果に正解がないこともある。
エッセイ集です。あとがきの日付は、1983年早春です。
最初の「グライダー」を読んだところで感想を書き始めます。ことし読んで良かった一冊になりそうです。
著者は、英文学者、言語学者、評論家、エッセイスト。1923年-2020年 96歳没
Ⅰ
「グライダー」
非常におもしろい内容です。勉強する人間を、「グライダー」にたとえます。目標として、ずっと、「グライダー人間」であってはいけないのです。自力で飛ぶ、「飛行機人間」の機能も兼ね備えていなければ自身の学問の発展はないのです。教わったとおりに飛んでいるだけでは、花は咲かないのです。
学校は、「グライダー人間」の養成所とあります。グライダーと飛行機は似ているが、グライダーは自力では飛べない。優等生は、グライダーとして優秀なのであって、飛行機として優秀なのではない。大学を卒業して社会に入っても社会で適応できない人がいます。そもそも学校でなにがあったかは社会では関係ないことが多い。学歴の盲信は過信に終わります。
「不幸な逆説」
学校の先生は教師の言うことを聞くグライダー人間に好意をもつようになる。(好ましいことではない)
なんとしても学問をしたいという積極性がないと問題解決能力は伸びない。
(1980年当時の現代として)教えすぎる弊害がある。
問題を解く能力よりも問題をつくる能力がほしい。
そういうことが書いてあります。
「朝飯前」
頭は、「朝」使うというお話でした。一番頭脳が明晰(めいせき。明らかではっきりしている)に活動している時間帯だそうです。
Ⅱ
「醗酵(はっこう)」「寝させる」「カクテル」
大学の卒業論文のテーマ選びについて書いてあります。
アイデアは、時間を置けという内容です。素材になにかを加えて化学反応を起こして新しいものを産み出す。
「エディターシップ」
本の「編集」について書いてあります。短編を並べる順番によっていい作品が仕上がるそうです。そのセンス(感じる感覚。判断)を問うています。
「触媒」
だんだん内容が大学の学者さんの世界に限られてきて狭くなってきました。
アナロジー:類似を使って他のことに利用する。
「アナロジー」「セレンディピティ」
模倣する(新しいものが生まれる可能性がある)→「たいていの場合、『無』から『有』は創造されない」→「素材を並べる順番でいいものができることがある」とここまできました。
アナロジー:言葉をつなげるものがある。ひとつひとつは単体だが、連続性をもつものに変化するものがある。たとえば、映画のフィルムのコマ。「余韻(よいん)」が、ふたつの単体をつなぐ。
マッチ・ポンプ:自作自演。自分で火をつけて、自分で火に水をかけて消す。偽善。
セレンディピティ:たとえば、なにかをさがしているときに、別のなにかを発見すること。
脱線から新しい発想が生まれるときもある。
Ⅲ
「情報のメタ化」
メタ化:思考の範囲が広がっていく。
だんだんむずかしくなってきました。人の周りには、「自然」と「人為」がある。「人為」について考えるようです。
メタ化しながら、「思考」を整理していくのです。「醗酵」「混合」「アナロジー(連続させるもの)」がその方法です。
「整理」というものは、取捨選択で捨てるものではないとあります。「第一時的思考をより高い抽象性へ高める質的変化」だそうです。うーむ。わからない。量ではなく質だそうです。平面ではなく立体化して純化する。理解することがむずかしい。
「スクラップ」「カード・ノート」「つんどく法」
新聞記事の切り抜き整理の話。カードやノートによる知識の整理と保存の話に続きます。いまは見かけなくなった「百科事典」の話も出ます。
パソコン、コンピューターの現代からみると古い手法なのですが、電子化の基礎となる考え方であることに違いはありません。ポイントをしぼって整理する。
「つんどく法」は、本を買っても読まずに積んでおくということではなく、類似系統の研究素材となる本をたとえば10冊積んで、片っ端から目を通して読んで、重複する内容の記事が多ければ、そのことを信頼できると判断するやり方です。
「手帳とノート」
ふと頭に浮かんだアイデアの記録方法です。おおむね書いてあるとおりにわたしも実行しています。いわゆるメモ魔です。胸ポケットにはメモ用の紙が折りたたんで入っています。寝床のそばには大きなメモ用紙が複数おいてあります。
書いてあるとおり、思いついたアイデアは瞬間的にメモしておかないと頭から消えてしまいます。
「メタ・ノート」Ⅳ「整理」「忘却のさまざま」「時の試練」「すてる」「とにかく書いてみる」「テーマと題名」「ホメテヤラネバ」
ノートをつくたあと、ポイントになる点をピックアップする。
人間の頭脳が倉庫だとして、保管する物量には限度がある。
これからは、コンピューターが広まるので、倉庫としての役割はコンピューターにまかせる。
頭脳は創造するために使う。新しいことを考え出す工場とする。
忘れていいものと忘れてはいけないものを区別する能力がいる。
そのバランスがむずかしい。価値観をしっかりもっていないと、いるものを忘れて、いらないものを覚えていることになる。『思考の整理とはいかにうまく忘れるか』と記されています。
アルコールによる忘却の欠点が書いてあります。なにごとをやるにしても健康第一です。
リフレッシュ、気分転換の必要性を強調されています。
「休憩」とは、なにもせず休むことではなく、別のなにかをやることでもよいと説明があります。例えば学校の時間割のように異なる科目を順番にやる。
年数をかける。たとえば60年間という期間をふりかえってみると、当時は肯定されていたことが現在は忘却されている。逆に、否定されていたことが現在は良いこととして定着している。ものごとは、長い年数を経て観ないと真価が判明しない。
書き直しの労力を惜しんではならない。いい例として、『平家物語』。琵琶法師の口伝えによる傑作だとうご意見には賛同しました。
テーマの付け方に関して簡潔にというご意見があります。同意するのですが、現代の実態をみていると自由自在なテーマ、タイトルがはやっています。受け入れられて通用しています。時代が変わりました。
自分はだめだと思い込むとうまくいかない。自分はできると暗示をかけてやるといい結果が生まれるそうです。消極的だとできるものもできなくなると解説されています。くよくよすると、いい結果がでない。
『肯定』したほうが楽になれる。『否定』すると苦しくなる。そういうことってあるなと納得できます。真剣に考えすぎると否定してしまいます。
ほめられると頭脳は調子にのる。勢いづく。いいアイデアが浮かんだりもする。最上のあいさつは、『ほめること』
今年読んで良かった一冊になりました。
Ⅴ「しゃべる」「談笑の間」
書き上げた原稿を声を出して読むとわかることがある。小さな声でもいい。繰り返すことで、『結晶的純度』に達する。納得しました。時間がかかいますが。(間違いさがしにはいい)琵琶法師(びわほうし)の口伝えによる『平家物語』の良さをわかりやすく述べておられます。
「垣根を越えて」「三上・三中」「知恵」「ことわざの世界」
インブリーディング:弱体化、いずれ没落する同系繁殖、近親交配、近親結婚の弊害から始まり、新しく異質な要素を取り入れることで活性化を図る説明があります。
ブレイン・ストーミングでは、「もうだめだは、まだまだこれから」の意識で新たな発想を得ます。
Ⅵ「第一次的現実」「既知・未知」「拡散と収斂(しゅうれん。集約)」「コンピューター」
いまある物理的現実が、「第一時的現実」、そして、脳の中にあるのが、「第二次的現実」とあります。
「第二次的現実」は、かつては、「読書」で得られたが、現代は、「テレビ」が進出してきた。
テレビは正確とはいえません。意図的に加工することが可能な映像の世界です。人心を誘導することができる媒体なので警戒して接する。
テレビ画面の向こうにある世界と画面のこちらにある世界に差異があります。そのことを頭の片隅に置いて番組内容を精査して判断をして行動します。
なにごとも相反するふたつの力でこの世はバランスを保っています。
情報を広める。情報を集める。情報同士を関連づける。結果に正解がないこともある。
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